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582

⑲びっくりの四者会談

  自動ドアが開くと目の前は受付で、隙なく綺麗にお化粧した2人のお姉さんが完璧な笑みを見せた。 銀髪先っちょ緑色で明らかに大手アパレル企業を訪問するのに似つかわしくない男が、紺色スーツの就活生らしき女子をちょっと強引に引きずっているというのに、この完璧な営業スマイルはさすがだ。 そんなお見事な受付嬢の前に行くと、浅野さんはいきなりこう言った。「社長、いる?」「失礼ですが?」 さすがに一人のお姉さん...  <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><br /> 自動ドアが開くと目の前は受付で、隙なく綺麗にお化粧した2人のお姉さんが完璧な笑みを見せた。<br /> 銀髪先っちょ緑色で明らかに大手アパレル企業を訪問するのに似つかわしくない男が、紺色スーツの就活生らしき女子をちょっと強引に引きずっているというのに、この完璧な営業スマイルはさすがだ。<br /> そんなお見事な受付嬢の前に行くと、浅野さんはいきなりこう言った。<br />「社長、いる?」<br />「失礼ですが?」<br /> さすがに一人のお姉さんの方が眉を微かにひそめながら、それでも笑顔で応対する。まあ、声のトーンはかなり冷たいけど。<br /> そりゃそうだ、まず自分から名前を名乗る。女子大生でも知っている、社会の常識、いろはの「い」だ。なのに、この銀髪先っちょ緑の男はそんな常識すら意に介さないようだ。<br />「浅野一真が来たって伝えてよ。あ、あと1時間遅れた、すまんってさ」<br />「浅、野!?」<br /> それまで笑顔を崩さなかったお姉さんの表情が、急に慌てた様子を見せた。<br />「山根さん、社長室に…」<br /> きびきびした様子で隣のお姉さんにそう告げると、もう一人のお姉さんもあわあわした様子でどこかに電話をかけている。<br /> やがて笑顔がすっかり消えて、取り澄ました表情に変わったお姉さんが言った。<br />「社長がお待ちかねです。ご案内します」<br />「あ、いいいい。知ってるから場所、いまもまだ16階だよね?」<br /> 浅野さんはそう言うと、何が何だかわからなくて口をぽかんと開けたままだったあたしの腕を再び掴んで引っ張った。<br /><br /> 浅野さんに引っ張られるようにしてエレベーターの前まで行く間、社員らしき人達の訝しげな視線が痛い。それはエレベーターの中まで続いていたけれど、浅野さんが階数を告げた途端に、皆一斉にボーカーフェイスになった。その変貌ぶりがあまりにも極端で、可笑しいやら不安になるやら。<br /> きっとボーカーフェイスになった人達も、心の中ではあたしと同じことを考えているんだろう。<br /><br /> 16階、社長室?<br /> なぜこの銀髪先っちょ緑の怪しげな男が、無事に受付を通されたんだ?<br /><br /> エレベーターが16階について、浅野さんはまたあたしを引っ張るようにして降りた。しんとした廊下を歩く間に、とうとうあたしは浅野さんに訊ねた。<br />「あ、あのっ。ま、まさか、社長を脅しに行くとかじゃないですよね?」<br />「はぁっ?」<br /> 浅野さんは素っ頓狂な声をあげて、立ち止まった。<br />「なんで、俺が脅しに行くんだよ。しかもなんで、そんな突拍子もない発想になるんだよ」<br />「だって…」<br /> それ以外に思いつかない。<br /> こんな明らかにこの大企業に似つかわしくない男が、いきなり社長に会えるだなんて。しかも事前にアポを取っているらしいし、名前を告げたときの受付のあのお姉さんたちの慌てぶり。<br /> 悪いことしか、思い浮かばないじゃないか。そんなことに、巻き込まれたくないし。<br />「あ、そうか。社長になんていきなり会うの、怖いのか。おいおい、就活生だろ?願ってもない社長面接、いい度胸試しになるぞ。あはは」<br />「い、いや。あはは、じゃなくて…」<br />「ん? 緊張してんの? 大丈夫、大丈夫、練習だと思えばいいよ。あ、こんな貴重な機会をつくってくれた俺様に、感謝とかはいらないから。がはは」<br /> ふ、ふざけんなぁ~。迷惑なだけだ、感謝なんてするかっ!<br />「ほれ、行くぞ。ただでさえ、1時間遅れてんだ」<br /> そんなの、あたしに関係ないっ。