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㉓開け放たれた窓

「菜っ葉!」
 マンションの前に止まった車の後部座席のドアが開いて、惺が出てきた。
 運転しているのは、有さんと惺のお父様。助手席にはお母様も乗っていた。
 有さんは自分の車で、すぐに別荘へ向かうと言ったそうだ。
 非常事態ということで、ご両親と一緒に別荘へ向かうと言った惺に、あたしは同乗させてほしいと頼んだのだ。

「菜っ葉、だって会社は?明日は月曜だぞ」
「緊急事態だからって、連絡する」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫でなくても、行きたい」
「わかった、迎えに行く」
 行かなければいけない気がした。あたしが行っても、きっと何の役にも立たない。もしかしたら、有さんにとっては迷惑かも。でも、それでもあたしは行きたかった。

 惺はあたしが持っていたボストンバッグを持つと、車のトランクに入れた。
「さぁ、急ごう」
 移動の車の中では、誰もが無口だった。不安を口にしない、かといって状況がわからないだけに楽観的な憶測を言うこともできなかったからだ。
 やがて別荘について、車はするすると敷地内の駐車場へ止められた。
 お父様とお母様に続いて、惺とあたしも別荘の入口を目指す。お父様がドアノブをゆっくりと回すと、鍵はかけられていなかった。
「有」
 お父様がそう言いながら、リビングへ入って行く。
 しかしリビングに居たのは見知らぬ女性一人だった。40代くらいに見える彼女はあたしたちの姿を認めると、蒼白な顔で立ち上がった。
「申し訳ありませんっ」
 苦しそうに顔を歪めて、彼女はそう叫ぶなり深く、とても深く頭(こうべ)を垂れた。
「ええと、失礼ですが、あなたは?」
 はっとしたように顔を上げた女性は、さらに慌てた様子でこう言った。
「わ、私、看護師をしていて。あ、あのっ、森田奈都子と申します。ときどき、こちらに訪問して、そのっ、と、透子さんのご様子を診させていただいていました」
 お父様は、不安そうに眼を泳がせている森田さんを優しく見つめると静かにこういった。
「そうですか、それは大変お世話になっています。それで、有はいま?」
 森田さんは再び顔を歪めると、絞り出すような声で言った。
「お母様を、探しに行かれました」
「他にも探してくれている方は?」
「け、警察の方と地元の消防団の方が…」
「そうですか」
 お父様はソファに座るように森田さんを促すと、お母様に言った。
「捜索隊は出ているようだ。取りあえず、森田さんからこれまでの状況を訊こう。星華さん、
彼女が落ちつけるように温かいもの、そうだお茶を淹れてくれないか」
 お父様はお母様のことを名前で呼ぶのだな、とあたしは何故か場違いのことを考えながらも言った。
「あの、あたしが。いえ、あたしに淹れさせてください」
「え、でも」
 そう言ったお母様に、惺が機転を利かせてくれた。
「うん、菜っ葉。そうしよう。俺、手伝うから大丈夫」
 
 温かいお茶を飲んで少し落ち着いた森田さんが、話してくれた。
 瑞希さんのお通夜と告別式にどうしても出席しなければならないと思った有さんは、いつも訪問看護に当たってくれている森田さんに留守中のお母さんの面倒を見てもらえないかと頼んだのだそうだ。
 最初は病院に一時入院ということにしようと思ったが、別荘に迎えに来てくれた白衣の人達を見て、お母さんが少しパニックになったのだそうだ。
 そこで有さんは急遽、別荘に泊まってくれないかと森田さんに頼んだ。いつも来てくれる森田さんには、お母さんは慣れていたから。

「息子が無理を言ったんですね。申し訳ありませんでした」
 そう言うお父様に、森田さんは身を縮めるようにして頭(かぶり)を振った。
「そんな。頼まれたのに、こんなことになってしまって」

 有さんが東京へ向かってしばらくは、お母さんは落ち着いていていつも通りだったそうだ。それが夜になって、「仁さん、仁さん」と有さんの姿を探すようになったのだそうだ。
 心配になった森田さんは、有さんに電話して許可を取った上で、睡眠導入剤をお母さんに与えた。
 そしてお母さんが眠りについたのを見届けて、森田さんも別室で眠った。
 翌朝は睡眠導入剤のせいか、ぼんやりとしていて食欲もない様子だったと言う。温かいミルクをカップの半分だけ飲んで、再びとろとろと眠たげに瞼を落としたため、森田さんは昼までそっとしておくことにしたのだそうだ。
 ところが。

