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Author:mikazuki0602
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【R18限定記事について】
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512

⑰有さんの仔猫

「パーティー?」 ブランチを用意する有さんを手伝って、生野菜を洗っていたあたしは思うわずそう訊き返した。「ああ、野島教授の出版記念パーティーだ」 そう言われて、あたしは1度だけ会ったことがある画廊の実質的オーナー、自信とできる女性のオーラをビンビンに放っていたその人を思い浮かべた。「一緒に行こう」「えええ~、なんで?」「なんだ、俺とパーティーに出席するのは嫌か?」「そうじゃなくて」「ん?」  だっ... <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><br />「パーティー?」<br /> ブランチを用意する有さんを手伝って、生野菜を洗っていたあたしは思うわずそう訊き返した。<br />「ああ、野島教授の出版記念パーティーだ」<br /> そう言われて、あたしは1度だけ会ったことがある画廊の実質的オーナー、自信とできる女性のオーラをビンビンに放っていたその人を思い浮かべた。<br />「一緒に行こう」<br />「えええ~、なんで?」<br />「なんだ、俺とパーティーに出席するのは嫌か?」<br />「そうじゃなくて」<br />「ん?」<br /> <br /> だって、きっとClassの高い大人たちや仕事ができる男女、自信とそれを裏づける実績のある人ばかりが集まるんでしょう?<br /> そんな中に、まだ女子大生でハタチになったばかりの子供が混じるなんて、どう考えても場違いだ。<br />「知らない人ばかりでしょ?」<br /> 不安げにそう言ったあたしの頬を、有さんが愛おしそうに撫でる。<br />「大丈夫だ、パーティーを仕切るのは祥子だ。祥子のことは、よく知っているだろう?それになにより、俺がいるだろ」<br /> そう言って、有さんはあたしの背中から包み込むように抱きしめると、こめかみにそっとキスを落とした。<br />「でも…」<br /> ちょっとムズかるように身を捩ったあたしを、有さんがさらに強い力で抱きしめる。<br />「菜乃果、そんな可愛いことを言って、俺を困らせないでくれ」<br /> 困っているという言葉とは裏腹に、むしろ嬉しそうに有さんは続けた。<br />「それとも、菜乃果は俺さえいればいいのか?華やかなパーティーなんか、興味がないか?」<br /> 狡い、狡いよ。<br /> 有さんが欲している答えはわかりきっている。そんな甘い、甘すぎる恋人トークを、照れも戸惑いもなくできるはずないじゃない。<br /> だけど有さんの期待に反した答えを言う勇気もなくて、あたしは黙りこくった。<br /> それを、有さんは肯定と受け取ったんだろう。<br />「菜乃。でも、俺はこの可愛い仔猫を、俺のものだと世間に見せてみたい」<br /> なるほど、パーティーに連れて行きたい理由はそれだね?やっぱり周りを固めようとしている。でも、そうしたら有さんのファンは確実に減ると思うけど?それとも逆に、あの娘(こ)程度なら自分の方がって、思われちゃうのかな。<br /><br />「そうだ、瑞希もきっと来る」<br /> 瑞希さん…。あの儚げで優し気な、サナトリウムの妖精のような姿を思い出して、あたしはとても懐かしくなった。<br /> どうしているだろう、元気だろうか?<br />「あなたは、何でも持っている」と言ったとても切ない声が、昨日のことのように蘇る。<br /> あのとき、あたしは彼女となら、友達になれるかもしれないと思ったのだ。ううん、友達になりたいと心から思った。<br /><br />「…瑞希さん、来る?」<br />「ああ、そりゃあ母親の出版記念パーティーだからな」<br /> ちょっと眼に期待の光が灯ったあたしを、有さんは満足そうに見つめ返した。<br /> 華やかなパーティーでもなく、そこに集うおそらくハイクラスな人々でも、覗いてみたい素敵な世界でもなく、瑞希さんに興味を示したあたしを有さんはとても嬉しそうに包み込んだ。<br />「本当は、どこへも出したくない。誰にも見せたくない。でもその半面、菜乃果は俺のものだと叫びたい気分なんだ」<br /> 今日の有さんは、ロマンティストな拘束魔のようだ。<br /> <br /> それでも迷いながら、気後れするあたしの言葉を、有さんは楽しそうに無視していく。<br />「でも…そうだ。パーティーに似合うようなフォーマルドレスなんて持ってないし」<br />「菜乃果、卵はオムレツでいいか?」<br />「参加する人は、みんな大人だろうし…」<br />「サラダのドレッシングは和風、フレンチ、シンプルにオリーブオイルとレモン、どれがいい?」<br />「…そ、そんな面識もない大人と何話していいかわからないし」<br />「サンドイッチは、ベーグルを使うか?それともイギリスパンにするか?」<br />「そもそも、出版記念パーティーってどんな雰囲気なのか、全然わかんないし…」<br />「スープはこの間実家で、中元に届いたっていうホテルのスープ缶をたくさんもらってきたからそれにしよう。クラムチャウダーとオニオングラタンスープ、どっちがいい?」<br />「…ゆ、有さん」<br /> もうなんだか、いろいろ降参で半泣きになってしまう。<br /> そんな情けないあたしを、悪魔のように優しい笑顔で見つめて有さんは言った。<br />「いいね、菜乃果はやっぱり。広いパーティー会場で、突き放して迷子にしてみたくなるよ」<br />「い、意地悪っ!」<br /> はは、と心底嬉しそうに有さんは笑うと、こう言った。<br />「菜乃、俺がいないとダメだと認めろ。片時も傍を離れたくないと、言え」<br />「し、知らない」<br /> それでも有さんは許してくれず、あたしは渋々、有さんの言った言葉を繰り返した。<br />「有さんがいないとダメです。片時も離れたくないです」<br />「ああ、菜乃果。本当に可愛い」<br /> 有さんはそう言って、あたしをその胸にしばらく抱きすくめたままだった。<br /> スープが煮え立つ音に、やっと解放してくれたけれど。こんなに溺愛モードの有さんは久しぶりで、怖いくらいだった。<br /><br />「そうだ、菜乃果。パーティードレスを買いに行こう」<br />「え~、この間、買ってくれたワンピースじゃダメかな?」<br />「新しいバッグと靴もいるな」<br />「そんな散在しなくていいよ、あたしなんかのために」<br /> 有さんは、スープをボウルに注ぎながら言った。<br />「なんか、じゃない。菜乃果だから、だ」<br />「でも…」<br /> いつも与えてもらうだけで、あたしはその半分も返せない。<br />「俺の仔猫を、俺が好きなように着飾って何が悪い?」<br /> …う。<br /> それは、所有物ってことですね?<br /><br /> それはともかくオニオングラタンスープもベーグルのサンドイッチも、オリーブオイルとレモンの野菜サラダも、オムレツもとってもおいしかった。<br /> そして大満足のブランチの後、有さんは本当に表参道へ買い物にあたしを連れだした。<br /> 入ったことのない高級そうなブティクに緊張していると、有さんが店員さんと選んだワンピースを何着か持ってきた。<br />「こちらは、お嬢様の可愛らしさをとてもよく引き立てると思いますよ」<br /> 爪を綺麗に塗った女性スタッフがそう言って、薄桜色のオーガンジーのワンピースをあたしに当てて見せる。<br />「そうだな、良く似合う」<br />「こちらは可愛らしい中にも大人っぽさがあって、こちらもおススメです」<br /> そう言って次に当てられたのは、ハイウエストの下が黒の光沢あるスカート、上の部分がシャンパンホワイトで、その切り替え部分に大ぶりのリボンがついた大人可愛いワンピース。<br />「どうだ、菜乃果?」<br /> どうって言われても、デザインよりも値札の方が気になってしまう。<br />「お嬢様の肌の白さも引き立ちますし」<br />「確かに」<br /> 有さんが、店員さんの前だというのに、あたしの二の腕につぅと指を這わせる。その感触に、思わずぶるりと反応してしまう。<br />「もっと大人っぽく冒険なさるなら、こちらのツーピースがいかがでしょう?」<br /> 今度は男性スタッフが、慇懃にシフォンのマーメイドタイプのツーピースを持ってくる。<br />「このブルーはあまりに合わないな、もう少し淡い色のある?」<br /> 有さんがそう言って、男性スタッフは慌てて別の洋服を探しに行く。<br /> あたしは有さんのシャツのウエスト辺りを引っ張りながら、小声で「有さん、有さん」と名前を呼んだ。<br />「ん?どうした、菜乃果」<br />「高いよ」<br /> あたしはさらに小声でそう告げるけど、有さんは笑っただけで取り合わない。<br />「こちらはどうでしょう?」<br /> 男性スタッフが持ってきたのは、淡いブルーグレーのツーピース。ウエストにリボンのバックルのベルトがついている。<br /> こんな大人っぽい服なんて、着たことがない。着こなす自信も皆無だ。<br />「う~ん」<br /> 有さんはイマイチだったらしく、男性スタッフと選びに行ってしまった。選ぶ間に、女性スタッフさんに靴とバッグを選んでくれるように伝えて。<br /><br /> 結局、ハイウエストでリボン切り替えの大人可愛いワンピースと、ラベンダー色の大人上品なツーピースの2着と、ビジューがついたサンダルと同じタイプのハンドバッグ、白と黒のコンビの靴と、複雑な織り模様のキラキラしたクラッチバッグを有さんは買ってしまった。<br /> お会計はカードで支払っていて、いったい総額幾らになるのか想像するのも怖くて、青い顔で口をぽかんと開けて立ち尽くすあたしに、女性スタッフさんがにこやかに話しかけた。<br />「大事にされてらっしゃいますね。お似合いになるものも良くご存知だし、センスもよろしくて本当に素敵なパートナー様ですね」<br /> もちろんお世辞だとは思うけど、案外本音のようなその言葉にいっそう身の置き所がなくなって、あたしは借りた仔猫みたいに小さくなって俯(うつむ)いた。</span></span><br /><br /><br /><span style="color:#00CC99">実はここまで甘々なのは苦手なのですが、<br />頑張って書いてみました。<br />慣れないので、ちょっと不安…(;´Д`)</span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br />
  • Date : 2015-06-28 (Sun)
  • Category : アイス
511