い、いや~、帰らせてぇ~!!<br /><br /><br /> コンコン。<br /> ノックするんだ、一応。<br /> がちゃ。<br /> 応答待たないんだ、やっぱり。<br /><br /> 応接セットがある広い部屋の中に、品のいいスーツを着た女性がちょっと落着きなく歩いているのが見えた。<br />「わりぃ、遅れた」<br /> 少しも悪いと思っていない声で、浅野さんがそう言った。<br />「…一真」<br /> 面持ちも上品な女性が、そう呟く。<br /> もしかして、この人が社長? こんな大企業の社長にしたら、意外なほど線の細い、柔らかな物腰だ。<br /> その女性が、無言でソファに座るように促した。<br /> あたしはというと、浅野さんに再び強引に促されるようにして彼の隣に座った。これから、いったい何が起ころうとしているのか。<br /> その女性は重厚なデスクに向かうと、その上にあった電話の受話器を取り上げた。<br />「コーヒーを、4人分お願い。それから浅野専務を呼んで」<br /> よかった、即、警察に通報されるわけじゃなかったみたいだ。でも…、え? また浅<br />野? しかも、専務って言った?<br /> やがて女性がこちらにやってきて、あたしたちの眼の前のソファに腰を下ろした。浅野さんをじっと見つめたまま、無言が続く。なんだか居たたまれない。<br /><br /> かちゃり。<br /> やがて、あたしたちが入って来た背後のドアではなく、左側のドアから秘書らしい女性がトレイにコーヒーを乗せて入って来た。<br /> そしてテーブルにコーヒーを置いて退出するその女性と、入れ替わるようにして入って来た人の姿を見て、あたしは思わず声を上げそうになった。寸でのところで、堪えたけれど。<br /><br /> さ、三代目!? ど、どうして三代目がここに?<br /> <br /> 思いもかけない人の登場に、さらにおろおろするあたしには眼もくれず、三代目はこめかみを抑えている品のいい女性の隣にすっとスマートに座った。<br />「よ、久しぶり。直樹」<br /> その浅野さんの言葉で、あたしは初めて三代目の名前を知った。浅野直樹(あさのなおき)、三代目はこの大企業の若き専務だったらしい。しかもカメラマンの浅野さんと同じ、浅野という苗字の。…いったい、どういうこと?<br /><br />「それで、まさかこの人が妊娠したという訳じゃないですよね?」<br /> に、妊娠!? いやいやいや、凄い誤解だ、とんでもない誤解だ。<br /> 速攻で否定したいのに、あまりにも驚いたのと、この状況に呑まれてしまって口をぱくぱくすることしかできない。<br />「まさかって、どういう意味だよ? この娘(こ)じゃ、疑わしいってのか?」<br /> 浅野さんが、さらにとんでもないことを言う。あたしは思わずぎょっとして彼の顔<br />を見たけれど、驚愕と混乱状態で言葉が見つからない。<br />「電話の声は、かなり蓮っ葉だったというから…。この娘(こ)のイメージとは合わない。そうですよね、社長」<br /> 三代目の言葉に、社長と呼ばれた女性がこめかみを抑えたまま頷いた。<br />「え~、そうかぁ? コイツだって結構、いつもはアレなんだぜ。今日はたまたま、こんなダサいスーツ着てきてるけどさ」<br /> いつもはアレってなんだ、アレって。しかもダサいって酷い。確かにそうかもしれないけど、就活生なんだからしょうがないじゃないっ。…て、ツッコんでる場合じゃない。<br />「これでは、まるで就活生です」<br /> そう言った三代目に、あたしは思わず答えていた。<br />「はい、その通りです。あたし、就活生です」<br /> ち、と舌打ちする声が隣でした。<br />「一真っ! あなた、これから就職しようとしている未来あるお嬢さんを妊娠させたって言うの!?」<br /> 女性社長が、震える声でそう叫んだ。<br />「社長、どうか冷静に」<br />「で、でも専務…」<br /><br />「あのさぁ…」<br /> そんな二人のやりとりを見ていた浅野さんが、ぼそりと言った。<br />「親子で止めない?そうゆうの。母と息子が社長だの専務だのって、他人行儀過ぎて笑っちゃうんだけど」<br /> 浅野さんのその言葉で、目の前の女性と三代目が親子なんだと知った。え?てことは、浅野さんは?