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㉕人の悪い種明かし

 渦中にいるときはわからなくても、そのときが過ぎ去ると見えてくるものがある。
 すべては、必要なことだったのだ。
 有さんにとって、お母さんにとって、そしてあたしにとっても。
 有さんは失われた季(とき)を取り戻し、お母さんと過ごすことができた。そしてお母さんとお父さんの出逢うべくして出逢った必然を理解し、受け入れることができた。自分の存在が望まれていたこと、愛されていたことを、ある感慨を持って信じることができた。
終わりの見えない、終わらないかもしれない長い「待つ」という行為、それでも待たずにいられなかった有さんの孤独な旅はいまやっと報われたのだ。
 お母さんは有さんに、心から愛したたった独りの子供に、最期にそんな贈り物をして旅立って行った。
 ブラックスーツで澄み渡った空を見上げた背の高いひとは、なぜだかむしろ幸福そうに見えた。


✵ ✵ ✵
 
「え~~~、酷いよっ!」
 ホテルの一室で、久々に有さんと濃密なときを過ごした翌朝、あたしはぷんぷんにむくれて盛大に抗議していた。
「ああ、そうだ。俺は酷い男だ。嫌いになったか?」
 うん、酷い上に狡い男でもある。
 だって嫌いになれるわけがないって知ってて、そんな質問をするんだから。
「どうして、ひと言『待っててくれ』って言わなかったの?」
 キャミソールとショーツというあられもない格好のままそう言ったあたしの頬を、有さんの長くて綺麗な指が突く。
「『待っててくれ』という言葉だけは、簡単に口にできなかった」
 それは、待つことの苦しさを、有さん自身が一番痛感していたからなの?
「『待つ』ということは、終わりのない旅のようなものだからな」
 でも有さんに言われたら、終わりのない旅でも叶うことのない希望でも、あたしは迷わず従った。ううん、言われなくても結局あたしは開け放たれた鳥籠の隅にうずくまって、待っていたのだ。外界へ繋がる入口に気づかないふりをして、飛ぶことを永遠に忘れた小鳥みたいに。
「でも、だからって…」
「そうだな、我ながら情けないと思うよ。だけど、どうしても菜乃果のいないこの先の人生が耐えられなかった。だからどんなに姑息でも卑怯でも未練がましくても、そうせずにはいられなかった…」