⑯ファイアフライ

今週末も、なんとか更新できましたぁ。ほっ(*´ω`*) “お好み焼き”という庶民的な響きから想像していたのとは違う、洒落たビルの地下へ惺はあたしたちを誘(いざな)った。まるでいつか有さんが連れて行ってくれたダイニングバーの様だなと思いながら、薄暗い通路を進むと目的の店はあった。 “ファイアフライ(蛍)”という店名にふさわしく、小さな灯りがぽわんと入り口を照らしていて、大人の隠れ家のような雰囲気に知花ちゃんと... <span style="color:#00CC99">今週末も、なんとか更新できましたぁ。<br />ほっ(*´ω`*)<br /></span><br /><br /><span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"> “お好み焼き”という庶民的な響きから想像していたのとは違う、洒落たビルの地下へ惺はあたしたちを誘(いざな)った。まるでいつか有さんが連れて行ってくれたダイニングバーの様だなと思いながら、薄暗い通路を進むと目的の店はあった。<br /> “ファイアフライ(蛍)”という店名にふさわしく、小さな灯りがぽわんと入り口を照らしていて、大人の隠れ家のような雰囲気に知花ちゃんとあたしは顔を見合わせる。<br />「なんだかバーみたい」<br /> 思わずそう言ったあたしに、惺が訊く。<br />「菜っ葉、バーなんて入ったことあるの?」<br />「うん、有さんが…」<br />「ああ、なるほどね」<br /> 納得したように頷く惺に、緊張した面持ちの知花ちゃんが言った。<br />「なんだか、高そうなお店だね」<br />「大丈夫。お酒も出すから洒落た店構えだけど、お好み焼き自体はそんなに高くないよ」<br />「氷川君、来たことあるの?」<br /> ちょっとジェラったのか、探るようにそう訊ねた早乙女君に、惺がさらっとした笑顔を見せて言った。<br />「うん、大学の友達とね。それより取りあえず、入ろうか」<br /> 惺は気後れした様子もなく、ひっそりと灯りに照らされた重厚な黒いドアを押した。<br /><br />「いらっしゃいませ」<br /> 黒のTシャツにパンツ、長い胸当て付きエプロンまで黒一色のイケメンさんが迎えてくれた。<br /> 土曜の夜ということで店内は混んでいて、お洒落な恋人たちがグラスを傾けている。<br />「4人ですけど、空いてますか?」<br />「奥のテーブルへどうぞ」<br /> イケメンさんにそう促されて、賑やかで都会的な雰囲気の中を恐る恐る進む。ちょっと大学生には敷居が高い感がビシバシするのに、惺は気にする様子もない。<br /> こんな店に大学の友達と来ているのか、惺は。<br /> なんだか惺が、急に大人びて見えた。<br /><br /> 取りあえず、席に着いてメニューを開く。<br /> 確かにお好み焼き自体はそれほど高くはないけど、この雰囲気の中、お好み焼きとソフトドリンクだけというオーダーは何となく勇気がいる。<br /> でも5月生まれのあたしと7月生まれの惺は二十歳を迎えたけど、9月生まれ(因みにおとめ座、どんだけ乙女なんだっ!)の早乙女君と、11月生まれの知花ちゃんはまだ未成年だからお酒は飲めない。<br />「お好み焼きって、鉄板で焼くんじゃないの?」<br /> 鉄板の見当たらないテーブルを心もとなげに見て、知花ちゃんがそっと惺に訊く。<br />「うん。広島風は薄い生地と卵で、野菜や肉のほかに焼きそばを挟むから、素人には難しいんだ。ここはお店の人がちゃんと焼いて持ってきてくれるんだ」<br />「ふうん」<br /> 知花ちゃんがきょろきょろと周りを見回しながら、まだ不安そうな顔をしている。<br />「みんな、飲みもの決まった?」<br /> 惺と早乙女君はやっぱりコーラ、知花ちゃんとあたしはパイナップルジュースにした。お子ちゃま感ありありだけど、背伸びしたってしょうがない。<br />「お好み焼きは海鮮と豚でいい?あと、ほうれん草のサラダが旨いよ。ほかは何がいい?」<br />「それだけでいいよ」<br /> 知花ちゃんが、遠慮がちにそう言う。<br />「菜っ葉、ほかになんか食べたいもの選べ」<br /> 惺に言われてメニューを見るけど、優柔不断な性格だから迷ってしまい、早乙女君に頼る。<br />「早乙女君は、何がいい?」<br />「う~ん、ひ、氷川君、何がいい?」<br />「なんだよ、結局、俺に戻るのかよ。ん~、じゃあ、長倉さん。豆腐のグラタンと蟹シューマイ、どっちがいい?」<br />「え、えっとぉ。りょ、両方?」<br /> やっぱり知花ちゃんは知花ちゃんだ、結局は正直で度胸も一番いいのだ。<br /> 惺はぷ、と笑うと、イケメン店員さんを呼んでオーダーしてくれた。<br /><br /> 先に来たドリンクで、取りあえず乾杯する。<br />「お疲れさまぁ~」<br />「はぁ、でもさすが佳絵先輩たち。あの強豪揃いの中、3位入賞は凄いよ」<br /> まだ興奮冷めやらないまま、知花ちゃんとあたしはさっきまでどっぷり浸かっていたダンスバトルを振り返った。<br />「メンズユニットのパフォーマンスも圧巻だったね」<br /> 早乙女君が、ぽっと顔を赤らめながら思い出したように言う。<br />「あれ、乙女ったら案外、浮気者なんだね」<br />「ち、違うよ。ただ、ぼ、僕は」<br /> 知花ちゃんにからかわれて、しどろもどろになっている早乙女君が可愛い。<br /> そうしているうちに、ほうれん草サラダと広島風お好み焼きの海鮮と豚が運ばれてきた。<br />「うわ、おいしそう。熱々だね」<br /> みんなでシェアしながら、ふうふうお好み焼きを頬張る。