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Author:mikazuki0602
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㉖終わりよければ

「ご~め~ん~な~さぁ~い!」
 溝口さんが上から目線で(背があたしよりかなり高いので必然的にそうなる)、そう謝った。だけど言葉とは裏腹に楽しそうで、頭を下げる気配もない。
「い、いやぁ、いいですけど。むしろ、そんな依頼、迷惑でしたよね?申し訳ありませんでした」
 あたしの方がいつも以上に低姿勢でそう言うと、溝口さんはさらに楽しそうにケラケラ笑い出した。
「あっは。でも楽しかったぁ、あたし、一度でいいからヒール役やってみたかったのよぉ。せっかく憧れの先輩に頼まれたんだからって、つい張り切っちゃって」
「………」
 張り切るなよ、どんだけノリノリだったんだよ、と心の中であたしはツッコんだ。

 なんと有さんは、溝口さんの中等部時代の先輩だったのだそうだ。しかも同じバレー部。
 有さんがバレー部だったなんて驚きだったけれど、背の高さや細いけれど無駄のない筋肉のつき方から想像に難くはない。
 中学時代の有さんはバレー部と美術部かけ持ちで、そんな忙しさの中でも頭が良く、他の生徒たちに比べても大人びていて神秘的でめちゃくちゃモテたのだそうだ。
 溝口さんもそんな一つ上の先輩に憧れていた一人だそうで、同じバレー部で男勝りの性格のせいか、むしろ話しも気さくにできて他の女生徒たちに羨ましがられていたのだそうだ。
 高等部に行ってからは、有さんはさすがに美術部1本に絞ったらしいが、それでも試合はときどき見に来てくれたらしい。
 それぞれ大学に進んでからは、OB会で顔を合わせる程度にはなっていたが、社会人になってからも有さんの噂は訊いていたそうだ。
「それが、あるとき直接電話がかかってきて」
 なぜだか眼を潤ませ、両手を胸の前で組み合わせながら溝口さんは続けた。
「あたしがいまの会社に転職したこと、ちゃんと知っててくれて。希望がかなって良かったなって言ってくれたの。あたしがずっと昔に話した希望の職種を覚えててくれただけでも感激なのに、俺の役に立ってほしい、溝口にしか頼めないって言われたら、もう…」
 有さんたら、ったくもう!
「ずっと憧れだった氷川先輩からそんな風に言われたら、断れないじゃなぁい?」
 断れよ、そんな眼をハートにしてないで。
「でも、あなたが氷川先輩の…その、こ、恋人?だって訊いて、ちょっとショックで。だから尚更、リキ入っちゃって」
 リキ入れて、苛(いじ)めるなよ。お蔭であたしは、キツかったよ。
「でも、感謝してねぇ。ちゃんと氷川先輩には逐一報告してたし、専務のことも牽制してたから」
「け、牽制?」
「そ。気づかなかった?あなたの日々の失敗やら、過去の恋愛のことやら、あることないこと吹き込んでおいたから」
 吹き込むなら、せめてないことは止めといてほしかった。あたしは、がっくりと肩を落とした。
「あらぁ、大丈夫よ。専務は仕事さえきちんとしてくれれば、とか何とか言ってたから」
 それじゃあ、ないこと信じたんじゃないか。酷いよ。
「あとで、あれは巧妙に仕組まれた噂話でしたって言っとくから」
 もう遅い気がするけど、でも専務とは仕事上の関係は良好だから、いいや。
「はぁ。でもなんか、いろいろ申し訳ありませんでした。有さんが…」
 そこで溝口さんの眉が、ひくりと上がった。
「ふぅん、いいわねぇ。有さん、なんて呼んでるんだ?」
「あ、い、いやっ」
 あたしは慌てて、上ずった声を出した。いや、いいじゃん。だって、あたしたちは。
「ま、しょうがないわ。あたしにとっては永遠に憧れの存在…」
 ちょっと遠い眼をした溝口さんが、最後に恐ろしいことを口にした。
「にしても、ヒール役って想像以上に楽しいものねぇ。やだ、クセになりそうだわ、あたし。ふふふ」
 ふふふ、じゃないから。
 背中越しに手をひらひら振って去って行く彼女を見送りながらあたしは思った。
 まじ、彼女ってこんなキャラだったっけ?


✵ ✵ ✵

「ワリぃ、ホント申し訳ないっ。てか、なんで俺怒られんの?ドツくなら彼氏、氷川さんだろ」
「何言ってんですかっ。お金で買われてスパイするなんて!」
「いや、だから。俺を金で買ったの、あんたの彼氏だから」
 そうだけど、でも有さんには怒っても怒りきれないし。すぐにはぐらかされて、丸め込まれてしまうし。
「いまはもう、監視・報告料なんて貰ってないですよね?」
 両手を腰に当てて精一杯強く出ているあたしに、浅野さんはふわぁ~と大きな欠伸を一つすると答えた。
「そーなんだよ。いや、てことはだよ。もう俺、ここで働かなくていいんじゃね?」
「それとこれとは、別の話ですっ!」
「そお?」
 そお?、じゃないでしょう。浅野さんが外部スタッフになっているのは、社長と専務の希望なんだから。むしろ有さんから頼まれた監視役は、おまけっていうか臨時のアルバイトでしょう。
「もう、本末転倒ですよ、浅野さん」
 まあまあと呑気な浅野さんに、あたしは頭を抱えた。
「でもさ、凄いな、菜乃介は」
 は?
「わかんないか?あの氷川さんが、そこまでするとは思わなかったよ。相当な執着だな、あれは。あんなクールな、いや俺が知っている限り冷酷無慈悲な氷川さんがだよ、こんなに独りの女にゾッコンのめり込んでメロメロになるとはびっくりだよ」
 そう言われて、あたしは顔が火照るのを感じた。
「お?嬉しそうに照れちゃって。あれはまさにベタ惚れだな、ヘタしたらストーカー並みだな。ほら、もっと赤くなれっ」
「もうっ、面白がらないでくださいよ」
「いや、だって。実際おもしれーし。そうじゃなきゃあ、俺がいくら金欠だからって、人の彼女の監視なんか面倒でやんねーよ」
「そ、そうですよね」
 なんだか、申し訳ない。
「だけど愛されてんな、菜乃介。あの氷川さんがあれほど変わるなんて、俺、恋愛ってもの悪くないんじゃないかって思ったよ」

「なにが、悪くないんですかぁ?」
 そのとき外出していた並木さんが、戻って来た。
「あ、おかえりなさい。並木さん」
「なに?何の話してたの?」
「い、いや、なんでも…」
 そう言いつくろおうとしたあたしを遮るように、浅野さんが言った。
「いやぁ、俺も本気で恋してみようかと思ってさ」
「はぁ?」
 並木さんが、思いっきり呆れた表情をする。
「どうだ、リオン。俺と一夜のアバンチュールをしてみないか?」
「ばかですか、浅野さん。アバンチュールは本気の恋とは真逆です。それにその誘い文句、思いっきり昭和です。悪いですが、あたし平成生まれなんで」
 まあ、いわゆるいつもの、けちょんけちょんである。
「そう言うなよ、リオン。お前はほんっとに、いつも容赦ないな」
「はいはい、忙しいので。邪魔しないでください」
 ぷ、とあたしは吹き出しながら、相変わらずの並木さんと浅野さんの掛け合いを眺める。平和が、今度こそ本当に日常の平和が戻って来た。
 有さんという確かな真実を再び得て、自分がいま生きている世界がやっと現実と同じ色
彩を持ったような気がした。






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  • Date : 2017-04-16 (Sun)
  • Category : アイス
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