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【R18限定記事について】
男のひと目線の描写じゃなく、女子目線でホントのところを描きたいでつ お読みいただくには、パスワードを入力いただくか下記URLからどうぞ 「小説家になろう」グループ内 R18女性向小説サイト「ムーンライトノベルズ」 灯凪田テイルのXマイページへ移動します。 http://xmypage.syosetu.com/x1507h/
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607

⑥漫才のような再会

 年内に、あたしの就職は決まらなかった。せっかくインターンシップをさせてもらったレイカ・インターナショナルも、2次試験であっさり落ちた。 お正月には、心配しつつもそのそぶりを見せようとしない両親に、あたしはつい嘘をついた。「いままで、ちょっと高望みしすぎだったかも。でも、贅沢言わなければ大丈夫、だから」 本当は高望みどころか、手当たり次第に受けた会社は全滅だった。入りたい会社とか、やりたい仕事とか... <br /><span style="font-size: medium;"><span style="font-family: &quot;ヒラギノ角ゴ Pro W3&quot;;"><br /> 年内に、あたしの就職は決まらなかった。せっかくインターンシップをさせてもらったレイカ・インターナショナルも、2次試験であっさり落ちた。<br /> お正月には、心配しつつもそのそぶりを見せようとしない両親に、あたしはつい嘘をついた。<br />「いままで、ちょっと高望みしすぎだったかも。でも、贅沢言わなければ大丈夫、だから」<br /> 本当は高望みどころか、手当たり次第に受けた会社は全滅だった。入りたい会社とか、やりたい仕事とか、この時期なのにいまだ漠然としたままなのだから落ちて当然だ。<br /> それでも正直な気持ちは、「就職さえできれば、本当にそれでいいの?一生とまでは言わなくても、新しい生活と未来がかかっているっていうのに」…。<br /> 我ながら、往生際が悪すぎる。だけど就職出来ないということより、青写真が描けないことに、手ごたえがないことに、あたしはやっと焦りはじめていた。<br /><br /> もう友人のほとんどが就職の決まった2月、思いがけない人から電話があった。<br />「おぅい、女子大生。就職は決まったかぁ?」<br /> カメラマンの浅野さんだった。<br />「それが…」<br />「はぁ? まだ決まってないのぉ? 内定は? …げ、ひとつもナシ? あのねぇ…」<br /><br /> 強引に会う約束をさせられて、あたしはいま、待ち合わせの喫茶店にいる。約束の時間はもう、15分過ぎた。ったく、浅野さんらしいと言えば、それまでだけど。<br />「やー、わりぃ、わりぃ」<br /> 少しもそう思っていない様子の浅野さんが、やっと喫茶店に姿を現した。<br />「ホントですよ、浅野さんから呼び出しといて。…て、うゎ、なんで髪の毛、ブルーなんですかっ」<br /> 久しぶりなのに、我ながら随分な挨拶だと思う。でも浅野さんを前にすると、普通は年上に対して失礼なことも平気で言えてしまう。なんでだろう。<br />「え? 緑、飽きたから。こっちの色の方が銀髪にも合うって、ワリと好評なのよ?」<br /> ふうむ、確かに。銀髪をベースに濃い目のブルーが、シックでいい感じだ。いや、銀髪とブルーのツートンであること自体、シックとは言いがたいのだけど。<br />「ま…緑よりはマシです」<br /> あたしの答えを聞いて、浅野さんは可笑しそうに破顔した。<br />「なんだ、案外元気じゃん、女子大生」<br />「そんなことないですよ。就活、全滅ですよ。せっかく浅野さんが無理やりインターンシップ頼んでくれた、お母さんの会社も落ちました」<br />「あれまぁ」<br /> 浅野さんが、呑気な顔で呆れたような声を出した。<br />「スミマセンでした、せっかくインターンシップさせてもらえたのに」<br /> あたしは、とんがりブーツを履いた足を行儀悪く組んでいる浅野さんに、深々とお辞儀をした。<br />「まぁ、それはいいけどさ。ところで、可能性のあるとこは、まだあんの?」<br /> あたしは、正直に頭(かぶり)を振った。<br />「あらら、どーすんの? もうすぐ3月だよ、就職諦めんの?」<br />「諦めたくないですけど、決まらないんだからしょうがありません」<br /> ふうん、と浅野さんはらしくない思案顔でコーヒーを一口飲んだ。<br />「俺んとこ、来る?」<br />「や、です」<br />「おいおい、即答かよ」<br /> どんだけ失礼なんだ自分、と思うけど浅野さんに対しては、どこまでも正直になれる。建前や嘘が通じない人だと、最初からわかっているからだろうか。<br /> それなら逆に、こういう人の事務所で働かせてもらえる方が、幸せなのかもしれないな、とちょっとだけ思う。<br />「ま、俺の事務所じゃ、たいした給料払えないしな」<br /> ははは、と気楽に笑う浅野さんに釣られるように、あたしもはははと笑った。<br />「まあ、いいや。ちょっとつき合って、女子大生」<br /> 浅野さんはそう言うと、伝票を手にして立ち上がった。<br />「え?ど、どこへ?」<br />「いいから、いいから」<br />「い、いや。良くないです」<br /> あたしの言葉をまるっと無視して、浅野さんは2人分のコーヒー代を払うと、店の外へ出た。<br />「くっつそぉ、さみいな、今日は」<br /> 独り言ともつかないことを言って、ずんずん先を歩いて行く。<br />「ちょ。浅野さんっ、ホントどこ行くつもりなんですかっ!」<br /> なんか、これデジャヴな感じがするのは、気のせいか?<br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 比較的新しい臨海エリアを走る電車に乗って、あまりなじみのない駅で浅野さんは降りた。<br />「いい加減、どこへ行くか教えてくださいよ」<br /> ユニークな外観の巨大な建物が目を引くエリアを、きょろきょろ見回しながら、あたしは不安になって浅野さんに訊く。<br />「大丈夫だって、怪しいところじゃないから」<br />「いや、怪しいのは浅野さんです」<br /> あたしがそう言うと、浅野さんはいきなり立ち止まって振り向いた。<br />「酷いこと言うね、女子大生」<br /> そうかな、だって、事実だし。<br /> とくに気分を害した様子もなく、浅野さんは吹き抜けのエントランスに入ると、誰かに電話をかけた。<br />「あ¨? いや、来たよ。当然じゃん。 はぁ? 今更なに言ってんだ。 来いよ、待ってっから。絶対だぞ、このやろう」<br /> な、なに? ケンカ腰? や、ヤダよ、変なことに巻き込まれたくない。<br />「あ、浅野さん。やっぱ、あたし帰ります」<br />「ここまで来て、何言ってんだ、女子大生」<br /> い、いや、これ、この状況、嫌な予感しかしないですから。<br />「だ、だって。アブナイ関係の人、来たらイヤですもん」<br />「はぁ?」<br /> 浅野さんは心底呆れたような眼であたしを見たが、やがてぷ、と吹き出した。<br />「俺って、そんなに信用ないかね?」<br />「ありませんよ、兄さん」<br /> げ、げげげげげ~~~~!<br /> あたしの背後から浅野さんに声を掛けた人、振り向かなくてもわかる。<br /> な、なんで三代目が、ここにいるのぉ~~???<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br />「…と言う訳だ」<br /> 3人で入ったコーヒーショップで、いまだ就職の決まらない情けないあたしの状況を説明した浅野さんが、3代目を見た。<br />「そうですか」<br /> 浅野さんの説明を訊き終わり、三代目はそう淡々と言うなり、コーヒーを飲んだ。<br />「そうですか、じゃないよ。なんで女子大生、不採用にしたんだよ。お蔭で、就職できるかどうかもわかんない追い詰められた状況になってんだよ」<br />「インターンシップをしたからといって採用されるわけではないことは、就活生にとっては常識ですよ」<br /> もっともな三代目の意見に、あたしはこくこくと頷いた。そんなことも知らない、非常識な就活生と思われたくないし。<br />「だからさ、常識なんかどーでもいいんだよ」<br /> い、いや、良くないと思います、浅野さん。<br />「困りましたね。採用不採用は、社長以下取締役たちの決定ですから、僕はなにも…」<br /> ふん、と浅野さんは面白くなさそうな顔をして言った。<br />「どうせ、出来レースだろ」<br /> 三代目は無言で浅野さんを見たが、それに関して否定も肯定もしない。<br />「あ、あの。ほんとうにスミマセンでした。落っこちたくせに、こんなところまで来て」<br /> あたしは、おろおろと謝ることしかできない。<br />「いえ。おそらく、兄さんに無理やり連れてこられただけでしょうから」<br /> 凄い、当たってる。お見通しだ。<br />「なぁ、直樹。なんとかなんないの?」<br /> いくら三代目が社長と親子だからって、専務だからって、それはどうにもならないだろう。いや、むしろそれでどうにかなったら、会社として組織としていかがなものかと思うし。<br />「なるわけないでしょう」<br /> そうだ、そうだ。…って、頷いてる場合ではないが。<br />「そこをなんとか…って、オイ女子大生。なに他人事みたいな顔してんだよ、お前からも頼めよ!」<br /> へ、なんで? いや、だって無理でしょ。<br />「い、いや、だって。それは無理です、いくらなんでも」<br />「そんなこと、わかんないだろっ!」<br />「い、いや。思いっきり、わかり切ってますけど」<br /> レベルの低い掛け合い漫才みたいなあたしたちのやり取りを黙って訊いていた三代目が、ぷ、と笑って、すぐにそれを取り繕うように真顔になった。<br />「す、すみません」<br /> 三代目の貴重な時間をこんなことに使わせて。申し訳なさであたしは、消え入りそうな気分になった。<br /><br />「仲がいいんですね」<br /> は?<br />「ま、まさか」<br />「まさかってなんだよ、女子大生」<br /> いや、浅野さん、ツッコむとこ、そこじゃないですから。<br />「兄さんに対して、これほど垣根なく話す人を、私は初めて見ました」<br />「垣根なくって、どういう扱いよ、俺。それはさぁ、世間知らずなだけだろ。女子大生だし」<br /> 浅野さん、その言葉そっくりそのままお返しします。永遠の世間知らずは、あなたです。<br /> また、くすりと笑った三代目が、今度は結構マジな顔になって言った。<br />「兄さん次第、ですよ」<br /> 三代目が突然、意味の分からないことを言った。 どういうこと?<br />「へ?」<br /> 真面目な顔の三代目に、浅野さんはとぼけた顔で訊き返す。 ワザとらしく鼻なんかほじって、なんかヘタな芝居の見本を見ているようだ。<br />「社長は、条件を出したはずです」<br /> ??? なんか、話がヘンな方向に?<br />「いや、だからさ。それは…」<br />「自分は条件を飲まない、でもこっちの言うことは訊いてくれでは通りませんよ」<br /> なんだ? なんだ?<br /> あたしは訳がわからず、三代目と浅野さんの顔を交互に見る。<br />「ちぇ、しょーがねぇなぁ」<br /> とうとう浅野さんが諦めたようにそう言うと、三代目が初めてあたしの顔を正面から見た。<br />「沢口さん」<br />「は、はい」<br />「契約社員になる気はありませんか?」<br /> は?</span></span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2016-06-25 (Sat)
  • Category : アイス
606