<br />「うん、おいしい。気に入った!」<br />「そりゃ、よかった」<br /> 満足そうにパクつく知花ちゃんに、惺が楽しそうに言う。<br /><br />「でも、粉ものって好き嫌いがあるよね、菜乃果?」<br />「うん。たこ焼きとかお好み焼きとか、ウチは子供の頃からあんまり食べなかったな。知花ちゃん家は?」<br />「うちも、あんまし。惺君や乙女ん家は?」<br />「ウチはさ、実はお好み焼きだけは親父が焼くんだ」<br /> 意外なことを言う惺に、知花ちゃんが目を丸くして訊く。<br />「そうなの?」<br />「うん。とくに広島風のお好み焼きは家族みんな大好きでさ、親父がここぞとばかりに張り切って焼くんだ。そのほかにもアワビとか伊勢海老とかサーロインとか、割とリッチな食材揃えるから、鉄板焼きの日は軽いイベントだったんだ」<br />「へぇ…」<br /> 意外だった。食通の有さんは、いろんなお店に連れて行ってくれて、そのどれもがおいしかったけれどお好み焼きは連れて行ってもらったことがない。それに、たこ焼きとかお好み焼きを好きだと訊いたこともない。<br /> 不思議そうな顔をしていたんだと思う、惺が小声で言った。<br />「あ、菜っ葉。兄貴は粉もの、そうでもないんだ」<br /> やっぱり、そうだと思った。<br /> でも…父親も母親も弟も好きなお好み焼きと鉄板焼き。有さんは、どんな思いで食卓を囲んでいたんだろう。<br /> そんなこと、別に気にすることないのかもしれない。<br /> ウチだって、父親とあたしは貝類のお刺身が大好きだけど、母は苦手だし、兄はあったら食べるくらい。母と兄は、マグロとカツオの土佐づくりが大好きだけど、父とあたしはイカ&タコ派だ。<br /> そう、親子だって家族だって、好みは違って当たり前…。<br />「菜乃果、なにぼぅっとしてんの?ほら、お豆腐のグラタン来たよ」<br /> ちょっと考え込んでしまったあたしに、知花ちゃんがそう言う。<br />「取り分けてあげるね」<br /> 早乙女君がここでも一番高い女子力を発揮して、新しいお皿にそれぞれの分を取り分けてくれた。<br /><br />「ところで、知花ちゃん。近藤君から連絡ある?」<br /> 9月からイギリスの大学に1年間留学する近藤君は、現地の語学学校へ通ってネイティブの英語に慣れるためと、諸々の準備があって、夏休みに入るとすぐに英国へ旅立ったのだ。<br />「うん、頑張ってるみたい。いまはスカイプがあるから、割と頻繁に連絡取り合ってる」<br />「そっか。それなら少しは淋しくないね」<br />「へ~、彼氏、1年留学するんだ。思い切ったね。なんで長倉さんも一緒に行かなかったの?」<br /> 惺が、蟹シューマイを口に放り込みながら言った。<br /> 近藤君が、一緒に行くとお互いのためにならないからと言った話を聞いて、惺が感心したように言う。<br />「へえ、大人じゃん、彼氏」<br />「そうだよ、カッコいいでしょっ?」<br /> そのことでケンカしたこともあったことを忘れたように、知花ちゃんが胸を張る。<br /><br /> うん、大人だ、近藤君は。それをカッコいいと言える、知花ちゃんも。<br /> じゃ、3週間の留学すらダメと言った有さんは?<br /> 一番年上なのに、大人げないのかな?<br />「まぁた、なに考え込んでんの?今日の菜っ葉、元気ないな」<br /> 惺に言われて、慌てて笑顔をつくる。<br />「そ、そんなことないよ」<br />「そ?」<br /> あたしの顔を覗き込んだ惺が、自分のスマホのバイヴに気づいて着信を確認する。<br />「あ」<br />「どした?」<br />「うん、ちょっと外出てくる」<br />「う、うん」<br /> やがて、すぐに戻って来た惺が言う。<br />「菜っ葉、兄貴、迎えに来るって」<br />「えええ~~」<br /> それを訊いた知花ちゃんが、盛大に驚く。<br />「いいなぁ、相変わらずラブラブじゃん」<br /> 本当に羨ましそうに言う知花ちゃんは、有さんの拘束癖を知らないのだ。<br />「い、いや。ラブラブっていうか…」<br /> 監視? …みたいな? おまけにIQ140超えの弟は、生きたGPSですか?<br />「ついでに、ここの勘定も払ってくれるってさ」<br />「まじ?」<br /> 眼を真ん丸にする知花ちゃんと早乙女君。<br />「さすが、氷川先生だね。高給取り?」<br /> 早乙女君ににこやかにそう言われて、あたしは曖昧に微笑んだ。<br /> まあ、低収入でないことは確かだ。<br />「いいなぁ、大人の彼氏だと、何かと」<br /> い、いや、知花ちゃん。考え方は近藤君の方が、大人だと思うよ。<br /><br /> やがて本当に有さんがお店にやって来て、4人分のお勘定を払ってくれた。<br />「ご馳走さまでしたっ!」<br /> 元気にお礼を言う知花ちゃんと、控え目にお辞儀する早乙女君。<br /> 惺は、何故かあたしの顔を見てニヤニヤしている。<br /> そんな惺に、有さんは言った。<br />「じゃあ、菜乃果は連れて帰るから。惺たちは彼女をちゃんと送り届けるんだぞ」<br />「了解!」<br />「帰るぞ、菜乃果」<br /> そう言ってあたしの肩を抱いた有さんの眼の中に、ファイアフライのように小さな光が妖しく灯っていたのは気のせいじゃないと思った。<br /><br /></span></span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2015-06-27 (Sat)
  • Category : アイス
510

