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⑬専務の秘密

 浅野直樹の名前は、この世に生を受けたときは『片山直樹』だった。
 片山直樹の母、彩華(あやか)は直樹が2歳のときに病死した。
 直樹の父、片山友利(かたやまゆうり)は浅野興産の社員で、彩華は浅野グループの直系の次女、つまり浅野麗華(あさのれいか)の妹だった。
 妻の死後、男手一つで直樹を育てると言った片山友利に、麗華と彩華の父は反対した。片山友利は将来を嘱望された男で(だからこそ浅野家の令嬢である彩華との結婚に何の障害もなかったのだが)、仕事と育児の両立で持てる能力を疲弊させるにはあまりにも惜しい逸材だった。
 それに、まだ2歳と言う幼い子供には、母の愛情と温もりが不可欠だと浅野家の誰もが考えた。
「ねぇ、お父様。あたしが直樹の面倒も見るわ」
 5歳の長男がいる麗華が、そう申し出た。
「しかし、お前はレイカ・インターナショナルを立ち上げたばかりだろう?」
「大丈夫、これまでだって経営に関することは真也(しんや)さんがやってくれたし。あたしの仕事はデザイン部門の管理をすることだから、お手伝いさんやベビーシッターの手を借りれば十分可能よ」
 麗華の夫、浅野真也は婿養子だった。麗華とは大恋愛の末に結婚し、他の浅野家の人材から見れば凡庸の部類に入るが、情と懐の深さは経営面だけでなく相談役としても存在感を示しはじめていた。
「直樹、麗華おばちゃん好きでしょ?」
 まだあどけない2歳の男の子は、母と仲が良く、似た容姿を持ち、母が亡くなってからいっそう可愛がってくれる麗華が大好きだった。
「うん、大好き」
「直坊、おじちゃんは好きか?」
 浅野真也が、子供や動物になぜか好かれる温厚な表情をさらに優しく崩して、直樹に訊ねた。
 ちょっと小首を傾げて可愛らしく考えた直樹が、やがて言った。
「うん、一真お兄ちゃんの次に好き」
 それを訊いて、浅野真也は傍らに立っていた、自分の息子に訊いた。
「一真。お前、弟を欲しがっていただろう。直樹がなってくれるぞ」
「お父さん、違うよ、僕が欲しかったのは子分だよ」
 つんと鼻を上げてそう言った一真の手を、小さな手がそっと握った。
「一真お兄ちゃん…」
 やっと歩きはじめた直樹を可愛がり過ぎて、いつも最後は泣かしてしまう不器用な一真が、きゅっと眉根を寄せた。
「なんだよ、直樹。心配するなよ。よし、今日から直樹を僕の子分にしてやるっ!」
 それを見た浅野麗華は、片山友利に言った。
「友利さん、あなたは浅野グループのために欠かせない人よ。思う存分、その力を発揮して頂戴。直樹は、大事な妹の忘れ形見は、あたしが責任持って育てるわ」
 こうして幼い直樹は浅野真也と麗華の養子となり、一真と共に2人の子供として育てられることとなった。
 そして現在、片山友利は浅野興産の取締役として、期待以上の仕事をしている。彼はこの5年後に再婚し、2児の父となった。


✵ ✵ ✵

 浅野さんの話を聞き終えた並木さんとあたしは、三代目の秘密の予想もしなかったシリアスさに、ぽかんとした。
「え、いや、これどうリアクションしたら…」
 やっと我に返った並木さんが、いまだ戸惑ったままで浅野さんに問う。
「は?どういうことだよ、好きにリアクションすればいいだろ?」
 訊いてはいけない秘密を訊いてしまった感ありありのあたしたちと対照的に、浅野さんはいたってフツーだ、むしろ気にしなさすぎる。
「あ、あの…ですね。話しの内容が予想以上に重いのと、そんな重大な秘密をあたしたちごときに話しちゃっていいんですか?」
 あたしの意見に並木さんも、激しく同意する。
「そうですよ。これ、マジ重大な秘密っていうか…。あ、あれ?このこと、レイカ・インターナショナルの正社員の人達は、どのくらい知ってるんですか?」
 並木さんが、大事なことに気づいた。
「あ?たぶん俺んちの家族以外、知らないんじゃねぇか?もし知ってたら、直樹に秋波送ってくる女子社員は多少なりとも減るだろうし、それ以前に女は一般的には口軽いから会社中に広まってるだろ」
 な、な、な、なんですとぉ~? 浅野さん、なんて秘密を暴露してくれちゃったんですかっ!
 並木さんとあたしは、恐らく同じ考えが浮かんで、思わず顔を見合わせた。
 じゃ、じゃあ、この秘密がもしバレたとしたら、漏らした犯人は…。
「あ、あたしたちが、まず疑われるってこと?」
 ひえ~となって互いの手を握り合ったあたしたちを、浅野さんは涼しい顔で、しかも若干うすら笑いを浮かべて見ている。
「うわぁ、訊かなきゃよかったぁ~。なんで話したんですかっ、浅野さんっ!」
 今度は頭を抱えた並木さんに、浅野さんがしれっと言う。
「何言ってんだよ、野次馬根性丸出しで訊きたがったのは、お前らだろ」
 そ、そうですけど…。
 どうしていいかわからない並木さんとあたしは、気を落ち着かせようと、すっかり泡が消えた生ビールを口に運ぶ。
「あ、おかわりする?それ、もうマズいだろ」
 はい、じゃあ…じゃなくって。
 もう、浅野さんてば、なんでそんなに呑気で平然としてられるんですか。