いまさら素人

最近、小説の書き方がわかりかけてきた気がします。「げ。いま頃!?」はい。いまさらデス。(*´ω`*)だって素人、それもド素人ですもん。でも、書き続けていると少しずつ少しずつ見えてくるものがあって。。。やっぱ、コレ「ライフワーク」だと思っています。そろそろ、「カクヨム」にもなんか投稿せんと。。。『いつか王路さまが』でも移そうかなぁ~って思ってるんですけど、その時間すら取れない日々。。。。。(;´∀`)... 最近、<br />小説の書き方が<br />わかりかけてきた気がします。<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/20140324060200c6f.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-67.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/20140324060200c6f.jpg" alt="アップ" border="0" width="259" height="180" /></a><br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「げ。<br />いま頃!?」<br /><br />はい。<br />いまさらデス。(*´ω`*)<br /><br />だって素人、それもド素人ですもん。<br /><br />でも、書き続けていると<br />少しずつ少しずつ見えてくるものがあって。。。<br /><br />やっぱ、コレ<br />「ライフワーク」だと思っています。<br /><br />そろそろ、「カクヨム」にもなんか投稿せんと。。。<br />『いつか王路さまが』でも移そうかなぁ~って<br />思ってるんですけど、<br />その時間すら取れない日々。。。。。(;´∀`)<br /><br /><br />
605