転んでも…

どうも。皆様、こんにちは(*´ω`*)お元気でしょうか?すっかり週末更新小説書きと成り下がっているmikazukiです。週末だけの更新でも、結構余裕がなくブロ友の皆様のご訪問も短時間滞在になってしまって、申し訳ないなぁと思っておりますデス。さてさて、小説アップしはじめるとキャパが少ない故に、そればっかしになってしまい、「maoちゃんは元気?」「姿が見えなくてさびしいよぉ」というメッセージがあったりなかったり。。。↑... どうも。<br />皆様、こんにちは(*´ω`*)<br />お元気でしょうか?<br /><br />すっかり週末更新小説書きと成り下がっている<br />mikazukiです。<br /><br />週末だけの更新でも、結構余裕がなく<br />ブロ友の皆様のご訪問も短時間滞在になってしまって、<br />申し訳ないなぁと思っておりますデス。<br /><br />さてさて、小説アップしはじめると<br />キャパが少ない故に、そればっかしになってしまい、<br />「maoちゃんは元気?」「姿が見えなくてさびしいよぉ」<br />というメッセージがあったりなかったり。。。<br />↑<br />どっちだよ?<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「まぁね。<br />アンタのくだらないエロ小説より、<br />美しっぽめちゃカワのあたしのファンが多いのは<br />しかたないことなのょ。おーっほっほっほ( ̄▽ ̄)」<br /><br />にゃんこのくせに、高笑いが板についてるmaoちゃんのために<br />最近購入した『にゃんこグッズ』をご紹介したいと思います(´▽`*)<br /><br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/201506230952352f6.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-75.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/201506230952352f6.jpg" alt="エコつめ③" border="0" width="178" height="214" /></a><br /><br />↑<br />コレです(*´ω`)<br />え?<br />なんだかわかんない?<br /><br />えっとぉ、これは『にゃんこの爪とぎ兼くつろぎベッド』なんです。<br />耳がついてるとこも、かわゆすでしょ?<br /><br />『段ボール製のように爪とぎ後のゴミが出ない!<br />まぁるくなってくつろぐ姿もかわいい優れもの!!』<br />的なセールス文句にうっかりその気になって買っちまいました。。。<br />(自分も広○業界に足突っ込んでるくせにこの体たらくデス。あひょ(●´ω`●))<br /><br /><br />ほらほらほら~♪<br />maoちゃ~ん、使ってごらんよぉ♡<br />思う存分、爪といで、まぁるくなって眠る激カワな姿を<br />早く見せてぇ~♡♡<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ふんっ。バッカじゃないの?」<br />(↑終わっちゃいましたが、『ドSデカ』風)<br /><br /><br />1日経ち、2日経ち、1週間過ぎてもmaoちゃんが<br />ここで爪をといだり、可愛くねんねする姿は一度も見られません(ノД`)・゜・。<br /><br />あ、あたしって学習しないオンナね。<br />気まぐれにゃんこは、こうやって飼い主の期待と散財を<br />鼻で笑うものだったんだゎ(;´Д`)<br /><br />ねぇ? <br />○ギちゃんの飼い主さん、ラ○ちゃんの飼い主さん他たぶん大勢。<br /><br />でもっ!<br />あたしは転んでもただで起きないオンナでもあるんですっ!"(-""-)"<br /><br />maoちゃんがいつも乗って、たまに短縮ダイヤルで電話しようとしたり<br />(恐るべし、どこ電話かけるつもりだょっ)、<br />この間ついにゲロまで吐いた<br />電話&スキャナー&コピー対応『複合機』の上に乗っけてやりました。<br /><br /><span style="font-size:large;">『夢の爪とぎベッド』は『猫除けグッズ』と化しました</span>が、<br />無駄にならなくて満足です(´-ω-`)<br /><br />おしまい。<br /><br /><br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ちょ。<br />アタシの登場を心待ちにしてるファンの皆様に、<br />最近の激カワ写真を見せなくて終わるなんて、バッカじゃないのっ!」<br /><br />え~~~。<br />別にそんな待ってないと思うょ?<br /><br />でも、そこまで言うなら、<br />『マタタビ』で釣って激写したショットでもちっちゃ~~~く載せとく?<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/20150623101751e91.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-75.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/20150623101751e91.jpg" alt="ぽー猫つめ小 (42x50)" border="0" width="42" height="50" /></a><br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ちょ。<br />ちっちゃすぎて、なんだかわかんないじゃないのっ!<br />バカ、貧乳、あほエロっ<img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2008-11-30/329788.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">」<br /><br />はいはい(*´ω`*)<br />それでは皆様、また週末にぃ~(^^)/~~~<br /><br /><br /><br /><br /><br />
509