<br />「会社ですから、ここは」<br /> 三代目がぴしゃりと、浅野さんの言葉を封じ込める。<br />「へぇ、じゃあ俺も、社長とか専務って呼んだ方がいい?」<br /> 浅野さんが行儀悪く、足を組みながら三代目に言う。<br />「いえ。兄さんは社内の人間ではありませんから、母さん、直樹でかまいません」<br /> ぎょえっ! まさかの親子、兄弟!? それにしては、似てない。浅野さんの奇抜な格好を差し引いたとしても、三代目と浅野さんは全く違うタイプで似たところがない顔だった。<br /> でも。浅野さんと社長の鼻の形と唇だけは……そっくりだった。<br /></span></span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2016-02-28 (Sun)
  • Category : アイス
581

⑱オフィス街での再会

 学食でダンスサークルが集まる場所が、なんだかいつもと違う雰囲気だ。 トレイにB定食を乗せて近づいてみて、その違和感の正体がわかった。 いままで茶色や金色に近い髪色で、ウェーブだったり個性的に結い上げていた髪型が、黒のストレートヘアに変わっていたのだ。主に、3年生。「だってさ、この夏休み、インターンシップだったんだもん」 中でもとびきり個性的だった真湖ちゃんの、黒髪ストレートはもう笑うしかない気がし...  <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';">学食でダンスサークルが集まる場所が、なんだかいつもと違う雰囲気だ。<br /> トレイにB定食を乗せて近づいてみて、その違和感の正体がわかった。<br /> いままで茶色や金色に近い髪色で、ウェーブだったり個性的に結い上げていた髪型が、黒のストレートヘアに変わっていたのだ。主に、3年生。<br />「だってさ、この夏休み、インターンシップだったんだもん」<br /> 中でもとびきり個性的だった真湖ちゃんの、黒髪ストレートはもう笑うしかない気がした。<br />「ったく、笑ってればいいわよ。だけどね、あんたたちだって、もうすぐ同じ運命だよっ」<br /> その通りだ。そう納得して、知花ちゃんとあたしは顔を見合わせてため息をついた。<br /> まったく、日本が、日本の企業が口を揃えて言う「個性ある人材」とはどういう意味なんだろう。これから黒髪、紺のスーツの同じような就活生たちが街に溢れ、OB訪問や企業説明会に群がる。その光景をむしろ異様だと思うのは、あたしにまだ覚悟が足りないせいなんだろうか?<br /><br />「菜乃果。菜乃果はその髪色もウェーブも、もともとでしょ?黒に染めて、ストレートパーマかけるの?」<br /> 知花ちゃんにそう訊かれて、あたしはまたため息をついた。<br /> そう。もともと色素が薄いあたしは、髪の毛も眼の色も栗色に近い。ゆるっとしたウェーブも天然だ。でもまさか、中学・高校時代のように親に「この髪色もウェーブももともとです。染めてもパーマをかけてもいません」なんて証明書を書いてもらう訳にはいかない。ましてや入社試験や面接時に、いちいち説明するなんてできない。就活生として常識やマナーがないと誤解され、不利になるだけだろう。<br />「染めて、ストレートにするしかない、かな?」<br />「なんか、理不尽」<br /> うん、知花ちゃん。あたしもそう思うよ、でもどうしようもないじゃない。<br />「眼の色は?黒のカラコン入れる?」<br />「えぇ~、そこまでしなきゃダメかな?」<br /> コンタクトなんて入れたことがない、考えただけで痛そうだ。視力は左0.9と右0.7で、大教室でも白板の文字が見えなくて困ったことはない。でもお洒落もかねて、ちょこっと度が入った眼鏡をつくった。結構気に入っているし、有さんも似合うと言ってくれた。<br />「眼鏡で、誤魔化せないかな?」<br />「う~ん、どうだろ?」<br /> カバンから眼鏡を出してかけてみせたあたしの顔を、まじまじと見ながら知花ちゃんが首を傾げる。<br />「眼の色をごまかす以前に、そのフレーム、アウトでしょ」<br /> 横から真湖ちゃんが、自分の黒髪を不満そうに弄りながら割入って来た。<br />「あ」<br /> そうだった。お洒落のつもりだったから、フレームの色とデザインがノーマルとは程遠い。眼鏡だとしても、作り直さなきゃダメかぁ…さらにため息が出た。