⑤ベール越しの世界

 傷つくだけ、傷つけばいい。 これは精神の自傷だ。 自分で傷つけなければ、いてもたっても居られない。「有さんのお母さん、有さんのことを『仁さん』で呼んでたの」「うん」 惺が無表情で答える。いつもと変わらない冷静さで、ハンドルを握っている。 ああ、惺は運転が上手いな。IQ140超えだと、こんなに滑るように快適なドライブができるのだな、なんて考えている自分が可笑しい。そんな自分を、あたしはどっか離れたとこ... <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: &quot;ヒラギノ角ゴ Pro W3&quot;;"><br /> 傷つくだけ、傷つけばいい。<br /> これは精神の自傷だ。 自分で傷つけなければ、いてもたっても居られない。<br /><br /><br />「有さんのお母さん、有さんのことを『仁さん』で呼んでたの」<br />「うん」<br /> 惺が無表情で答える。いつもと変わらない冷静さで、ハンドルを握っている。<br /> ああ、惺は運転が上手いな。IQ140超えだと、こんなに滑るように快適なドライブができるのだな、なんて考えている自分が可笑しい。そんな自分を、あたしはどっか離れたところから見ている。<br />「でね、有さんはお母さんのこと『透子さん』だって」<br />「うん」<br /> あたしは、なんだかますます可笑しくなってきて、くすくす笑い出してしまう。<br />「くっ、可笑しいでしょ? だって、まるで恋人同士みたい」<br /> 恋人同士…。<br /> じゃあ、有さんとあたしは? もう恋人同士じゃないの?<br />「きれいな人だったんだよ、まるで女神みたい。かっこいい有さんとも、とってもお似合い。絵になるふたりなの」<br /> あたしは、バカみたいに饒舌で。そんな自分、嫌になる。<br />「あはは…」<br /> なんだか、本当に可笑しくなって、あたしは高らかに笑った。まるで、なにかとても楽しいことがあったみたいに。<br /><br /> あははあははあははあははあはは、可笑しい、なんて可笑しんだろう、あはははは…<br /> <br /><br /> 惺が突然、車を路肩に留める。<br /> ? <br /> そして、ハンドルに乗せた両腕に自分の顔を埋めた。<br />「どした、の? 惺、気分悪くなったの?」<br /> しばらく、惺はそのままの姿勢で答えなかった。<br />「…惺? 大丈夫?」<br />「大丈夫じゃないよっ!」<br /> いきなり、惺がそう大きな声で言った。<br /> え、そんな具合が悪かったの? ごめんなさい、あたし、気づかなくって。<br />「菜っ葉っ! お前、全然、大丈夫じゃないっ!」<br /> そう叫ぶと、惺は今度はがば、と顔をあげるとあたしを睨みつけるみたいに怖い眼で見て言った。<br />「菜っ葉、もっと激しく罵れよ。兄貴のこと、兄貴の母親のことっ!」<br /> 惺。なにを、なにを言ってるの?<br />「…せめて、俺の前で泣いてくれ。思い切り、泣き叫んでくれよ」<br /> 今度は、切なそうな声で惺はそう言うと、顔を背けた。<br /> 惺が、寂しそうだ。 だから、あたしは大好きな弟の肩に手を置いて、できる限りの優しさを込めて言った。<br />「ごめんね、惺。どうしても、泣けないの。どうしてかわからないけど、全然悲しくなくて。むむしろ可笑しいの」<br /> ふにゃりと笑ったあたしをしばらく見つめていた惺は、めずらしく迷うように手を伸ばすと、おずおずとあたしの頭を抱きしめた。抱き留められた惺の胸は温かくて、小刻みに震えていた。<br />「菜っ葉、菜っ葉…」<br /> 可笑しいよ、惺。 どうして、惺が泣くの? 可笑しいよ、ねぇ? <br /> 惺ったら、どうしちゃったの?<br /> 大丈夫、泣かないの。 ほら…あたしがここに…いるのは、誰?<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br />「菜乃果っ!今日は、菜乃果の激励会だよっ」<br /> 知花ちゃんが元気よくそう言って、テーブルの上のグラスにお茶を注ぐ。<br />「お母さんが、煮物とか唐揚げとか、いっぱいつくってくれたんだ」<br /> 早乙女君が、甲斐甲斐しくジップロックに詰められたそれらをお皿に並べる。<br />「惺君は?」<br />「あ、俺?おふくろが、いろいろ持たせてくれた」<br /> 惺が持ってきた袋から、サンドイッチやローストビーフやキッシュなんかが次々と出てくる。<br />「うわぁ、相変わらず豪華ぁ~!」<br /> 知花ちゃんが感激したように、舌舐めずりした。<br />「じゃ、取りあえず乾杯?」<br /> 早乙女君が、笑顔でそう言う。<br />「何に?」<br /> そう訊いたのはあたしだ。<br />「何にって、そりゃあ、菜乃果の就活がうまく行くように…」<br /> そう言う知花ちゃんに、あたしは言った。<br />「まず、知花ちゃんの内定に、でしょ? それから、早乙女君の合格にも」<br />「ぼ、僕の場合は、父親のツテだから…」<br /> そう、早乙女君は会計士試験には一度落ちたけれど、お父さんの懇意にしている人の会計事務所で修行がてら働くことに決まったのだ。<br /> 知花ちゃんは、都内の芸術劇場のスタッフに内定した。<br /> 国内だけでなく海外からのアーティストのお世話をしたり、経験を積めば自分で公演の企画もできるという、希望通りの仕事だ。<br />「おめでとう、早乙女君。それと、やりたい仕事に就けた知花ちゃんも」<br />「…沢口さん」<br />「だから、今日は2人のお祝いの会だよ」<br />「え、で、でも」<br /> 知花ちゃんが、ちょっと戸惑っている。そんなの、知花ちゃんらしくない。<br />「なによぉ、あたしだって、これからなんだからねっ!諦めてないよっ」<br /> あたしは元気にそう言った。 <br /> そう、あたし、元気、だ。<br />「そのためには、ふたりの幸運にあやからないとな、菜っ葉」<br /> 惺がそう言って、その場の空気を変えてくれた。<br />「そういうことならっ」<br /> と知花ちゃんは、グラスを高く掲げる。<br />「あたしと、早乙女君の内定にカンパ~イ!」<br /> そうそう、それでこそ知花ちゃん。<br />「おぅ、いいね!乙女、おめでとさん!」<br /> 惺に祝福されて、早乙女君の頬がぱっと赤く染まる。<br />「長倉さんも、おめでと!さすがだね!」<br />「へへ、ありがと。ところで、惺君は?やっぱ、院?」<br />「まぁね」<br />「お父さんのいる大学に行くの?」<br />「いや、このままT大の大学院に進む」<br />「いずれは、海外の院も考えてるんでしょ?」<br /> そう言ったあたしの言葉に、知花ちゃんが真顔で驚く。<br />「うわっ、やっぱ凄いわ」<br />「でも、そうしたら僕、寂しくなる…」<br />「なに言ってんのよ、乙女っ!」<br /> 知花ちゃんが、ぱし、と早乙女君の肩を叩く。<br />「い、痛いよ。長倉さん」<br />「なによ、これくらいっ、あたしだって、理史がいつ海外勤務になるかわかんないんだからねっ」<br /> そう、近藤君は一年目は日本だと思う、と言っていたけれど、まだ決定ではないらしい。<br />「今日、近藤君は?」<br />「…うん、僕は遠慮するって」<br /> そう言って、知花ちゃんがあたしをちら、と見る。<br /> 大丈夫だよ、知花ちゃん。幸せなふたりを見ても、あたし傷ついたりしないから。<br />「へ~、彼氏、気が利くんだな」<br /> 惺が、また空気を読んでそう茶化した。<br />「そ、そうなのよっ。理史は頭いいだけじゃなくて、気もいいヤツなんだからっ」<br />「うわぁ、最近、長倉さん惚気に遠慮がないよね」<br />「なんだとぉ、乙女っ!」<br /> 大袈裟に拳をつくった手を上げた知花ちゃんから逃げるように、早乙女君が惺の背中に逃げ隠れようとする。<br /> それを見て、あたしはまた笑った。<br /><br /> あはは、楽しい。<br /> いい会だ、いい友達たちだ。<br /> あたしは、幸せだ。そう、幸せ。<br /> だけどその幸せが、なんだか薄いオーガンジーのベール越しに見えるのはなぜだろう。<br /><br />「ほら、菜っ葉。食えよ」<br />「あ、うん」<br />「おいしいよ~、このキッシュ。ローストビーフも」<br />「う、うちのお母さんの煮物も、テッパンのおいしさだから。ほら、沢口さん、高野豆腐好きだったでしょ?」<br />「うん、ほっとするおいしさだよねぇ。早乙女君のお母さんの煮物」<br /><br /> そう答えながら、ふわふわと浮いている感じがするのは避暑地から帰って来てからずぅっと。<br /> あたし、どうしちゃったんだろう?<br /> 神経が、一本抜けたみたいだ。<br /> ううん、もともとヌケてるから、もう一本どころじゃないかも。<br /><br /> ふにゃり、と笑ったあたしに惺が言う。<br />「俺さ、菜っ葉のその情けない笑い顔、実は一番好きなんだよな」<br />「そ、そうなのっ!」<br /> 早乙女君が、過剰に反応する。<br /> 何もかもが、夢のようだった。<br /> 楽しい会話も、大好きな友達も、それぞれのお母さんがつくってくれた、おいしい温かな想いのこもった料理も。<br /> 幸せだ、とても。<br /><br /> ただ、有さんだけがいない世界。<br /> 一番大切なひとがいない世界。<br /> そんな世界、何の意味があるんだろう。<br /> だから、あたしは破壊したい。<br /> 消えて無くなれ、無くなってしまえ、この世界…のあたし!</span></span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2016-06-18 (Sat)
  • Category : アイス
604