⑮バトル

「もう、帰るのか?」「2週間なんて、あっという間ね」 そう言う父と母に「近いから、いつでもまた来られるし」と言ってあたしは東京へ戻った。 新幹線で1時間ちょっとの近さは、逆にいつでも来られると思うせいか、なかなか足が向かないのだけれど。 まだ夏休みがたっぷりあるのに帰るのは、全国規模のダンスコンテスト『ダンスバトル2015』が横浜で開催されるからだ。 多くのダンスコンテストは大体、『キッズ部門』『ジュニ... <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><br />「もう、帰るのか?」<br />「2週間なんて、あっという間ね」<br /> そう言う父と母に「近いから、いつでもまた来られるし」と言ってあたしは東京へ戻った。<br /> 新幹線で1時間ちょっとの近さは、逆にいつでも来られると思うせいか、なかなか足が向かないのだけれど。<br /><br /> まだ夏休みがたっぷりあるのに帰るのは、全国規模のダンスコンテスト『ダンスバトル2015』が横浜で開催されるからだ。<br /> 多くのダンスコンテストは大体、『キッズ部門』『ジュニア部門』『中高校生部門』『一般(大学生以上の大人)部門』にわかれるのだけれど、この夏開催されるこの『ダンスバトル2015』はちょっとイレギュラーだ。年齢に関係なく実力次第、各地区で1次予選が行われ、そこで勝ち残ったチームは2次予選で1対1のトーナメント方式で競い合う。<br /> そうして最終決戦では、全国から選び抜かれた18チームの中から半分の9チームに絞られる。9チームの中からさらにベスト5が選ばれ、勝ち残ったチームはそれぞれ2曲を踊り、ベスト3が決まる。<br /> この最終戦9チームの中に、なんと佳絵先輩たちのチームが勝ち残っているのだ。この知らせがLINEで回ってきたとき、サークル部員たちは皆、大興奮。<br />「もうこれは、全員で応援しに行くっきゃないでしょ!」<br /> となったのは、当然と言えば当然だ。<br /><br /> という訳で、サークルの一員である知花ちゃんと早乙女君、そしてなぜか惺まで混じって、いま横浜の『ダンスバトル2014』会場にいるという訳だ。<br /> 今年、最終戦に残ったチームには、なんとキッズチームが2組、中学生チームと高校生チームがそれぞれ1組いた。中高のチームはともに各部門別で優勝経験があるという強者揃いで、ダンス開始時期の低年齢化と層の厚さを実感する。<br />「うわぁ~、キッズたちの踊りのキレ、半端ないね!」<br /> 半ば呆れたように知花ちゃんが感嘆するのも無理はない。キッズだけあって柔軟性を活かしたオリジナルの動きは逆に大人には難しい高度なものだし、身体が小さい分、全身で踊っているのがよくわかるパフォーマンスは観る者を圧倒する。<br /> 中学生、高校生と年齢が上がるにつれ、踊りも構成もより洗練されたものとなり、何より踊りが好きで好きで堪らないといった感じがビシビシ伝わってくるのが心地いい。<br /> 大学生チームは佳絵先輩たちと、他校だけどダンス仲間たちにはよく知られている男女混合の強豪チーム。大人チームは前回優勝の実力者チームと、新顔のメンズダンスユニット、それからセミプロじゃないかって思える色気炸裂のセクシー衣装チーム。<br /><br />「やっぱ、メンズのユニットって迫力あるし、カッコいいなぁ」<br /> 惚れ惚れしたようにそう言う知花ちゃんに、あたしは激しく頷いて同意する。<br /> 鍛えられた肉体が魅せるパフォーマンスに会場から黄色い声援が上がって、早くもファンがいるらしい。<br />「き、筋肉、凄いね」<br /> 早乙女君が頬を赤らめながら、そう言うから、知花ちゃんがからかう。<br />「へぇ、乙女。惺君ひと筋じゃなかったの?浮気者め」<br />「ち、違うよ。ただ、きゃ、客観的な感想を言っただけ」<br /> わたわたと動揺する早乙女君を可愛いな、と思いながら、あたしは惺に訊く。<br />「惺はダンスに興味ないから、観ててもつまんないでしょ?」<br />「んなこともないよ。踊りにもこんなに種類とパターンがあるって知らなかったし、観客の反応見てるのもそれなりに面白いよ」<br />「そっか、良かった」<br /> ステージのパフォーマーたちにある意味負けないくらい派手な惺を見ながら、あたしはふへ、と笑った。<br /><br />「ところでさ、菜っ葉。ウチの母親が張り切ってるぞ」<br />「? なにを?」<br />「この夏は、菜っ葉に浴衣着せるんだとさ」<br />「浴衣?」<br />「うん。この間、兄貴が帰って来て、母親に浴衣がないか訊いてたぞ」<br />「なんで?」<br />「さあ?でも母親は張り切っちゃって、あたしが着せてあげるから菜乃果さんをぜひ連れてきなさい。そうだわ、一緒に夕飯でも、とかなんとか言ってたぞ」<br />「え~~~」<br />「菜っ葉、兄貴は周り固めはじめたみたいだぞ」<br /> やっぱ、そうか。そんな感じはしてたけど、惺までそう思うくらいだから、もう決定的だ。だけど、あたしは軽くしらばっくれて惺に訊いてみた。<br />「周り固めはじめたって?」<br /> そう訊くあたしを、惺はしばらくじっと見て、それからため息をついた。<br />「逃げらんないってことだよ。