<br /> 真湖ちゃんが、まだ黒髪を弄りながらぶつくさ言い続けている。<br />「やっぱ、本格的な就活はじまる前に、も一回茶髪デジタルパーマに戻そうかなぁ。これ、ヤダ、超ヤダ…」<br /> いろいろあるよね、就活生&大学3年生。<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 人気のIT系の企業に勤めている先輩のところへ、OB訪問に行ってみることにした。何がしたいかとか、どんな職業に就きたいかとウジウジ迷っている時間はもうない。とにかく、行動あるのみ。<br /> 気合を入れるために髪も黒髪に染めて、紺色のスーツを買った。<br /> で、結局見抜かれた。IT企業に、あまり関心を持っていないこと。先輩にすらに見抜かれるのだから、面接官にはバレバレだろう。何やってんだ、あたし。<br /><br /> すっかり気落ちして歩いていると、数メートル先になんだか見覚えがある人が…。<br /> 銀色の髪、その前髪の先っちょだけが緑色…そんな奇抜な人がそうそういるわけがない。膝の抜けたジーンズに先のとんがったブーツ、黒の革ジャン、両耳に複数のピアス。あのカメラマンさんだ、確か浅野さんって言ったっけ?<br /><br />「こんにちは」<br /> 近寄ってみて、あのカメラマンさんだと確信したあたしはそう声を掛けた。<br />「うわっ」<br /> 目の前の大きなビルを見あげて何か考え事をしていた風の浅野さんが、驚いた様子でそう反応した。<br />「ご、ごめんなさい。驚かしちゃいました?」<br /> 浅野さんは一瞬きょとんとした顔になって、あたしをまじまじと見る。<br />「えっと…キミ、どこかで…」<br /> 覚えてもらえてなかったか、印象薄いんだな、あたし。<br />「あの…野島教授のパーティーで…」<br /> 浅野さんは首を傾げて、まだしばらくあたしを見ていたけど、突然「あ!」と叫んだ。<br />「キミ、女子大生!そうだ、氷川さんの…」<br /> よかった、やっと思い出してくれたみたいだ。<br /> あたしは、こくこくと頷いてみせた。<br /><br />「え、え?でも、どうしたの? その就活生みたいな髪。そのせいで全っ然わかんなかったよ」<br />「いや、就活生みたいっていうか。まんま、就活生ですから」<br />「マジ?」<br /> マジです。でも、そうか。この髪…うん、だいぶ印象が違うかもしれない。<br />「染めたんです、仕方なく」<br /> あたしは自分の黒くなった髪を弄びながら、言った。<br />「染めた?あの栗色の髪は?あっちが染めてたんじゃないの?」<br />「違います、あっちの色が本当の色なんです。あたし、色素が薄いから」<br /> そう言って、あたしは自分の色素の薄い眼を指さした。<br />「あ、なるほど。眼もかなり茶色だね」<br />「だけどさ、なんで?あの色の方が可愛かったのに」<br />「いや、だから就活生ですから。ほら、紺のスーツ」<br /> あたしはちょっと開き直って、自分の没個性な恰好を見せびらかすように両手を広げた。<br /> それを見て、浅野さんは顔をしかめた。<br />「ちぇ、くだらないな。なんで、そんなカッコしてんだよ。もっとさ、自分らしく社会の門を叩けよ」<br />「そうしたいのは山々ですけど、それじゃ門を開けてもらえないでしょ?」<br />「やってみなきゃ、わかんないだろ?」<br />「いや、わかりますって」<br /> ふ~ん、と浅野さんはつまらなさそうにあたしをもう一度上から下まで眺めると、あまり興味なさそうに訊ねた。<br />「で、女子大生。こんなとこで何してんの?」<br />「あ、OB訪問の帰りです。インターンシップとかエントリーさせてもらえないかなぁって思ってたんですけど、それ以前に全然手応えなくて…」<br /> 情けない気持ちで、でも正直にあたしは言った。なんでだか、この人には本音で話してしまう。<br /><br />「へぇ」<br /> そんな話には明らかに興味なさそうに答えた浅野さんが、突然思いついたように指をパチンと鳴らした。<br />「そうだ、女子大生。いいこと思いついた。1時間くらい時間ある?」<br />「え、まあ…後はもう帰るだけですから」<br />「よしっ!」<br /> そう嬉しそうに浅野さんは言うと、いきなりあたしの腕を取った。<br />「え、え?」<br />「いいから、いいから」<br /> いや、よくないです。どこ行くんですか?何しようっていうんですか?<br /> 慌てるあたしの構わずに、浅野さんは腕を引っ張ってずんずん歩き、目の前の大きなビルに入って行こうとする。<br /> ちょ、ちょっと。ここ、あのアパレルの大企業じゃないですかっ。ホント、何する気?<br /></span></span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2016-02-21 (Sun)