 惺が見つけてくれたと思っていたマンションは、実は有さんが手配したものだった。
 しかもご丁寧に、鳥籠風にアレンジして。
「アイアンのシェルフもライトも、俺がデザインした特注だ。壁紙も、俺が描いたものをもとに起こしたオリジナルだ」
 なんて手の込んだ、しかもお金もかかる。
「菜乃果に、一目で気に入ってもらわなくてはならなかったからな」
 有さんは憎たらしくも、そう言って確信犯的に笑った。
「じゃあ、惺は最初から共犯?」
 有さんがまたにやり、と笑う。
 ったく、もう。惺も後でとっちめてやる。
「菜乃果、俺がお前のために用意した鳥籠の中は快適だったか?」
 そう言って有さんは、あたしの鎖骨に舌を這わせた。
「っん、ダメ。もう、有さんなんかっ」
 嫌いって、それでも言えない。
「じゃあ、もしかして、あたしが考えているより家賃も高い?」
 有さんは、涼しい顔でくすりと笑う。
「男子禁制、セキュリティは万全、広さと立地からいっても、まあ、軽く2倍以上だ」
 あんぐり、と口を開けて、あたしはすぐには声も出なかった。そりゃそうだよね、あたしのバカ、世間知らず。
「じゃ、じゃあ、足りない家賃はどうやって…」
「あのマンションの施工管理会社は、俺の高校の同級生の親父がやっている。同級生は管理部門の取締役に収まっているし、広告会社時代に仕事でいろいろ手伝ってやったからな」
 そういうことか、にしても有さんの人脈って…。
「あたし、知らなかった。そんなに家賃が高かったなんて…しかも、それを有さんが払ってたなんて」
 情けなく眉を落としたあたしに、むしろ嬉しそうに有さんは言う。
「俺の可愛い仔猫を飼っておくには、それくらいしないとな。それに少しも高くなんかない」
 そんな有さんに、あたしはずっとモヤモヤし続けていたもう一つの疑問をぶつけた。
「ねえ。まさか、もしかして、浅野さんも…」
「ああ、あれは菜乃果の監視役として雇った」
 や、雇ったぁ? じゃ、じゃあ、ってことは…。
「浅野さんの借金を肩代わりしたのは…有さん?」
「肩代わりと言うか、契約金として払った」
「ひゃ、百万も!?」
「ああ。そのほかに毎月、監視・報告料として…」
 あたしは思わず、耳を塞いだ。なんだか恐ろしくて、訊きたくなかった。
 そんなあたしを面白そうに眺めると、有さんは優雅におでこにキスをする。もう、余裕があり過ぎっ。
「ったく、浅野さんたらぁ~。後でシメるっ!」
 威勢よくグーをつくったあたしを両腕に閉じ込めて、顔中にキスを落とす有さんに念のため確認する。
「もう、それだけでしょうね?」
 すると有さんは、きょとんとした顔でとんでもないことを言った。
「菜乃果は、どれだけ鈍いんだ」
 やだ、有さんのきょとん顔可愛い…じゃなくって。
「に、鈍いって、どういうこと?」
 あたしの右胸をやわやわと揉みながらうなじに舌を這わすと、有さんは訊ねた。
「誰か、根はいいヤツだが直球過ぎる女が訪ねてこなかったか?」
 根はいいヤツだけど直球過ぎる女…って、決まってるよね。
「り、りこさんっ?」
「正解」
せ、正解じゃぁないよ。りこさんが訪ねてきたのも、有さんの差し金だったってこと?
「た、頼んだの?りこさんに」
「まさか」
 有さんは今度はキャミソールをたくし上げて、露わになった頂を食んだ。
「っきゃ。も、もう、有さんダメっ!」
 ちゃんと確かめておかないとと思うのに、次々与えられる快感に思考が邪魔される。
 そんなあたしの耳元に、ふぅと息を吹きかけると有さんはとてもとても楽しそうに言った。だめだ、ぞくぞくする。耳ほんとダメ。
「りこには、ただ別れたって言っただけだ」
「っく、ふ、ふぇ?」
 快感に流されそうになる思考をなんとか宥(なだ)めて、でも間抜けな声をあげてあたしは有さんを見る。
「可愛いな、菜乃果。もっと訊かせて、俺の仔猫のそそる啼き声」
「も、もうっ。ホントにダメっ!」
 あたしは必死で有さんを両手で押して、なんとか躰を離す。
「ただ、言った、だけ?」
 まだ上下する胸と躰のほてりを誤魔化しながら、あたしはバカみたいにオウム返しで訊く。
「ああ。そうしたら、りこがどういう行動に出るかは、予測ができたからな」
 そう言えば、惺もなんかそんなようなことを言っていたような…。
「こ、怖かったし、あたし、悲しかったんだからっ」
 有さんの胸を両手で叩くあたしを、有さんはまた抱きとめる。
「それは、悪かった。でも、俺は嬉しかった。りこが、あの子はまだ有さんのことを全然忘れてない、忘れられる日が来るのか疑問だわって言うのを訊いてな」
 そうだ、りこさんにいろいろ問い詰められて、あたしは何一つ満足な答えができなかったけれど、あのとき一つだけはっきりとわかったのだ。
 自分にとって一番大切なのは真実、その真実は紛れもなく有さんが好きだってこと。たぶんずっと、一生変わりなく。
「りこさん、怖かったけど。でもね、一つだけはっきりとわからせてくれたの」
 なにを?と促すように有さんが小首を傾げて、その仕草がドキッとするほど大人で男の色気がある。
「そのとき、真実が見えたの。あたしはずっと有さんの籠の鳥でいたくて、一生有さんの仔猫でいるんだって決意してる自分」
「菜乃果…」
 有さんはクールな眼に優しさの影を宿して、軽く唇にキスを落とすと強く抱きしめた。
「そんな可愛いことを言うと、手酷く食べてしまうぞ」
 いいよ、有さんになら。どんなことをされても。
 だけど、いまはもう少し確認しなくっちゃ。うん。
「ねぇ、後は?まだあるの?」
 有さんは、少し残念そうにあたしを強く拘束する腕を緩めて、顔を覗き込むと言った。
「そうだな、もう一人いるな」
 まだ、いるの!?
「だ、誰?」
「誰だと思う?」
「あの…ヒントは?」
 有さんはくすりと悪戯っぽく笑うと、あたしの頭を撫でながら言った。
「性別は、女だ」
 え。 まさか、並木さん? じゃないな、瑞希さん?な訳ないし。
「しょ、祥子さん?」
「まさか。それに祥子とは頻繁に会わなかっただろう?」
 え~、てことは頻繁に会う人…じゃあ。
「並木さん?」
「誰だ、それ?ああ、同僚のスタイリスト、だったか?浅野がそう言えば、そんな名前を口にしていたな」
「瑞希さんでもないよね?」
「当たり前だ。身体の弱い彼女に、そんなこと頼めるか」
 わからん、マジわからん。誰だろう?
「会社に背の高い、上から目線の先輩はいなかったか?」
「ぎょ、ぎょえぇ~~~!ま、まさかっ溝口さん??」
 有さんが、その日一番人の悪い顔でにゃぁ~と笑った。





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  • Date : 2017-04-15 (Sat)
  • Category : アイス
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