カメの友はカメ

お友達の話です。相変わらず、ヘタな絵ですみません。(*´ω`*)「人間て、よく友達の話だけど…って言うわょね。(´-ω-`)」えっ。だから、と、友達の話だってば。(;^ω^)本当デス!!!... <span style="font-size:large;">お友達の話です。</span><br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/201606170559251d5.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-96.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/201606170559251d5.jpg" alt="合コン 001 (318x640)" border="0" width="318" height="640" /></a><br /><br />相変わらず、ヘタな絵ですみません。(*´ω`*)<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/2015020612154153a.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-75.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/2015020612154153a.jpg" alt="どや" border="0" width="130" height="161" /></a><br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「人間て、よく友達の話だけど…<br />って言うわょね。(´-ω-`)」<br /><br />えっ。<br />だから、と、友達の話だってば。(;^ω^)<br />本当デス!!!<br /><br /><br /><br />
603

診断メーカー『変態』

久々に、『診断メーカー』。あなたが変態かどうか診断します灯凪田テイル「イヒーwwww」医者「変態の進行が思ったより早い⋯だと?ダメだ。それ以上進んだら人に戻れなくなる」https://shindanmaker.com/633031うん。 とくに問題はないな(´-ω-`)... 久々に、『診断メーカー』。<br /><br /><strong>あなたが変態かどうか診断します</strong><br /><br />灯凪田テイル「イヒーwwww」<br /><br />医者「変態の進行が思ったより早い⋯だと?ダメだ。それ以上進んだら人に戻れなくなる」<br />https://shindanmaker.com/633031<br /><br />うん。 とくに問題はないな(´-ω-`)<br /><br />
602