  • Category : アイス
580

⑰100万回の

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  • Date : 2016-02-13 (Sat)
  • Category : アイス
579

⑯忘れられないこと、とか

「ナノカ、エレベーター チョウシ オカシイヨ」 エレベーターから降りてきたヤーウェンが、早口でそう言って急ぎ足で行ってしまった。 調子がおかしい? どういうことだろうと思いながらも、他の人達と一緒にあたしはそのエレベーターに入ってしまった。 古い、いや歴史ある大学校舎に設置されているエレベーターだけあって旧式、いや趣あるエレベーター内には、車椅子の女性と付き添いの女性、背の高い痩せ形の紳士、小太りで... <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><br />「ナノカ、エレベーター チョウシ オカシイヨ」<br /> エレベーターから降りてきたヤーウェンが、早口でそう言って急ぎ足で行ってしまった。<br /> 調子がおかしい? どういうことだろうと思いながらも、他の人達と一緒にあたしはそのエレベーターに入ってしまった。<br /> 古い、いや歴史ある大学校舎に設置されているエレベーターだけあって旧式、いや趣あるエレベーター内には、車椅子の女性と付き添いの女性、背の高い痩せ形の紳士、小太りでスーツ姿の温厚そうなおじさま、学生らしきアジア系の男子、あたしの6人が乗っていた。<br /> そして3階から4階へ向かう途中で、ヤーウェンが注意してくれた事態が現実のものとなった。<br /> がごん。<br /> がごん?と思う間もなく、エレベーターは不意に止まった。<br />「オウ、コショウカナ?」<br /> 背の高い紳士がそう言って、非常ボタンを押した。<br /> 割とすぐにメンテナンスの人が応答してくれ、エレベーター内にいたみんなが取りあえずほっとする。<br /> でも大丈夫かな、このエレベーターかなり古いし、急に落ちたりしないよね?そんな不安に囚われていると、背の高い紳士がその場の空気を和ませようとしたのか、さり気なくジョークを言ってくれた。それに反応して、軽い笑いが起こる。<br /> よかった、緊張感が少し和らいだ。<br /> でも凄いな、こういう非常事態に周りの人のことを考えられるなんて。本当にこういうときこそ、欧米人の余裕とユーモアある気遣いを感じる。<br /><br /> やがてゴトンガゴンという音とともに扉を開ける音がして、天井付近からメンテナンス係の人が顔を覗かせた。<br />「クルマイスノ ジョセイガイルノデ マズ スペースヲ カクホシタイ」<br /> 係の人はそう言って、一番小柄で身軽そうなあたしから引っ張り上げてくれることになった。次にアジア系の男子、背の高い紳士、おじさま、付き添いの女性が次々救出される。<br /> 最後に車椅子の女性を4人がかりで、エレベーターから注意深く引き上げた。<br /> 驚いたのは、最後のその女性が救出されるまで、誰一人としてその場を去らなかったことだ。そして最後の一人が無事救出されると、どこからともなく拍手が起こった。温厚そうなおじさまが、メンテナンス係の人の肩を叩いて労う。それにウインクと片手で合図を返す係の人。誰もがとても素敵な笑顔で、顔を見合わせた。<br /><br /> あたしは、その光景になんだか感動した。<br /> 井上先生が言っていた「大人の国、一人一人を尊重し大切にする国」という言葉を不意に思い出した。英国のサービス対応への不満や、銀行などでの愛想のなさ、いまも残る階級意識、あまりおいしくないイギリス料理など、来る前に聞き齧っていたマイナスな側面は確かにあるのだろうと思うけど。