「12時過ぎにお昼ご飯を持って透子さんのお部屋に伺ったら、ちゃんと鍵を掛けていたはずの窓が開いていて…」
 そこで思い出したように、森田さんは両手で自らの身体を抱きしめた。
 皆が、ごくりと唾を飲む気配がした。
「それで?」
 それでもお父様はさすがに落ち着いた声で、続きを促した。
「は、はい。私、慌てて窓に駆け寄って、下を見ました。でも、でも、透子さんの姿はなかったんです。だからもしかしたら、お家のどこかにって思って。トイレもお風呂もクローゼットも、全部のお部屋を確かめても、お庭に出て探しても…と、透子さんは…どこにもいなかったんです」
「玄関の鍵は?」
 お父様が確かめるように訊いた。
「私が開けるまで、閉まっていました」
「それじゃあ…」
 そう言ったお母様が、思わず両手で口元を押えた。
「窓から、としか考えられないわけですね?」
「…はい」
 森田さんは気の毒なくらい、小さくなっている。
「何か、物音はしませんでしたか?だってもし、窓から落ちたとしたらかなりの音がしませんか?」
 そう訊く惺に、森田さんは小さな声で答えた。
「今日はちょうど午前中から、近くの別荘で解体工事をしていて。重機の音やら何やらで、騒がしかったんです」
 項垂(うなだ)れる森田の肩に優しく手を置いて、お父様は言った。
「森田さん、逆に申し訳ありませんでした。こんなことになるなんて、誰が予測できたでしょう。あなたのせいではありません」
「だけど、仮に本当に窓から落ちたとすると…」
 惺がぼそりと言った言葉に、今度は皆が戦慄する番だった。
「2階からだし、庭には芝生があるから、そう酷い怪我はしていないと思いたい。それにもしも怪我をしていたら、そこから動けないだろう?」
 そう言ったお父様に頷きながらも、お母様が新たな不安を口にする。
「そうね。あ、でも、じゃあ、もしかしたら寝間着のまま?」
「はい、いつも寝間着にガウンで過ごされていて。新しいお着替えは、そのまま置いてありましたから」
「まだ、寒いと言うほどの季節ではないが…」
 9月末の避暑地は、それでも東京と違って気温が低い。寝間着一枚で過ごす季節でないことは確かだ。

 夕暮れどきの光景が広がるリビングの大きな窓を、みんなが不安気に見やったそのとき。玄関のドアが開く音がして、全員の意識がそちらへ向いた。
 入って来たのは、有さんだった。
「有!」
 お母様が駆け寄る。
「お母さん…」
 そう言った有さんの顔には、疲労と不安がくっきりと現れていた。
「有、透子さんは?」
 お父さんも近寄って、そう訊ねる。
 有さんは、ゆっくりと頭(かぶり)を振った。
「そんなに遠くへ行けるはずがないのだけれど」
「そうね、有。座って、温かいものでも飲みましょう?」
 憔悴しきった有さんを見ているのが辛かった。
 いまあたしにできることは?いったい何ができる?有さんとお母さんのために。
「菜っ葉、兄貴にもお茶を…」
 そう言った惺に、あたしはきっぱりと告げた。
「あたし、探してくる!」
「いや、菜っ葉。もうすぐ暗くなるから…」
 惺の言葉を最後まで訊かずに、あたしは玄関へ走った。
「ま、待て、菜っ葉」
 慌てた惺が、追いかけてくる。
 けれど、惺より先にあたしの腕を掴んだのは、有さんだった。
「菜乃果、行くな」
「で、でも」
「いったいどこを探す気だ」
「ど、どこでも。どこもかしこも、全部、世界中全部っ!」
 我ながら無茶苦茶だと思う。でも、あたしは本当にそうする気だった。
「菜っ葉、落ち着けって」
 惺が有さんの背中越しに言う。
 だけど、あたしは諦めなかった。
「待ってる、お母さんは絶対待ってる。探してくれるのを、たった独りで。可哀想だよ、早く見つけてあげなくっちゃ」
 有さんが突然、あたしの腕を強く引っ張ると、その胸にあたしを抱きしめた。
「菜乃果、そうだな。菜乃果の言う通りだ。俺は…俺は…菜乃果、お前は…」
 あたしは久しぶりに実感した愛しいひとの温もりから抜け出ると、有さんの手を掴んで言った。
「行こう、有さん。お母さんを探しに」
「わかった」





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  • Date : 2017-04-09 (Sun)
  • Category : アイス
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