④キャンバスと白い布

 ローテーブルの上に、有さんは男の人にしては優雅な手つきでトレイを置く。そしてトレイからクッキーを乗せたお皿を取って、テーブルの中央に置いた。次に空のティーカップを、あたしの前に置く。 きれいで長い指を久しぶりに間近に見て、あたしはドキリとしてしまう。この指がかつては、あたしの髪を掬い、耳朶をくすぐるように弄び、唇をなぞった。ふと顔を上げると、少し意地悪な有さんのまなざしに出逢う。再びドキッとして... <br /><span style="font-size: medium;"><span style="font-family: &quot;ヒラギノ角ゴ Pro W3&quot;;"> ローテーブルの上に、有さんは男の人にしては優雅な手つきでトレイを置く。そしてトレイからクッキーを乗せたお皿を取って、テーブルの中央に置いた。次に空のティーカップを、あたしの前に置く。<br /> きれいで長い指を久しぶりに間近に見て、あたしはドキリとしてしまう。この指がかつては、あたしの髪を掬い、耳朶をくすぐるように弄び、唇をなぞった。<br />ふと顔を上げると、少し意地悪な有さんのまなざしに出逢う。再びドキッとして、顔が赤らむのを感じた。<br />「何を、見ている」<br />「べ、別に」<br /> 慌ててそう言ったけれど、きっとあたしの心はお見通しのはずだ。だから頬がいっそう火照る。<br /> 有さんは、あたしから視線を外さないまま、ゆっくりと砂時計を逆さにする。音もなく落ちる砂を、あたしはじっと見つめた。有さんの視線が、まだあたしから外されていないのを痛いほど感じながら。<br /><br />「ゆっくり、時間をかけて」<br /> 有さんが低い声で囁く。<br />「う、うん。ちゃ、茶葉をちゃんと蒸らさなきゃ…」<br /> 上ずった声で、あたしは有さんの言葉を繋ぐ。<br />「時間は、愛情だ。待ち望んだ、おいしい一杯のための」<br /> わかってる。<br />「時間は焦らない、諦めもしない。やがて、そのときが来たら…」<br /> 時間は諦めない? 有さんの不思議な言葉が、あたしの心を捉えた。<br /> どういうこと、諦めないってなに?<br /> やがて砂時計の最期の砂が、細いくびれをするりと滑り落ちた。<br />「温かい幸せを、注ぎ込む」<br /> 注ぎ込む? いやいや。<br /> またもや意味深な言葉に感じるのは、きっとあたしがイヤラシイせいだ、恥ずかしい。<br /> 有さんがティーポットから琥珀色の液体を、あたしのカップに注ぐ。お砂糖を一さじ、そしてミルクをピッチャーから垂らして、スプーンでかき混ぜた。<br /> ドキドキが止まらない。あたしったら、いったい何を考えているの、こんなときに。<br /> 勇気を出して見つめた有さんの眼の奥が、一瞬いたずらっぽく光ったのは気のせいだろうか。<br /> 慌てて、紅茶のカップに手を伸ばす。だけどその手は震えていて、あたしは紅茶を少しこぼしてしまった。<br />「ご、ごめんなさい」<br /> ふ、と笑って、有さんがティッシュでそれを拭きとる。<br />「世話の焼ける仔猫だ」<br /> 仔猫…まだ、そう呼んでくれるの、有さん?<br /> あっさりと翻弄されるあたしの心に水を差すように、有さんは冷静な声で現実に引き戻す。<br /><br />「就職活動は、上手くいっているか?」<br />「あ…」<br />「ん?」<br /> あたしは思わずうなだれてしまった。<br />「上手くいっていないのか?」<br /> 顔を上げられないままに、あたしはこく、と頷く。<br />「内定は?」<br /> 無言で首を振る。情けない。<br />「一社くらいは?」<br /> 観念したように頭(かぶり)を振った。<br />「ふぅ」<br /> と有さんが小さなため息をつく。<br />「だって」<br /> そう言って、思い切って有さんを正面から見る。<br />「だって?」<br /> 有さんが、余裕の表情でそう訊き返し、コーヒーを一口飲む。<br />「ううん、何でもない」<br /> 言い訳や情けない発言をしてしまいそうで、あたしは慌ててそう言った。<br />「俺のせいか?」<br />「ち、違うよ」<br /> あたしはさらに焦ってそう否定する。<br />「そうか」<br />「そうだよ」<br />「自惚れていたか」<br /> え? いま、なんて?<br /> 有さんのせいだと言えば、次に何て言うの? でも、これは決して有さんのせいではなくて。<br />「あたしが、ダメダメなだけ」<br /> そう、あたしのせいだ。全部、自分の弱さのせい。<br /><br />「ゆ、有さんは?有さんの方は、どうなの?毎日、どうしているの?」<br /> あたしは、たまらなくなって話題を変えた。<br />「そうだな」<br /> 有さんは、またコーヒーを一口飲むと続けた。<br />「母のために食事を作って、掃除洗濯をして、ときどき仕事もしている」<br />「仕事?」<br />「ああ、小梅のこと、覚えているだろう?」<br /> 覚えている、小梅さんの部屋で、みんなで花火を観たのだ。あのときは、有さんとあたしは永遠だと思っていたのに。<br />「新田 煉といって、俺に大学の仕事を紹介してくれた人がいる。この人は、広告業界でもかなり有名な人なんだが、少し前に独立して個人事務所をつくった。小梅は、新田さんについて行ったわけだけど、そこからときどき仕事の依頼が来る」<br />「小梅さんから?」<br />「小梅だったり、新田さんからだったり、かな」<br /> やっぱり有さんは凄い。会社を辞めたからと言って、才能がある人を周りは放っておかないのだ。あたしとは大違い、ホントにつくづく情けない。<br />「でも、ここで出来る仕事なの?」<br />「ああ。インターメット環境というヤツは、本当に凄いな。企画書やデータなんかはメールで送れるし、テレビ会議もできる。便利な時代になったものだ」<br />「そう、なんだ」<br /> 有さんは、実はもう仕事などしなくていいのだ、と惺が言っていた。<br />「兄貴はこの先、食うには困らないよ。それがいいことか、悪いことかは別にして」<br /> 惺はそう言った。おそらくそれは、遺産の事だろう。<br /> なかなか飲み進まない紅茶が、掌の上で冷めはじめたのを感じた。だから、あたしはそっとカップをお皿の上に戻した。<br />「有さん」<br />「ん?」<br />「絵を…絵を、描きはじめたの?」<br /> キャンバスの方に視線を移しながら、あたしは訊いた。<br />「ああ。時間は、たっぷりあるから」<br /> なんの絵? 誰の絵?<br /> そう訊きたいのに、喉が貼りついたようになって、声が出ない。慌てて紅茶を一口飲む。焦っていたので、むせる。<br />「どうした、菜乃果。何を慌てているんだ?」<br /> ああ、やっぱり。見透かされてしまう、この人には。<br /> なんだかいろいろ悔しくて、情けなくて、涙が滲みそうになったから、あたしは無理に笑った。<br />「あはは。ダメだなぁ、あたしって。もう、相変わらず」<br /> そんなあたしを、有さんはすぅと眼を細めるとしばらく見つめた。<br /> な、なに? あたし、なんか変なこと言った?<br /> ふいに有さんの眼が、揺れ動いた。いや、何か複雑な感情が、瞳の色を微かに変化させたのだ。<br />「菜乃果…」<br />「…は、い」<br />「菜乃果は、変わるな」<br /> え?<br />「情けなくていい、就職も決まらなくていい。お前は、お前だけは、変わるな、絶対に」<br /> どういう、こと?<br />「な、情けなくていいなんて、酷いよ、有さん」<br /> 意味がわからなくて、あたしは混乱したまま言った。<br /><br /> だけど、もし。<br /> それがあたしの気持ちのことだったら、変わるわけがない。だってだって、こんなにも好きなのに。溢れるほどに、有さんのことが好きで好きで堪らないのに。<br /> まるで、今日はそれを確かめに来たみたいだ。ううん、思い知らされに来たみたい。<br />「お前が変わらないことが、俺の救いだ。希望だ」<br />「ゆ、う、さん?」<br /> ひたりと据えられた視線が痛い。手を伸ばせば触れられる距離。目の前の愛しくてたまらない人に、数センチ、この手を伸ばせばいいだけなのに。<br /> 何かが、目に見えない何かが、あたしたちの間にあって。有さん、あたしではそれを越えられないよ。だから、有さんが、有さんなら…。<br /> 乱れる気持ちが、きっと同じだと感じた刹那、階上から小鳥のようなか細い声がした。<br /><br />「仁…さ、ん。仁さん、どこ?」<br /> 有さんがはっとして、階上を見上げた。<br />「仁、さん。嫌よ、置いて、行かないで」<br /> 仁さん?<br /> それは、有さんのお父さんの名前だ。<br />「菜乃果、帰ってくれ」<br /> 有さんが、焦っている。初めてだ、そんな有さんを見るの。<br /> 階段を降りてくる足音がする。<br />「菜乃果!帰るんだ!」<br /> 有さんが、少し乱暴にあたしの腕を掴んで立ち上がらせた。<br />「仁さんっ!」<br /> そのときリビングの入り口に、真っ白なロングのナイトウェアを着た女神が現れた。<br /> …なんて、美しい人。<br /> この状況への驚きより、その気持ちが勝った。<br /> この世のものとは思われないほど、透明感あふれる穢れのない美しさ、年齢も有さんのお母さんならそれなりのはずなのに、まるであどけない少女のようだ。<br />「仁さん、そのひとは、誰?」<br /> 焦点の少し合わない眼で、美しい人は問うた。<br />「ああ、透子さん。起きたんだね、よく眠れた?」<br /> 有さんが優しい優しい声で、そう言った。<br /> そんな柔らかで極上のビロードのような有さんの声を、あたしは初めて訊いた。<br />「だぁれ?仁さん」<br />「ああ」<br /> 有さんはめずらしく少し躊躇して答えた。<br />「お手伝いさん、の面接、だった」<br /> お手伝いさん…。有さんの咄嗟の嘘に、わかっているのにあたしは深く傷ついた。<br />「お手つ…」<br /> よく意味がわからないのか、女神が美しい白い顔を傾げた。<br />「さあ、透子さん。上へ行こう。彼女は、もう帰るから」<br /> 女神は素直に頷くと、隣に立った有さんの腕に両手を回して小さな白い頬を寄せた。<br />「菜乃果、帰るんだ」<br /> 背を向けたまま、有さんが低い声でそう言った。<br /> ぐさり。<br /> また、あたしの心に短剣が突き刺さる。<br /> 放心したままのあたしにもう一度きつく、有さんは帰るように言うと、女神を優しくエスコートして2階へ向かった。<br /> 階段を上がる2つの足音を聞きながら、あたしはもう一度、白い布に覆われたキャンバスを見た。<br /> そろり、と足を進める。そっと手を伸ばしてみる。<br /> 見たい。 …でも、怖い。 <br /> 伸ばした手は、あと数センチでその布を取り払うことができるのに。<br /><br />「仁さんっ、…仁さん。ねぇ……お願いが、ある…の」<br /> 甘い声が、階上から聞こえてきた。<br /> あたしは踵(きびす)を返すと、その場から、居間から逃げ出した。<br /> 別荘の玄関のドアを開けると、外へ飛び出した。<br /> いつの間にか、小雨が降っていた。<br /> 避暑地にふさわしい、しっとりと優しい雨が木々の濃い緑を濡らしている。<br /> いや、雨ではなかった。<br /> これは…あたしの涙?<br /><br /> そう気づいた瞬間、庭の先の方に止まっていた一台の車のドアがスローモーションのように開いた。<br /> すらりと姿を現した背の高い、金髪の男の子。<br />「っ惺…」<br /> 惺は黙ったまま、両腕を広げた。<br /> あたしは、もうなにも考えられず、その腕の中へ走り飛び込んだ。</span></span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br />
  • Date : 2016-06-11 (Sat)
  • Category : アイス
601

