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⑭浅野兄弟

 例の飲み会以来、浅野さんとあたしたちの間には仲間意識とか信頼感とかが一層強くなり、何でも話せるいい関係性が生まれた。たまぁ~に、お互い遠慮がなさ過ぎることがあるけど、それはまぁご愛嬌と言うことで。
 ということで、今日も浅野さんは企画開発事業部の一角で文字通りお茶を濁しているわけだが。
並木さんは訳あって、昔取った杵柄というか、スタイリスト時代のスキルを活かしてショップ巡り中だ。
「なぁ、菜乃介」
「なんですか、邪魔しないでください」
 あたしは、ネットや知り合い関係に取ったアンケートの集計中。
「やっぱ、女ってのは影のある男に惹かれる訳?」
 邪魔しないでと言ったあたしの言葉をまるっと無視して、浅野さんが似合わないことを言った。
「は?どうしたんですか、いい年して恋煩いですか?」
「お前ねぇ、最近リオンに似てきたぞ。前はもう少し、俺に対して優しかったぞ」
 あは、それはスミマセンでした。
 あたしは心の中で謝って、ぺろ、と舌を出す。
「だって。似合わないこと訊くから」
「似合わないかなぁ。まぁ、そうだな」
 浅野さんも、へら、と笑って認める。
「似合わないのは認めるけど、で、どうなんだよ?」
「影のある男、ですか?どうかな、人によるんじゃないですか?」
「お前は、どうなんだよ?菜乃介」
 え?あたし?あたしは…
「う~ん、影があるからって、そこだけに惹かれるとかはないかな」
 正直に答えたその言葉に、浅野さんが驚く。え、なんで?
「ホントか!? お前は、影のあるタイプが好きそうだと思ったんだけどなぁ。じゃあ、じゃあさ、直樹の秘密を訊いても、クラ…とかこない?」
 はぁ、何言ってるんですか?浅野さん、単細胞ですか?
 失礼な発言は心の中だけにとどめて、あたしは言った。
「別に…。そうか、専務もいろいろあったんだな、とは思いますけど。そもそも人って、誰でもいろいろ抱えてるものじゃないですか。ことさら他人に言わないだけで」
 まだびっくりしている浅野さんに、こっちの方がびっくりだ。
「あの…、女子はそんな単純じゃありませんよ?」
「そうなのか!?」
 うわぁ~、浅野さん。もしかして、恋愛スキル低すぎ? 人のことは言えないけど。

「そうか、くそ、わかってたんだな、あの人。くっ、負けた、賭けに負けた…ぶつぶつ」
 今度は訳のわからないことを言いはじめた浅野さんに、大丈夫か?と思いながら訊く。
「誰ですか?あの人って、賭けって、何の賭けですか?」
「いや、それはほら。ひ…あ、」
「ひ?」
 浅野さんの眼が泳ぐ。
「えぇとっ。ひ、ひっ、ひっ…」
 ??? どうした、まさかヒキツケでも起こしたか?
「ひ、人でなしの、そう、人でなしのだな、先見の明がある…あ、」
 浅野さんがさらに混乱して、今度はがば、と自分の口を両手で押さえつけた。
 先見の明?
「ああ、もしかして、借金肩代わりしてくれた人、ですか?」
 浅野さんがまだ両手で口を押えたまま、眼を白黒している。
 あの~、窒息する気ですか?
「な、なんで、わかった」
 いや、だって。わかるでしょ、そんな簡単なこと。
「う、ダメだ。バレたら殺すって言われてたんだ。マズイ、絶対マズイ。あ、俺帰るわ」
 頭を抱えるようにして、いきなり立ち上がった浅野さんは、そのままふらふらと入口の方へ歩き出した。
「え?あ、浅野さんっ?どうしたんですか、帰るんですか?」
 訳がわからない状態のあたしをそのまま放置して、浅野さんは部屋を出て行った。
 いったい、どうしたんだ?
 一瞬ぽっかーんとして後ろ姿を見送ったけど、まぁいいや、とあたしは仕事に戻った。
 