兄貴、あの手この手で既成事実つくる気なんじゃないかな」<br />「…え~、うっそ」<br /> 事実を認めたくないって感じがありありだったらしく、惺が心配そうに訊く。<br />「なんだよ、菜っ葉。嬉しくないのか?」<br /> そういう訳じゃないけど…でも一人歩きの既成事実は、なんか違う気がする。<br /><br />「兄貴と、上手くいってるんだろ?」<br /> 上手くは…たぶん、いってる。だって実家のある街までわざわざまた来てくれて、初めてのときの思い出の、ふたりにとって特別なホテルの部屋を取ってくれたのは正直感激した。<br /> でも、同時に怖くもあるのだ。有さんの、大人のペースにいつの間にか乗せられていることが。<br />「…有さんは、大人だし優しいよ」<br /> 意地悪でもあるけど、という言葉は飲み込んで、あたしは惺に答えた。<br />「なんか、含みのある言い方だな」<br /> さすがIQ140超え、察しがいい。<br />「でも…」<br />「でも?」<br />「なんか、凄くスポイルされてる気がするの」<br />「スポイル?」<br />「うん」<br /> 惺は少し考え込んだ表情を見せてから言った。<br />「…たとえば、どんなときに?」<br /> まさか籠の鳥だ発言は言えなかったから、あたしは一番具体的な例を出して言ってみた。<br />「たとえば、就職しなくていいって言ったり」<br />「なに? 卒業、即、結婚てこと?」<br /> う~ん…。その前に同棲でもいいって言われたことは、さすがに言えないよね?<br />「社会は、あたしは思っている以上に厳しいとか、汚いとか、怖いとか」<br /> それを訊いて、惺がぶっと吹き出した。<br />「どうしたの?氷川君」<br /> 早乙女君が怪訝そうな顔をして訊いて、知花ちゃんもこっちを不審げに見る。<br />「あ、いや。何でもない」 <br /> 惺がまだ笑いを堪えながらやっとそう言ったのを見て、知花ちゃんが言った。<br />「ほら、次のパフォーマンスはじまるよ。ふたりとも、しーっ、ね」<br /> あたしはゴメンナサイの意味を込めて首を竦めて見せたけど、惺は今度はなにやら真面目な顔で考え込んでいる。<br /> やがてパフォーマンスが終わって、その盛大な拍手や歓声に紛れるように惺はあたしの耳元で言った。<br />「兄貴は、きっと不安なんだよ。これまでの人生の中で、大事だって思えるものを初めて手にしたんじゃないかな。手に入れたのが初めてだから、それを失った経験もない。失うことに人一倍臆病になったって、しかたないだろ?絶対に失いたくないから、できる限りの手を尽くす。あ、だけど大丈夫だよ、菜っ葉。兄貴は理性と知性を兼ね備えた、きちんと社会性のある大人だからさ」<br /> 惺の言うことはある意味、その通りで的を得ていた。<br /> でも、とあたしは思った。<br /> 有さんには、惺にも家族にも見せない一面がある。それを知っていることが、誇らしいような不安なような複雑な気分。<br /> あたしにとっても弟的存在の惺に励まされても消えない薄っすらとした曖昧さを抱えたまま、あたしは惺に一生懸命笑顔を見せた。<br />「うん、ありがと。惺」<br /><br /> 佳絵先輩たちのチームは3位に入賞、このハイレベルなバトルの中、大健闘だ。<br /> 1位は新顔メンズユニット、驚くべきことにキッズチームが2位に輝いた。前回の優勝チームは5位、次々に世代交代と新しい実力者が登場してくるのが昨今のダンス事情なのだと、あたしたちは改めて実感した。<br />「飯食って帰ろーぜ」<br /> 惺が長身をさらに細長くして、伸びをしながら言った。<br />「あたしは、いいよ。菜乃果も大丈夫だよね?」<br />「うん」<br /> 今日は土曜日。<br /> 有さんにはあらかじめ「みんなで夕ご飯食べて帰るかも」と言って許可はもらってある…って事前に許可取るようになっちゃったよ、あたし。意に反して、しっかり飼い慣らされてる?<br />「なににする?氷川君」<br /> 早乙女君が嬉しそうに、惺にすりすりと寄る。<br />「お好み焼きとか、どう?広島風の、旨い店があるんだ」<br />「お好み焼き?広島風の?」<br /> 知花ちゃんが、ちょっと興味をそそられた様子で言った。<br />「うん。薄い生地と卵の間に、野菜と焼きそばがたっぷり入って旨いんだ」<br /> へえ、おいしそう。大阪風のお好み焼きは食べたことあるけど、広島風ってそう言えばトライしたことなかったな。<br />「おいしいお店、惺君知ってるの?」<br />「そりゃあ、氷川君は知らずに提案する人じゃないでしょ?」<br /> 惺に代わって、早乙女君が得意そうに知花ちゃんに答える。<br />「乙女には、訊いてないからっ」<br />「え、えぇ~~っ」<br /> ぷぷ。今度は、知花ちゃんと早乙女君のバトルだね。ま、勝負は眼に見えてるけど。<br /> そんなこんなで、今夜のあたしたちの夕ご飯は広島風お好み焼きに決まった。<br /><br /></span></span><br /><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br />
  • Date : 2015-06-21 (Sun)
  • Category : アイス
507