小指 訴訟

突然ですが、皆さまは小指(足)の存在をいつも意識していますか?私は年に数回、嫌でも意識させられます。ぶつけるんです、ドアとか壁の角に。小指を、けっこう思い切り。(-_-;)一度など腫れて眠れないくらいぶつけたことがありました。あまりに痛いので、翌日、整形外科に。レントゲンを撮り、骨は折れていないものの「ずいぶん激しくぶつけたねぇ(;´∀`)」と呆れられました。バカなのか、おっちょこちょいなのか、距離感が掴め... 突然ですが、<br />皆さまは<span style="font-size:large;">小指<span style="font-size:x-small;">(足)</span>の存在</span>をいつも意識していますか?<br /><br />私は年に数回、嫌でも意識させられます。<br /><br />ぶつけるんです、ドアとか壁の角に。<br />小指を、けっこう思い切り。(-_-;)<br /><br />一度など腫れて眠れないくらいぶつけたことがありました。<br />あまりに痛いので、翌日、整形外科に。<br />レントゲンを撮り、骨は折れていないものの<br />「ずいぶん激しくぶつけたねぇ(;´∀`)」<br />と呆れられました。<br /><br />バカなのか、おっちょこちょいなのか、<br />距離感が掴めない病なのか、<br /><span style="font-size:large;">そのすべてなのか</span>わかりません。(●´ω`●)<br /><br />でも、そのうち小指から訴訟を起こされるぢゃないかと、<br />思ってます。。。。(*´Д`)<span style="font-size:x-small;">アワワ</span><br /><br />
600

しまパト戦利品

じめじめ、ベトベトな季節到来。この後に来る猛暑にも備えて、おウチでだらだら過ごせるリラックス・ウエアを求めてしまパトへ。で、思わぬいいもの、見つけちゃいました。おウチでだらだらどころか、おソトでさらさら着こなせる、サマーニットのワンピ発見!(^◇^) ハイゲージのニットは軽くて、意外に涼しくて、着心地も抜群、この夏ヘビロテ間違いなしです。一枚で着れば、仕事帰りのデートにもOK。清楚なブラウスをインすれ... じめじめ、ベトベトな季節到来。<br />この後に来る猛暑にも備えて、<br />おウチでだらだら過ごせるリラックス・ウエアを求めて<br />しまパトへ。<br /><br />で、思わぬいいもの、見つけちゃいました。<br /><span style="font-size:large;">おウチでだらだら</span>どころか、<br /><span style="font-size:large;">おソトでさらさら</span>着こなせる、サマーニットのワンピ発見!(^◇^) <br /><br />ハイゲージのニットは軽くて、意外に涼しくて、<br />着心地も抜群、この夏ヘビロテ間違いなしです。<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/20160607165358de3.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-96.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/20160607165358de3.jpg" alt="黒1 (2)" border="0" width="490" height="800" /></a><br /><br />一枚で着れば、仕事帰りのデートにもOK。<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/20160607164533a01.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-96.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/20160607164533a01.jpg" alt="黒3" border="0" width="522" height="640" /></a><br /><br />清楚なブラウスをインすれば、<br />クライアント受け良さそう。<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/20160607164523d31.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-96.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/20160607164523d31.jpg" alt="黒2" border="0" width="469" height="640" /></a><br /><br />ハードな小物を合わせれば、<br />休日のショッピングにもぴったり。<br /><br />このワンピ、1900円でした。<br />ちなみに3番目の写真のシャツも<br />しまむらで1500円ナリ。<br /><br />プチぷらGU&ユニクロ部もいいけど、<br />あたしはやっぱり「しまむら」一押しです(*^^*)<br /><br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/201310161454016d9.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-61.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/201310161454016d9.jpg" alt="ガン見" border="0" width="114" height="126" /></a><br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji"><br />「て、なに<span style="font-size:large;">センスもないくせに</span><br /><span style="font-size:large;">ファッションブログ気取ってんのょっ!</span><br />このブログは、にゃんこブログでしょ!!<br />初志貫徹しなさいょっ<img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2008-11-30/329788.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">」<br /><br />にゃんこブログではありません。<br />小説ブログです…<s>て、この会話も飽きたな(´-ω-`)</s><br /><br /><span style="font-size:x-small;">そして、初志貫徹もできそうにありません。。。ふへっ</span>。(●´ω`●)<br /><br />
598

短編 衝動

長編をずぅっと書いていると、短編を書きたい! という衝動にかられます。(*´ω`*)でも、ただでさえ更新が滞りがちの2長編かかえてるし、短編と言えどもそれなりの労力を必要とするので、思いとどまりました。「うぉ~、思いついた! これ、書きたい!!」のいつもの思いつき的短編は、プロットにとどめておくことに。あたし、大人になったなぁ~。え? 違う?? (●´ω`●)... 長編をずぅっと書いていると、<br />短編を書きたい! という衝動にかられます。(*´ω`*)<br /><br />でも、ただでさえ更新が滞りがちの2長編かかえてるし、<br />短編と言えどもそれなりの労力を必要とするので、思いとどまりました。<br /><br />「うぉ~、思いついた! これ、書きたい!!」<br />のいつもの思いつき的短編は、プロットにとどめておくことに。<br /><br />あたし、大人になったなぁ~。<br />え? 違う?? (●´ω`●)<br /><br />
597

コメったちゃん?