<br /> 個人として、一人の人間として対峙すると、国際社会では日本人はまだまだ幼いし甘えているんだなと感じてしまう。勉強だけでなく、初めての海外というだけでなく、このたった3週間の留学はこんな風にとても多くのことをあたしに教えてくれた。眼から鱗がボロボロ落ちて、価値観や常識が国や個人によって違うこと、相手を尊重するということはどういうことか、話し合うことの大切さ、自分の意見を持ち伝えることの重要さ、そして国際社会での自立と強さというものを、ほんの少しだけど垣間見られた気がした。<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 食堂のキッチン方面から、またカレーの匂いがする。セネラだ。<br /> 一度カレーを味見させてくれてから、セネラとあたしは仲良くなった。<br /> セネラは学部留学生で、専攻はなんと医学だった。<br />「スリランカト スリランカジンノタメニ ハタラキタイ」<br /> そうはにかみながら言ったセネラ以上に、あたしは自分の顔が赤くなるのを感じた。<br />「セネラ アタシハ マダ ジブンガ ナニヲシタイカ ワカラナイノ」<br /> 日本に帰れば、これから就職活動が待っていること。でもどんな職業に就きたいか、まったくイメージが湧かないこと。自国や日本人のために貢献したいなんて考えたこともなくて、そんな自分が恥ずかしいこと…。<br /> 何故だか、あたしはセネラにバカがつくほど正直に自分の気持ちを話した、話せた。セネラは真剣なまなざしで、何度も頷きながら訊いてくれた。そして言ってくれた。<br />「ダイジョウブ ナノカ二モ キット ミツカル ナノカニシカ デキナイコト」<br /> 見つかるだろうか? はなはだ心もとなく不安だったけれど、見つけたいと願った。<br /> 勇気づけてくれたセネラに、あたしは心を込めてお礼を言った。そしたらセネラが言ったのだ。<br /><br />「がばて、すてきなひと」<br /> え? いま、なんて?<br />「セネラ にほんご…」<br /> 同じクラスで学ぶ日系2世が、教えてくれたのだそうだ。<br /> びっくりして、それからあたしは笑ってしまった。セネラがちょっと変な顔をしたから、慌てて笑うのを止めてこう言ったけれど。<br />「セネラ ニホンゴ ジョウズ」<br /> ホッとした表情をしたセネラは、また照れたような笑顔を見せた。その顔を見ながら思った。<br /> セネラ、その言葉あんまり頻繁に使っちゃダメだよ。その日系2世もどういうつもりで、こんなにシャイなセネラにそんな日本語を教えたんだろう。<br /> とにもかくにも、セネラの日本語とはにかんだ笑顔は可愛らしく、味見させてくれたカレーは意外にも辛いというよりマイルドなおいしさだった。<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> それからあたしたちは、それぞれ修了証書を手に帰国することとなった。<br /> たった3週間、でもあたしにとっては密度の濃い体験と出会いと時間と勉強。英国という国が、来る前以上に好きになった。そしていろんな国の人々とコミュニケーションすることが、こんなにも楽しいなんて。<br />「菜乃果、あたし、絶対またイギリスに来る」<br /> 帰りの飛行機の中で、知花ちゃんがそう言った。<br /> うん、そうだね、また来たいね。<br />「ああ、でもやっと理史に会えるぅ~」<br /> すれ違いで留学から帰国した近藤君は、きっともの凄く成長していると思う。英語力も人間性も。彼なら間違いない気がした、だってもともとしっかり者だし、1年もハードな勉強と異国の生活を体験したんだもの。<br /><br /> 有さん、あたしも少しは成長できたのかな。変われたのかな。<br /> 会いたい…。<br /> とても素敵な大人の彼への恋慕は変わらないままで、むしろ一緒にいればいるほど強くなるばかりで。<br /> それぞれの思いを胸に、あたしたちは母国を目指した。</span></span><br /><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br />
  • Date : 2016-02-07 (Sun)
  • Category : アイス
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