⑭日常の中の非日常

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  • Date : 2015-06-20 (Sat)
  • Category : アイス
505

⑬紐P

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  • Date : 2015-06-14 (Sun)
  • Category : アイス
504

⑫真夏の白昼夢

「ふぁぁ~あ」 昼ご飯を食べた後、自分の部屋でベッドに寝そべりながら本を読んでいたあたしは、少し眠気を感じて大きな欠伸(あくび)をした。 BGMに低く流してあるアップテンポの曲が、ときどき遠くに感じられてあたしはパタンと本を閉じた。 平和と言えば平和な夏休みだ。 でも生まれ育った場所ではないから、幼なじみも中学高校時代の友人もいなくて、少々退屈だ。「はぁ。ターミナルビルに、ウインドウショッピングに... <span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><br />「ふぁぁ~あ」<br /> 昼ご飯を食べた後、自分の部屋でベッドに寝そべりながら本を読んでいたあたしは、少し眠気を感じて大きな欠伸(あくび)をした。<br /> BGMに低く流してあるアップテンポの曲が、ときどき遠くに感じられてあたしはパタンと本を閉じた。<br /> 平和と言えば平和な夏休みだ。<br /> でも生まれ育った場所ではないから、幼なじみも中学高校時代の友人もいなくて、少々退屈だ。<br />「はぁ。ターミナルビルに、ウインドウショッピングにでもいこうかなぁ。このままだと、身体鈍(なま)っちゃう」<br /> ベッドの上で思いついたようにストレッチをしながら、あたしはもう一つ欠伸をした。<br /><br /><br />「お母さん、ちょっと出てくる」<br />「あら、どこへ行くの?」<br />「ウチでごろごろしてても退屈だから、駅の方へ行ってみる」<br />「そう。暑いから日傘持ってく?」<br />「大丈夫、日焼け止め塗ったから」<br /> そう言って家を出たけれど、快晴の空と照りつける太陽のせいで、あっという間に顔にも身体にも汗の粒ができる。<br />「う、アッつ」<br /> 日焼け止めなんか効果が期待できないほどの真夏日に、バス停でバスを待った。幸い、バスは5分ほどで来てくれたけど、車内に入ったら強すぎる冷房に汗が一気に引いて冷えてきた。そんなことにも、夏を感じる。<br /> 駅はウチの近くのバス停から6つ目で、歩いても25分くらいの距離だから、あっという間に駅に着いた。<br /> 土曜日ということで、平日より賑わっている駅ビル内のショップをぶらぶら歩き見る。夏らしいカラフルなアクセを手に取ったり、爽やかなブルーや白のサマーワンピなんかを買う目的もなく体に当てて鏡を覗く。<br /> 楽しそうに互いをイジリ合う男女の姿に、やっぱり有さんを思い出してしまう。本当なら土曜のいま頃は、食べ終わったブランチの後片づけをふたりでし終わって、ソファでくっつき虫になっているはずだった。<br /> 早くも淋しさを感じている自分に思わず苦笑していると、スマホがメール着信を伝えた。<br /><br /> え…有さん?<br /> 有さんも自分と同じく淋しさを感じていてくれたんだろうか、そんな期待にちょっとドキドキしながら、急いでメールの内容をチェックする。<br />〈菜乃果、いまあのホテルだ〉<br /> あのホテル? <br /> え…もしかして?<br /> 思いがけないメッセージに、胸がどくんと一つ大きく跳ねる。そしてすぐに嬉しさが込み上げてきて、くすぐったい気持ちになる。<br /> 有さんのメッセージは続く。<br />〈出てこれないか?〉<br />〈有さん、あのホテルって…〉<br />〈俺たちにとって忘れられないホテルだ〉<br /> あたしはスマホを握りしめたまま、早足になった。<br /><br /> どこ?有さん、ホテルのどこにいるの?<br /> そうだ、きっと、きっとあそこだ。<br /><br /> あたしはなぜか確信を持って、息を弾ませながらターミナルホテルのラウンジを見回した。<br /> 居た。<br /> 胸元を少し肌蹴た涼しげな麻のシャツと細身のジーンズ、それだけでサマになる素敵な大人のオトコのひとが、ゆっくりとコーヒーを飲んでいた。<br /> 少し早足に近づくあたしにすぐに気づいて、ちょっと驚いたように銀のフレームの眼鏡に軽く手を添える。そんな仕草もまるで計算されたかのようにかっこよくて、ドキドキする。<br /> あたしを真っ直ぐ見つめて、軽く手招きする仕草がスローモーションのように感じるくらい、信じられない幸福な白昼夢を見ていた。<br />「有、さん」<br /> 吸い寄せられるように、彼が座っているテーブルの正面に座る。<br /> 有さんは薄い三日月形の唇の口角をセクシーに上げて、大好きな低い声で囁いた。<br />「やあ。菜乃果、早かったな」<br />「駅ビルでウインドウショッピングしてたの、偶然」<br />「それは、邪魔して悪かったな」<br /> 少しも悪いなんて思っていない表情で、そう言う有さんが憎らしい。<br /> だから、あたしも負けずに言った。<br />「うん。せっかく独りで羽伸ばしてたのに」<br /> 有さんは、く、と笑うと、急に怖い顔をつくって見せた。<br />「羽なんか伸ばさせやしないさ。菜乃果は永久に、俺の籠の鳥なんだから。いつだって、どんな遠くにいたって、見えない糸で繋いで逃がしはしない」<br /> そんな風に決めつけられることが、嬉しいと感じてしまうから重症だ。<br /> もうあたしは強がりなんか言えなくなってしまって、素直に嬉しさを表情に出してしまう。だって思いがけず会いに来てくれたことが、信じられないほど嬉しくて舞い上がってしまいそうなんだもの。<br /> でも…そう、でも。<br />「…でも、有さん、どうして…」<br />「どうして?」<br /> 怪訝そうに、可笑しそうに、有さんは微笑んだ。<br /> <br /> そのときウエイターさんがオーダーを取りに来て、有さんはあたしから眼を1㎜も離さずに彼に告げた。<br />「彼女に、アイスミルクティーを」<br />「かしこまりました」<br /> そう、あたしがいま飲みたかったのは、それ。有さんはとてもスマートにオーダーをすますと、小さな箱をテーブルの上に置いた。<br />「可愛いのを見つけた。きっと菜乃果に似合う」<br />「なに?」<br /> 小首を傾げて小箱を手にしたあたしに、クスリと悪戯っぽく笑うと有さんは言った。<br />「ここで、開けない方がいい」<br /> その意味に思い当って、あたしは顔を赤くしたんだと思う。<br />「イヤらしい、菜乃果。何を想像した?」<br />「な、なにも」<br /> それからあたしの方へ顔を近づけると、ひっそりと企みを共有するように囁いた。<br />「あの、部屋を、取ってある」<br /> 体温がかぁっと上がったのが、自分でもわかった。冷房の程よく効いたホテルのラウンジなのに、じゅゎりと汗が滲む。<br />「菜乃果、今日はこれを渡しに来たんだ」<br /> 小箱を持ったままのあたしの手を、有さんの長い人差し指がなぞる。その秘密の約束みたいな感触に、背中にぞわりと快感が走る。<br /> 有さんは、さらに耳元で囁く。<br />「菜乃果、口が半分開いてる。イヤらしいぞ、なに考えてる?」<br /> 有さんは楽しそうにそう言ってから、突然すっと距離を取った。<br /> <br />「お待たせしました」 <br /> ウイエイターさんが上品なグラスに入ったアイスティーと、ガムシロップとミルクがそれぞれ入ったピッチャーを置いて行く。<br /> それに「ありがとう」も言えないまま、あたしは有さんの意地悪な表情から眼が離せない。<br />「喉が渇いているはずだ」<br /> 有さんはそう言うと、ガムシロップとミルクをあたしの代わりに入れて、ストローをグラスに差した。<br /> 差し出されるままに、ストローを加えてちゅるとアイスミルクティーを啜る。<br /> 有さんが急にグラスを引くから、慌ててストローから口を離すと、あたしの口元から薄い乳茶色の液体が零れる。<br /> 身動きできないあたしの代わりに、有さんの長くて綺麗な指がそれを掬った。<br />「ますます、イヤらしい。菜乃果、誘ってるのか?」<br /> 慌てて首を振りながら、ああ、これでは有さんの思うツボだとやっと自覚する。<br />「もう、待てない」<br /> 有さんはそう言うと、あたしの手を引いて立ち上がらせる。<br /> あたしの喉はまだカラカラのままだ。<br /> だけどお構いないしに有さんはさっさとお会計を済ませると、あたしの背中を押してエレベーターの中へ押し込めた。<br /> 高層階へと続く真夏の午後のエレベーターには、有さんとあたししかいない。<br />「んっ…んんん」<br /> 有さんがいきなり深いキスをしてくる。口内を熱い舌で執拗にまさぐられて、あたしは気づいた。渇いていたのは喉じゃない、あたしの心と躰が、彼を認めた瞬間から酷い渇きを訴えはじめていたんだ。その自覚に、胸の奥がきゅぅんと切なく泣いた。<br /> 有さん、大好きなひと。離れていることなんかできない、いつだって逢いたくて逢いたくて。あたしの心のほとんどを占めてしまう、ホントに酷い愛しいひと。<br /><br /> やがて、ちんと音がしてエレベーターの扉が開く。<br /> エレベーターを降りて、あの記憶をたどるようにカーペットが敷き詰められた長い廊下を歩く。隣にはやっぱり背の高い素敵なひと。<br /> 4016室。<br /> やがて同じルームナンバーの部屋の前で立ち止まると、有さんはカードキーを取り出した。そしてゆっくりカードを差し込むと、その部屋の扉をかしゃりと開けた。<br /></span></span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br /><br />
  • Date : 2015-06-13 (Sat)
  • Category : アイス
503