「激しく抱いて傷つけて」は、コメ欄開くのが初めて怖いなって思った作品でもあります。登場人物が、ヒロインに対して敵か味方か、みたいな見方をされたのが予想外でした。最終的にヒロイン側は「勝ち」、反対側は「完璧にやっつけろ」みたいな構図は小説の世界なのかなぁ?って悩みながら書いてた。で、「激しく~」ではなくて、「のケモノ、」のコメ欄を閉じちゃった(>_... <br />「激しく抱いて傷つけて」は、<br />コメ欄開くのが初めて怖いなって思った作品でもあります。<br /><br />登場人物が、<br />ヒロインに対して敵か味方か、みたいな見方をされたのが<br />予想外でした。<br /><br />最終的にヒロイン側は「勝ち」、<br />反対側は「完璧にやっつけろ」みたいな構図は<br />小説の世界なのかなぁ?<br />って悩みながら書いてた。<br /><br />で、「激しく~」ではなくて、<br />「のケモノ、」のコメ欄を閉じちゃった(>_<)<br />っていうのがあたしらしいんだけど。<br />たぶん、もの凄くわかりにくい性格だとは思う。。。(*´ω`*) ←うん!<br />
596

Twitter的なもの

別けあって、Twitterはやらないのでかわりに「つぶやく」ツイ的なもの、のカテゴリーがあってもいいかなぁ。。。なんて。問題は、どこへ置くか。取りあえず、「New!更新情報」のトップにでも置いとこうかな。。。。初の20万字超え長編「激しく抱いて傷つけて」なんですが、エロ部分を書き直して「カクヨム」に転載してみようかなぁ。と思って見直したら、エロ部分抜いたら、1/3くらいは書き直さんといけんことが判明。どんだけ、... 別けあって、Twitterはやらないので<br />かわりに「つぶやく」ツイ的なもの、のカテゴリーがあってもいいかなぁ。。。<br />なんて。<br /><br />問題は、どこへ置くか。<br />取りあえず、「New!更新情報」のトップにでも置いとこうかな。。。。<br /><br />初の20万字超え長編<br />「激しく抱いて傷つけて」<br />なんですが、エロ部分を書き直して「カクヨム」に<br />転載してみようかなぁ。<br /><br />と思って見直したら、エロ部分抜いたら、1/3くらいは<br />書き直さんといけんことが判明。<br />どんだけ、エロ書いてんだょっ!て話に。とほほ(*_*;<br /><br /><br /><br />
595

アイドルと〈う○こ〉

ちょっと眼を離したすきに、大事な資料の上で眠りこけてたmaoちゃん。どで~ん!「ちょ。失礼な効果音やめてょ!こないだの予防注射&定期健診でダイエット成功が判明したばかりなのにっ!!」はい。1年前は猫生(ねこせい)初の4㎏越えでしたが、今年は3㎏台に戻ってました。「おーほっほっほ。アタシはやれば出来るにゃんこなのょっ(^◇^)」違います。あたしがダイエット用ご飯をこぉっ~そり混ぜ混ぜして、食べさせ続けたお蔭... ちょっと眼を離したすきに、<br />大事な資料の上で眠りこけてたmaoちゃん。<br /><br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/201606041710392d4.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-96.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/201606041710392d4.jpg" alt="IMG_0400 (400x300)" border="0" width="400" height="300" /></a><br /><br /><span style="font-size:large;">どで~ん!</span><br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ちょ。<br />失礼な効果音やめてょ!<br />こないだの予防注射&定期健診で<br />ダイエット成功が判明したばかりなのにっ!!」<br /><br />はい。<br />1年前は猫生(ねこせい)初の4㎏越えでしたが、<br />今年は3㎏台に戻ってました。<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「おーほっほっほ。<br />アタシはやれば出来るにゃんこなのょっ(^◇^)」<br /><br />違います。<br />あたしがダイエット用ご飯をこぉっ~そり混ぜ混ぜして、<br />食べさせ続けたお蔭です。(-ω-)/<br /><br />それにさ。<br />maoちゃん、さっき〈う○こ〉してなかった?<br />資料が〈○んこ〉臭くなったらどーしてくれるのょっ。<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「あら。<br /><span style="font-size:large;">アイドルは〈うん○〉しない</span>って、ママが言ってたわ。<br />アタシ、ほら、ご近所のアイドル猫ぢゃない?<br />だからアンタがさっき片づけたのは、幻ょ」<br /><br />ほぉ~。<br />随分、臭い幻だこと。<br /><br />てか、アイドルは〈う○こ〉しないって、いつの時代の話だょ。<br /><br /><s>最近ハマってる菅田○暉くんだって、<br />〈うん○〉も〈○痢〉もすると思う。</s> ←わ~、スミマセンすみませんゴメンナサイっ!(;´Д`)<br /><br />
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③あたしの勇気

