プロフィール

Author:mikazuki0602
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
オリジナル小説の
実験室へようこそ♪
本業の傍らゆるゆる
のんびり更新してます。
ざっくり気ままな試作でつが、
著作権は放棄していないでつ。
初めての方は「New!更新情報」
or「contents」からどうぞ。
(*´ω`*) Since 2013.6.2

【R18限定記事について】
男のひと目線の描写じゃなく、女子目線でホントのところを描きたいでつ お読みいただくには、パスワードを入力いただくか下記URLからどうぞ 「小説家になろう」グループ内 R18女性向小説サイト「ムーンライトノベルズ」 灯凪田テイルのXマイページへ移動します。 http://xmypage.syosetu.com/x1507h/
メール

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
カウンター
フリーエリア
632

㉒悲 報

 それは突然だった。 9月の良く晴れた日、夏の暑さがやっとひと段落して、秋がおずおずと顔を覗かせはじめた頃。「瑞希さんが…」 その悲報は、祥子さんからもたらされた。「え…」 あたしは絶句した。 うそ。 だってあの日、画廊であった瑞希さんは、これまで見たどんな彼女より幸せそうで未来を控え目だけど楽しそうに語ってくれたのに。彼女を治そうと一生懸命になってくれる大切な人の存在、そしてこれからの夢すら口にし... <span style="font-size:large;"> それは突然だった。<br /> 9月の良く晴れた日、夏の暑さがやっとひと段落して、秋がおずおずと顔を覗かせはじめた頃。<br />「瑞希さんが…」<br /> その悲報は、祥子さんからもたらされた。<br />「え…」<br /> あたしは絶句した。<br /> うそ。<br /> だってあの日、画廊であった瑞希さんは、これまで見たどんな彼女より幸せそうで未来を控え目だけど楽しそうに語ってくれたのに。彼女を治そうと一生懸命になってくれる大切な人の存在、そしてこれからの夢すら口にしていた。<br /> それを瑞希さんは、叶えなくっちゃいけなかったのに。誰よりも、幸せな時間を取り戻さなくちゃいけなかったのに。<br /> その人も瑞希さんも、きっと治ると信じていたはず。あたしだって、信じていた。<br /> それなのに、何故?<br /> 神様は意地悪だ、人生は残酷だ。<br /> どうして瑞希さんに、こんな悲しい運命を与えたの?<br /> 酷い、酷いよ。<br /> あたしは悲しみよりも怒りを感じて、両手で拳をつくって立ち尽くした。怒りのあまり、涙すら出ない。<br /><br /> だけど…。<br /> きっと。<br /> もっと悔しくて悲しくて受け入れられないのは、瑞希さんを治そうと必死だったはずのお医者様、そして野島先生やご家族の方々。<br /> 心の中が急速に冷えはじめたのは、秋風のせいではないだろう。理不尽な宿命に、手も足も出ない人間たちの無力さ、限界をまざまざと見せつけられたからだ。<br /> 瑞希さん、どんなに心残りだっただろう。瑞希さん、あなたの人生は本当にこれからだったのに。<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 9月最後の週末、瑞希さんのお通夜と告別式が行われることになった。<br /> あたしは近親者ではないから、お通夜だけに行くことに決めた。惺と待ち合わせて、祭儀場へ向かう。あたしたちと同じように喪服姿の人達が、次々に祭儀場へ入って行く。<br /> 受付には、祥子さんの姿があった。<br /> 記帳をし、香典を渡し、惺とあたしは末席に近い方へ座った。<br /> しばらくして、とても背の高い人が野島教授のもとへゆっくりと歩み寄るのが見えた。<br /><br /> 有さん、だった。<br /> ブラックスーツを隙なく着こなしたその人は流麗で崇高で、不謹慎にもあたしはしばし呆然と見惚れてしまった。有さんの体形にぴったりと誂えられた漆黒のスーツは、その冷たい雰囲気を際立たせていて、近寄りがたいほどのオーラがいっそ魅惑的ですらあった。<br />「…兄貴だ」<br /> 声も出せずにいるあたしに、惺はそう言った。<br /> 野島教授としばらく話していた有さんは、やがて一礼すると席を探そうとでもするかのように会場を見渡した。<br />そして、眼が合った。<br />息が止まるかと思った。<br />見つめ合っていたのは恐らく数秒、だけどそれがあたしには永遠の時間のように感じた。そんなはずないのに。<br />やがて有さんはゆっくりと視線をあたしから剥(は)がすと、あたしたちと反対側の列に行ってしまった。