 新しい生ビールが運ばれてきたところで、浅野さんが言った。
「大丈夫だよ。だってお前ら、チームだろ?しかも直樹本人が選んだチームだ」
「浅野さんだって、そのチームの一員ですよ?」
 お酒が弱いはずなのに、2杯目の生ビールを飲んでも全然酔わないことに気づきながら、あたしは言った。
「うん、だからさ。直樹が抱えてるいろんなことを理解した上で、チームでいてくれよ」
「でも、もし社内にバレたら?」
 並木さんが訊く。
「あのさぁ、リオン。秘密ってのは、バレるときはバレるんだ。それに俺たちは、こんなの秘密でも何でもないと思ってる。ただ、こっちからあえて言うまでもないことだって思うから、言わないだけで」
「バ、バレてもいいって、専務も社長も思ってるってことですか?」
 そう言って、あたしと並木さんは再び顔を見合わせる。
「俺らにとって、それはあんまし重要なことじゃないからな。むしろ問題なのは、直樹がいままでいい子過ぎたことだよ」
「いい子過ぎた…?」
「ああ。あいつには、反抗期らしい反抗期がなかったんだよ」
 その言葉に、事実に、並木さんとあたしはギクリとした。
 親子なら、実の子なら、当然あるはずの成長の証とも言える反抗期。多かれ少なかれ誰にもあるであろうそれが、なかったってことは…。
「あいつは、いつだって期待に応えようとし過ぎてきた。だから今回の新規事業への執念は、あいつなりの反抗期じゃないかって俺は思うんだ」
「だから、社長も許したんでしょうか?」
 恐る恐る聞いたあたしに、浅野さんがふっと笑う。
「さぁな、それはどうかわからないな。あの人は、つまり社長は、直樹は本物の優等生だって信じてるからな。実の息子より、100倍頼りにしてるよ」
「にしても」
 とぼそりと呟いた並木さんが、浅野さんをまじまじ見る。
 へ?と若干嬉しそうに見つめ返す浅野さん。
「どうして、こっちはこうなっちゃったんですかね?」
 その言葉を訊いて、あたしはぶ、とビールを噴きだした。
「お、おい、汚ねぇな、菜乃介。ていうか、何だよリオン。その言い草は、酷ぇな」
「だって!実の息子がこんなで、養子の次男があんなって…あたしが母親だったら、超ムカつくっ。泣くっ、いや泣くに泣けない!」
「こんなって、どんなだよっ。あんなって…酷ぇ…」
 もっともな並木さんの意見に軽~くショックを受けている浅野さんに、あたしはつい追い打ちをかけた。
「見事な悪役、ヒールっぷりですけど。浅野さん、そこまで崩れなくても」
「ぅっ、菜乃介っ、お前まで。悪かったよ、こんなで、ここまで崩れて」
 ふいっとそっぽを向いて、ぐぃっと一気にビールを飲む浅野さんを見ながら、並木さんとあたしは噴き出した。
「いいんじゃないですかぁ、お兄ちゃん。ダメダメ長男と超優秀次男、バランスは取れてますから」

 並木さんの言葉に、さらに不貞腐れたように頭を掻いた浅野さんだったけど…。
 もしかしたら。
 損な役回り、ついつい買って出ちゃったのかも、とあたしは思った。
『兄貴はああ見えて、弱者には優しいんです』と言った三代目の声が思い出された。弱者というのは、やっぱり三代目自身のことだったんだろう。
 浅野さんの奇抜な格好やルートから外れた生き方の理由を、三代目は薄々感じていたんだろうか。
「ねぇ、浅野さん」
「おぅ、なんだよ、菜乃介」
「浅野さんは、いまの生き方、後悔してないんですか?」
 はぁ?と一瞬、浅野さんが驚いた表情になった。
「何言ってんだ、菜乃介?後悔するわけないだろ。俺は自由だ、正直だ。この生き方しかできねぇよ」
「そう、ですか」
 だけど浅野さんは、ふっと真顔になってつけ加えた。
「後悔してるって訳じゃないけどさぁ」
「はい」
「直樹にさ、押しつけちゃったんじゃないかって思うことはあるよ」
「押しつけた?」
「ああ。真っ当な生き方、期待に応える生き方。お前は心底それが望みだったのかって、一度くらい訊いてやっても良かったのかなぁって」
 なんか…浅野さん、お兄ちゃんじゃん。それに、やっぱいい人じゃん、変人だけど。
「もし訊いて、望んだのはこんな生き方じゃないって言われても、浅野さんに専務の代わりなんてできる訳もないんだから、しょうがないんじゃないですかぁ?」
 すっかりいろいろ立ち直った並木さんが、きっぱりそう言った。
 それに浅野さんは、ぐぅ、と一言唸るとガハハと笑った。
「ちぇ。その通りだよ、リオン。だからさ、お前ら、直樹を助けてやってくれよ。がんばって新しい事業、成功させてやってくれよ」
「あのですね、忘れてるみたいですけど、浅野さんだってチームの一員なんですからねっ!」
 並木さんが念を押すように、人差し指をピッと立ててわざと厳しい表情で言った。
「はいはいはいはい、わかってますよ」
「はい、は一回!」
「お前ねぇ、リオン。小姑気質なんじゃねぇか?」
「誰が小姑ですか!」
 浅野さんがボケて並木さんがツッコむと言う役割分担が、その夜、確定した。よく話し、よく飲み、よく食べ、お互いを信頼できた、とてもいい飲み会だった。




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  • Date : 2017-03-18 (Sat)
  • Category : アイス
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