 そこに今度は。
「お疲れさま」
 と言って三代目が入って来た。
「あ、おかえりなさい、専務。お疲れさまです」
 3日ほど出張続きだったはずの三代目は、相変わらず忙しそうだ。眼の下に疲れの影を認めて、あたしは言った。
「あの。アイスコーヒー、いかがですか?」
 梅雨の晴れ間の今日は気温も盛夏かと思うほど高く、額に汗をかいた三代目はほっとした笑顔を見せると言った。
「ああ、ありがとう」 
 事業部に備えたばかりの小さな冷蔵庫からアイスコーヒーのパックを出し、氷を入れたコップに注ぐと、ミルクとガムシロップ、ストローを添えて三代目の前に置く。
 三代目は相当疲れているのか、ミルクだけでなくめずらしくガムシロップも入れて、アイスコーヒーをおいしそうに飲んだ。
「ところで、兄さんが慌てた様に帰って行ったけど…?」
 ああ、会ったんですね。
 最後は挙動不審みたいになった浅野さんを思い出して、あたしはく、と笑った。
「?」
 三代目が怪訝そうな表情で、どうしたのと目顔で訊いてくる。
「専務。浅野さん、借金全額返済したって本当ですか?」
 ああ、と言う風に三代目はちょっと顔を曇らせた。
「まったく、兄さんは。ずっと返済が滞っていたかと思ったら、いきなり社長室にやってきて、現金で残額の80万円を置いていった。いきなりどうしたのかと問い詰めた私たちに、昔からの知り合いが都合してくれたって言うんです」
 昔からの知り合い? へぇ、そんな奇特でお金に余裕がある人がいたんだ。なら、なんで最初からその人に借りなかったんだろう。
「そんな関係のない、言わば他人に迷惑をかけるくらいなら時間がかかってもいいから身内に返済しなさいと言った社長に、兄さんは返済が必要のない金だと言ったんです」
「返済が必要ない? それって、どういう…」
「詳しくはどうしても言わなかったけれど、契約金にみたいなものだとか…」
 ああ、そう言えばバイトはじめたとか言ってたっけ。でもバイトで、契約金?
「またおかしなことに関わっているのではと、社長は大変心配していたんですが、そうでもなさそうで…」
「そう、ですか」
「なにか、訊いていませんか?」
 と言われて、あたしはギクリとした。
 三代目の質問が浅野さんのことだとわかっていても、あの秘密を知ってしまったことが、あたしの態度をどことなくぎこちないものにする。
「い、いえ。とくに何も!」
 思わず声に力が入ってしまった。
 三代目が、ちょっと怪訝そうな顔をした。
 マズい、あたしボーカーフェイス苦手なんだよぉ。
 そのとき事業部のドアが軽くノックされて、綺麗な女性がドアを開けた。
「失礼いたします」
 その女性はあたしには見向きもせず、三代目を見ると優雅な仕草と声でこう告げた。
「専務、社長がお待ちかねですが」
「ああ、悪かった。すぐ行く」
 そう言うと、三代目は立ち上がった。
「コーヒー、ご馳走さま。なかなか君たちと打ち合わせができなくて、申し訳ない」
 そう気遣ってくれる三代目に、あたしは言った。
「お忙しいのはわかっています。それより、社長がお待ちですから」
 ああ、と頷いて、三代目は急ぐように事業部を出て行った。


 浅野さんには、ああ言ったけど。
 人の抱えている影や宿命は、似ているようで根本的に大きく違うのだと思う。
 たとえば有さんと、三代目。
 実の両親ではない人達に育てられたという意味では、その境遇は似通っていなくもない。
 でも三代目は、知らない人達にいきなり引き取られたわけではない。しかも母親は不幸にも亡くなってはいるけれど、存命な実の父親とともにそれが誰なのか、ちゃんとわかっている。
 そして三代目は、待っていてくれる人がいる。幼い頃はきっと母親が、そしていまは愛情を注いで育ててくれた母親兼社長が。三代目は、亡くなってしまった母親を待つ人ではない。母の面影を持つ新しい母に、幼い頃もいまも待たれている人なのだ。
 有さんとは、そこが決定的に違う。

 有さんは、実の両親を知らずに育った。しかもその両親が生きているかも死んでいるかもわからないまま、たった独りで“ 待って”いたのだ。
 いつ迎えに来てくれるのか、永遠に迎えになど来てくれないのか、それすらもわからないまま。
 でも、有さんはきっと心のどこかで待っていたのだと思う。確たる望みのない状況で幼い子供がひたすら待ち続ける、それはどんなにか切なく空しく狂おしい時間だっただろう。
 ただ、ひたすら絵を描きながら。優しいけれど他人のシスターたち、そして同じように孤独を心の奥深くに抱え込んだ子供たちの中で。
 やがて迎えに来てくれたのは、実の両親ではなくて、新しい両親になる人達。その家庭に迎え入れられて、有さんは待つことを止めただろうか?
 その答えは、あの絵の中にあるような気がした。
 有さんが描いた、後ろ姿の母親の絵。
 それが氷川家のお母さんなのか、実の母親なのか、あのとき有さんにもわからなかったのではないだろうか。
 自分が心待ちにしているのは、いまのお母さんの笑顔なのか、本当のお母さんの笑顔なのか。振り向いてほしいのに、振り向いてほしくない、なぜならどちらでも苦しいから。もしいまのお母さんの顔でなければ、自分を引き取って育ててくれた人への義理が立たない。だけど本当のお母さんだとしても、自分はその顔すら知らないのだ。振り向いたその顔が思い描いていた母とは全く別の顔だったら、いや顔のないのっぺらぼうだったら…。
 有さんの葛藤が、いまなら少しはわかる。ううん、実のところはわかったなんておこがましいだけかもしれないけど。

 そんなとき、待ち人が現れたら…。
 その人との時間を取り戻そうとするのは、当然だ。知りたかったこと、訊きたかったこと、確かめたかったこと、過去と現在を整理しなければ、有さんみたいに頭のいい人だって前には進めない。
 時間が必要なのだ、待った時間と同じくらい、いやそれ以上の密度が濃い時間が。

 ねぇ、有さん。
 だからあたしも、待とうと思うの。
 待っていることを告げることもできなかった有さんと同じように、ひっそりと誰に告げるのでもなく。
 ただ待って、待って、待って、待って。
 逢えない時間を、想いの時間に変えていく。
 答えがない、終わりが見えないからこそ、あたしはそこに期待なんかしない。
 ただ、待つだけ。あの日の幼い有さんのように。
 迷子の仔猫のままで。開け放たれた鳥籠から出ることもできずに、隅っこに縮こまる盲目な鳥のように。




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  • Date : 2017-03-19 (Sun)
  • Category : アイス
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