⑪夏休みのはじまり

  夏休みになった。 久しぶりに両親が暮らす地方都市へ、約2週間の予定で帰ることにした。「2週間も俺を放っておく気か?」 相変わらず駄々っ子みたいなことを言う有さんに、あたしはベロを出しながら言った。「もう、有さんたら子供みたい」「そんなことを言うと、後で後悔するぞ」「はいはい」 そろそろご両親に挨拶に行くという有さんをなんとか留(とど)めて、あたしはだいぶ慣れた地方都市の駅へ降り立った。「いきなり...  <br /><span style="font-size: medium;"><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"> 夏休みになった。<br /> 久しぶりに両親が暮らす地方都市へ、約2週間の予定で帰ることにした。<br /><br />「2週間も俺を放っておく気か?」<br /> 相変わらず駄々っ子みたいなことを言う有さんに、あたしはベロを出しながら言った。<br />「もう、有さんたら子供みたい」<br />「そんなことを言うと、後で後悔するぞ」<br />「はいはい」<br /> そろそろご両親に挨拶に行くという有さんをなんとか留(とど)めて、あたしはだいぶ慣れた地方都市の駅へ降り立った。<br /><br />「いきなり挨拶なんかに来られたら、ウチの親、びっくりしちゃう。まだ、つきあってることすら話してないんだから」<br />「なぜ、話さないんだ?」<br /> いや、だって。<br /> 13個も年上のひととつきあってるなんて、どうやって両親に切り出そう。自慢じゃないけど、高校を卒業するまでボーイフレンドくらいはいても、特定の彼氏はその気配すら感じさせなかった娘に、両親は困ったものだと口では言いつつ安心しきっていたはずだ。<br />それが突然…やっぱ驚くだけでなく、心配されるよね?<br /> なんとなく外堀を埋めようとしはじめている気がする有さんのことを思うと、気軽に「つきあってま~す」的な報告ができない。<br /><br /> 父親に「ちゃんと紹介しなさい」と言われる → いい機会だと、いきなり有さんが結婚を申し込む → 早すぎると反対される → 有さん「私の方は、今年33歳になります。早すぎるということはありません」 → 父「しかし菜乃果はまだ大学生だし、就職もこれからだ」 → 有さん「それなら就職が決まるまで婚約という形で、同棲でもかまいません」 → 母「あら、同棲はちょっと母親として心配な気が…」 → 有さん「そうですよね、私も本当はきちんとした形にしたいんです」 → 父「しかし…。う~ん、菜乃果の気持ちはどうなんだ?」 → 「え~~~、なんでそこであたしにフルのぉ~」 → 有さん「菜乃果は俺と結婚したくないのか?」 → 有さんの眼が怖くなって、暗に「後でお仕置きだぞ」って言ってるような………<br /><br /> …ダメだ、考えるの止そう。 堂々巡りだ、はぁ…。<br /> 結論が出ない問題から取りあえず逃げて、あたしはバスターミナルから路線バスに乗った。<br /><br /><br />「ただいま~!」<br />「あらぁ、お帰りなさい。暑かったでしょ、菜乃果?」<br /> エプロン姿でキッチンに立っていた母が、額の汗をぬぐいながら振り向いた。<br /> 冷房を弱く利かせていても、キッチンは居間と5度くらい室温が違う。夕飯の支度だろうか、何やら煮込んでいるらしい鍋を軽くかき混ぜながら母が言う。 <br />「冷蔵庫に麦茶あるわよ。ごめんね、自分で入れて」<br />「うん」<br /> 冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぐと、母の背中から鍋を覗き込んだ。<br />「あ、紅茶豚」<br />「うん、今日も暑かったから。辛子マヨネーズと、おろしポン酢でさっぱり食べよ」<br />「これはお父さん、ビールがすすむね」<br />「菜乃果、夕飯前にお風呂入りなさい。汗かいたでしょ?」<br />「うん、シャワーでいい」<br /> シャワーを浴びて風通しのいいダボッとしたTシャツと短パンに着替え、バスタオルで髪を拭いていると、それを見た母が言った。<br />「まぁま、男の子みたい。色気ないわねぇ」<br /> 慌ててソファの上でかいていた胡坐をやめると、ちゃんと座り直した。<br /> いまの母の言葉で、なんだかますます有さんのことを言いだしにくくなって、あたしは取ってつけたように言った。<br />「そ、そのうち自然に色気とか出てくるから」<br />「どうかしらねぇ?」<br /> 娘に彼氏ができたことも、もうヴァージンじゃないことも、まったく想像していないみたいな母に、少しだけ申し訳ない気分になる。<br />「お母さん、夕飯の支度、手伝う」<br /> そう言って勢い良く立ち上がると、母が笑う。<br />「じゃあ、お願いね。でも、その前に髪乾かしなさい」<br /><br /><br /> 母と台所に並んで夕飯の支度をしていると、父が思いがけず早く帰って来た。<br />「お父さん、お帰りなさい」<br />「おお、菜乃果もお帰り」<br /> ふたりで「お帰り」を言い合って、なんだか可笑しくなって顔を見合わせて笑った。<br />「お父さん、早いわね。もう、菜乃果が帰ってくるからって」<br /> そう茶化す母に、照れたように頭を掻いて父が言う。<br />「菜乃果、シャワー浴びてくる。ビールの用意頼む」<br />「うん、枝豆と茄子の浅漬けあるよ」<br />「お、いいね」<br /> ウチは庶民だ。そして庶民なりの何でもない日常と幸せがあって、あたしはそれがとても好きだ。<br /> もしも有さんと結婚したら、こんな風に家族になれるんだろうか?<br /> きっともっと違った、良く言えばお洒落で都会的な、そして悪く言えばなんだか実態がない、絵に描いた家族像のような掴みどころのない感じがあって。<br /> それが結婚というカタチを思い描けないもう一つの理由なのかもしれないと、あたしはこのとき初めて思った。<br /> 氷川家に引き取られて、家族になっても、独り孤独を抱えたままのような有さんは、どんな家庭を望んでいるのだろう?<br /> 温かい?安心できる?あたしにつくれるのは、きっとごくごく平凡なくつろぎだ。それでいいのかな、有さん?<br /> 有さんとふたりの、結婚後の青写真がどうしても思い浮かばないことに、あたしは気の早い不安を覚えた。<br /><br /><br />「ねぇ、お父さん」<br /> ビールを調子よく飲んで、ちょっと顔が赤い父にあたしは思い切って切り出してみた。<br />「ん?なんだ、菜乃果」<br />「あたしね、どんな仕事をしたいのか全然わからないの」<br /> ふ~む、と赤い顔をした父が考え込む。<br />「でも、まだ2年だろ。就職活動は来年からだろ?」<br />「やぁね、お父さん。就職活動がはじまってからじゃ遅いのよ。その前に、どんな仕事をしたいかわからなかったら、会社を選べないじゃないの」<br /> 母が呆れたように言って、お刺身を口に入れた。<br />「あ、でも。女子は相変わらず就活厳しい時代だから、あんま選べないんだけどね」<br /> あたしは慌てて現実を両親に伝える。<br />「そうか」<br /> と父は少し難しい顔で考え込むと「お母さん、冷酒」と言う。<br />「やだ、菜乃果が真剣な話してるのに。いくら娘が帰って来て嬉しいからって、今日は飲み過ぎよ」<br />「あ、いいよ。お母さん、冷酒はあたしが持ってくる」<br /> 冷蔵庫に冷えている冷酒の瓶と切子のグラスを持ってきて、父の前に置く。<br /> 父がキャップを開けたので、「注ぐよ」と冷酒の瓶を受け取る。<br /> 美しくカットされた繊細な切子のグラスに注がれた冷酒をおいしそうに呑むと、父は言った。<br /><br />「普通でいいよ」<br />「普通?」<br />「ああ。どんな仕事でも、菜乃果を受け入れてくれる会社と良い環境があって、あまり無理せず楽しく働ければいいとお父さんは思ってる」<br /> そうなの? あたし、能力もそこそこだから、あまり期待されてない?<br />「まあ、あたしにできるのは、ごく普通のOLくらいだもんなぁ」<br />「そういう意味じゃないよ、菜乃果」<br />「?」<br />「お父さんは、辛い職場環境や人間関係であまり苦労してほしくないんだ。女の子は周りに愛されて、それなりに楽しく充実した仕事ができればいいと思ってる」<br />「そうねぇ。あまり苦労すると、ギスギスしたり、キツい性格になっちゃうしねぇ」<br />「そうなの?」<br />「うん。昔の話だけど、お母さんの職場にも仕事はできるけどキツい先輩がいて、いまでも独身だって訊いたわ」<br />「へぇ…」<br /> 今度は母が、父に冷酒をお酌しながら続けた。<br />「それに女にはいろいろな節目があるしね。結婚とか出産とか、子育てとか。長い眼で見れば親の問題や介護、どれも男の人より女の方が大変よ」<br /> そう言えば、母は父と結婚を機に仕事を辞めたのだった。転勤族の父を、単身赴任させたくないからだったそうだ。<br />「だからね、菜乃果。女の子はずっと続けられるもの、なにか手に職をつけるのがいいと思うわ、お母さんは」<br /> 母の趣味は和裁だ。着物を着る人が減っているから、それほど多く頼まれるわけではないけれど、でもどこへ移り住んでも楽しそうに縫っている姿を子供の頃から眼にしてきた。<br /> 幼い頃は、人形用にとても綺麗な小さな着物をつくってくれて、友達にものすごく羨ましがられたものだ。<br /> 手に職かぁ…。英語、なんとかもう少し頑張ってみようなぁ。<br /> そう思いながら、あたしは紅茶豚をもう一切れ頬張った。<br /></span></span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=357034555" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=357034555&size=88" width="88" height="31" alt="" /></a><br /><br />
  • Date : 2015-06-07 (Sun)
  • Category : アイス
501

⑩エッチと死

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  • Date : 2015-06-06 (Sat)
  • Category : アイス
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