 どんなに落ち込んでいたって、現実は就活真っただ中の大学4年生なわけで。 心に力が入らないまま、あたしはなんとか就職活動を続けていた。だけど、必死に就活している人達に、抜け殻のあたしが勝てる訳もなく。 そんなあたしは当然、どの企業の担当者にも「本気で就職する気があるのか?」と見抜かれっぱなしだった。 最初に内定が出たのは、やはり近藤君だった。イギリスの銀行で希望通りの外資系、近藤君のぴか一の英語力... <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><br /> どんなに落ち込んでいたって、現実は就活真っただ中の大学4年生なわけで。<br /> 心に力が入らないまま、あたしはなんとか就職活動を続けていた。だけど、必死に就活している人達に、抜け殻のあたしが勝てる訳もなく。<br /> そんなあたしは当然、どの企業の担当者にも「本気で就職する気があるのか?」と見抜かれっぱなしだった。<br /><br /> 最初に内定が出たのは、やはり近藤君だった。イギリスの銀行で希望通りの外資系、近藤君のぴか一の英語力も生かせるとあって、とても嬉しそうだった。<br />「よかったね、おめでとう」<br /> そう祝福する早乙女君やあたしの隣で、知花ちゃんの顔がなんだか冴えない。<br />「どうしたの?」<br />「うん」<br />「あ、もしかして」<br />「うん。海外赴任の可能性もありだって」<br />「そ、そっか。どうするの?知花ちゃん」<br />「どうするって、遠距離?」<br />「また?」<br /> そうなったら、留学の時みたいに1年という訳にはいかないかも…という言葉をあたしは慌てて飲み込んだ。迂闊に言えないよ、そんな残酷なこと。<br />「理史と約束したんだ」<br /> 知花ちゃんは、ちょっと気丈に肩を揺らして見せた。<br />「お互いの夢を尊重するって。それでスカイプや有休使って、気持ちだけは離れ離れにならないようにしようって」<br />「そう、なんだ」<br /> 羨ましかった。<br /> 有さんは日本にいるのに、行こうと思えばすぐに行ける距離なのに…。<br /><br /> あたしは、はっと気づいた。<br /> そうだ、会いに行こう。<br /> 別荘でお母さんと暮らしてみて、有さんの気持ちにも何か変化があったかもしれない。もしかしたら、あたしに手伝えることだってあるかも。<br /> それは、一筋の光だった。<br /> その希望の光に、あたしは縋(すが)った。決行は、気持ちが弱くならないうちに。決心が鈍らないうちに。<br /> そう思い立ったのは夏休みまで、あと1週間を切る頃だった。<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br />「車、出すよ」<br /> 惺はそう言ってくれたけど、あたしはそのありがたい申し出を断った。<br /> 自分自身の事だから、もうこれ以上、惺に依存することはできない。自分ですべて行動して解決しないと、神様が味方してくれない気がした。それくらい、あたしの決心は必死だった。<br />「何回か行ったことあるから。場所だって、わかってるし」<br />「菜っ葉、そういうことじゃないんだけど」<br />「惺に頼っちゃダメな気がするの」<br /> 結局、やっぱり、惺はわかってくれて。<br /> あたしは独りで、あの別荘へ向かう決意をした。<br /><br /> 夏休みに入ってすぐ、あたしはあの別荘をめざした。<br /> 有さんには事前に連絡を入れた。最初は躊躇していた有さんだけど、有さんが驚くくらいあたしはしつこく食い下がった。どうしても、いま、行かなければいけない気がしたから。<br /> 東京から数時間、電車を乗り継いで到着した最寄駅からタクシーに乗る。<br /> 太陽がこれでもかと熱を注ぐ猛暑の東京から数マイル、ひんやりと心地よい別荘地の空気を胸いっぱいに吸い込む。<br /> ちょっとだけ、生き返った気がした。<br /> 駅を離れるとすぐに街道から曲線の多い小径(こみち)へとタクシーは進み、木立の中を走り向ける。木洩れ陽が遊ぶ別世界は人工的な音が遮断され、鳥の鳴き声が遠くに近くに聞こえるだけだ。<br /> 大丈夫。訳もなく、そんな風に言い訊かせる自分がいた。<br /><br /> 30分ほどで到着した別荘は、記憶にある佇まいのままだった。<br /> 色とりどりの夏の花やグリーンの中にさりげなく置かれた、苔生(こけむ)した車輪やうさぎのオブジェ。手入れの行き届いた庭の片隅に置かれたベンチと、そこに腰掛けている天使も懐かしい愛らしさのまま。なにも変わらない。<br /> そう、変わらない。<br /> このおとぎ話みたいな素敵な洋館は、有さんとのたくさんの思い出の棲み処でもあるのだ。<br /> そんな記憶にさらに勇気を貰って、あたしは玄関の前に進み呼び鈴を鳴らした。<br /><br /> 洋館の趣あるドアがゆっくりと開く。<br /> スローモーションのようにあたしの前に現れたその人は、とても背が高くて、あたしの大好きな理知的でクールな表情をしていた。<br />…有さん。<br />あたしの記憶にある、いつだって素敵な大人のオトコの人。だけど、しばらく逢わない間に少し痩せた?<br /> 長い睫毛から覗く瞳は少し疲れていて、愁いを含んだ表情がかえって大人の色気があって素敵すぎた。<br /> 「有さん…」<br />そう名前を口にした途端に、あたしは恋に落ちた季(とき)を思い出した。<br /> そう、この気持ちはあのときの…。あのとき? それはいつだったんだろう?<br /> 有さんに恋に落ちた瞬間は思い出せないくせに、その感覚は鮮やかによみがえって、胸を苦しく、とても苦しくさせる。<br /> あたし、やっぱり、好きだ。有さんが、誰よりも。<br />「来たのか、来てしまったのか。菜乃果」<br /> 有さんの第一声に、あたしは少しだけ傷ついた。それは招かざる客という意味を含んでいる気がして。<br /> だから、あたしは努めて明るく答えた。<br />「うん、来ちゃった」<br /> 有さんが少し困った顔をして、「そうか」と言った。<br /><br /> 通されたリビングは、やはり以前と変わりなくて。クラシックで品のいい家具と、ふかふかの絨毯、ヨーロッパ・スタイルのソファとローテーブル。<br /> 真夏の別荘の室内はひんやりと心地よい室温で、暖炉にはさすがに薪はなかった。<br /> だけどひとつだけ、初めて眼にするものがあって、あたしの視線は数秒間そこで止まった。<br /> 白い布が被せられた、おそらくキャンバス。布で覆われているせいで、そこに何か描かれているか、あるいは描かれていないのか判別できない。<br /> あたしの視線がそこで止まったことを、有さんはすぐに気づいた。<br />「絵、また描いているの?」<br />「ああ。時間だけは、たっぷりあるから」<br /> 何の絵?<br /> あたしはそう訊けなかった。<br /> ううん、誰の絵? と訊くべきだったのかもしれない。なぜだか、そんな予感がしたから。<br />「紅茶、でいいか?」<br /> 有さんが訊く。こくりと頷くと、また訊く。<br />「温かいのがいいか?冷たいのにするか?」<br />「温かいの、お願いします」<br /> 有さんが静かにリビングを出て行くと、あたしの眼はまた白い布に覆われたキャンバスへ向かう。<br /> そこに何が描かれているのか訊いてはいけない気がして、だからこそ訊きたい気持ちがむくむくと湧き上がってくる。<br /> キッチンの方を窺うようにしてから、あたしはソファから音もなく立ち上がった。一歩、キャンバスの方へ進む。さらにもう一歩。<br /> そっと右手を延ばしてみる。キャンバスを覆っている布まで、10数センチ。それはあたしにとって、途方もなく勇気がいる距離だった。<br /><br /> 見たい、どうしても。でも見られない、どうしても。<br /> 菜乃果、見たいんでしょ?<br /> ダメだよ、有さんの許可がないのに。<br /> 許可してくれると思う?<br /> 思わない。それだけは、何故か自信があった。<br /> じゃあ…。<br /> でも、怖いよ。<br /> 何が?<br /> そこに何が、誰が描かれているのかを確認するのが。<br /> それって、もうわかっているんじゃないの?<br /><br /> うじうじと自問自答した末に、あたしは天井を見上げた。<br /> 2階からは物音ひとつしない。有さんのお母さんは、眠っているのだろうか?<br /> 静かだ、とても。<br /> 精神が落ち着いていない、混乱していると有さんも惺も言っていたけれど、もしかしたら状態はそんなに酷くはないのかもしれない。そうしたら、有さんとお母さんと3人で笑い合える日は遠からず来るかもしれない。<br /> あたしは胸の前で、両手をぎゅぅと握り締めた。<br /><br />「菜乃果、どうした?」<br /> 紅茶とクッキーを乗せたトレイを運んできた有さんが、突っ立ったままのあたしを見て怪訝そうに訊いた。<br />「あ、ごめんなさい」<br /> すぐに謝るのは悪い癖だと、有さんと惺に言われたことがあったっけ。<br />「座りなさい」<br />「はい」<br /> あと数十センチで届いたはずのあたしの勇気は、あっさりと消え去った。</span></span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2016-06-04 (Sat)
  • Category : アイス
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