<br />「なんだよ、兄貴のヤツ」<br /> 惺はそう言ったけれど、あたしは逆にほっとした。<br /> だけどお通夜の間中、あたしは有さんの存在を息苦しいほどに感じていた。瑞希さんへの思いと有さんへの想いが交差して、あたしの心は千々に乱れたままだった。<br /><br /> やがて、お通夜が終わった。<br /> 後ろの方にいたあたしたちは、比較的早く会場外へ出た。<br />「待つよな、兄貴のこと」<br /> 惺に言われても、頷くことができない。<br /> だって今日は瑞希さんのために来たんだもの、有さんに逢えたのは偶然。その偶然を利用してはいけない気がした。<br />「…行こ、惺」<br />「なんでだよ」<br />「だって…」<br /> あたしは惺のスーツの袖を引っ張った。<br />「帰ろう」<br />「だって、せっかく」<br />「いいの」<br />「菜っ葉」<br />「今日は、瑞希さんのために来たの。だから…」<br />「…わかった」<br /> 文字通り、後ろ髪を引かれる思いで、あたしはある意味勇気を振り絞って会場に背を向けた。<br /> ゆっくりと踵を返して歩き出す。<br /> 頑張れ、菜乃果。振り返っちゃダメ。ほんの一瞬でも有さんと眼が合った、それだけでいい。<br /> 消そうとすればいっそう鮮やかに蘇る、さっき眼にしたばかりの長身でクールで、美しくノーブルな大人の男のひと。<br /> 瑞希さん、あたし…ダメかもしれない。有さんは素敵すぎる。せっかく応援してくれたけど、吊り合わなさ過ぎる。好きなだけじゃあ、忘れられないだけじゃあ、もうどうにもならないのかなぁ。<br /><br /> その夜遅く、惺からメールが来た。<br />『兄貴、明日の告別式にも出るんだって。だから、今日は家に泊まってる』<br /> あたしは返信することができなかった。 <br /> しばらくすると、惺からまたメールが来た。<br />『なんか、伝えておくことあるか?』<br /> あたしは、しばらく考えてそれから短い返信をした。<br />『ううん。ありがと、惺。おやすみなさい』<br /> <br /> おやすみ、惺。<br /> おやすみ、有さん。<br /> おやすみ、きっと報われることのないあたしの悲しい恋心。<br /> <br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 翌日は、小雨混じりのあいにくの天気だった。<br /> 結局眠れない夜を過ごしたあたしは、日曜なのをいいことに10時を過ぎてやっとベッドから這いだした。<br />「もう、告別式ははじまっているんだろうなぁ」<br /> 時計を見ながら、そんなことを呟いてみる。<br /> 窓の先の灰色の空を見上げながら、瑞希さんを思う。昨日見た遺影は、儚げで美しい瑞希さんがそれでも微かに微笑んでいた。穢れのない真っ白な美しさに、あたしは神々しさすら感じた。 <br /> きっと神様は、瑞希さんが天使のような人だから、もうこの世で修行することなどないから、こんなにも早く召されたんだろうと思った。<br /> だけど召される前に、もっと恋を楽しんだり、想い想われふたりきりで過ごしたりする時間を持たせてあげてほしかった。そんな当たり前のことすら、瑞希さんには特別なことだったのだから。<br />  <br /> お昼ご飯を食欲がわかないままにもそもそと食べ終わって、紅茶を淹れた。<br />「あ、雨やんだ」<br /> 空はまだ薄墨色だったけれど、雲の間から数本の細い陽光が射し、光の階段のようにきらめいていた。<br /> ああ、きっと瑞希さんは、あの光の階段を昇って行くのだ。たくさんの天使が彼女を迎えに来て、もう苦しみも哀しみもない別世界へ迎え入れるのだ。<br /> そんなことを考えていたら、突然スマホが鳴った。<br />「ん?惺からだ」<br /> 電話に出たあたしの耳に、めずらしく切羽詰まった惺の声が飛び込んできた。<br />「菜っ葉、あのな。落ち着いて聞いて」<br /> そう言った惺の方が、本当にめずらしく慌てている。<br /> どうしたの、惺らしくない。<br />「兄貴の、兄貴の母親が行方不明になった!」<br /> え?<br /> 一瞬、何を言われているかわからなかった。<br /><br /> ユクエフメイ…?<br /> 行方不明!?<br /><br /> え、え?なんで?<br /> だって有さんの母さんは、あの別荘で…。<br /> あ、有さんは、いまは東京。<br /> どういうこと?その留守の間に、何かあったってこと?</span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" /></a><br /><br /><br />
    Return to Pagetop