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第8章 秋色吐息〈ⅲ〉

 秋晴れの土曜日、暑くもなく寒くもなく爽やかな気候と裏腹に、灯里の気持ちは曇っていた。 あまり人が多くない午前中にという高橋の希望で、朝の7時に大きな公園の池の前のベンチで待ち合わせた。服装は「いつか北川さんが来ていた水色のワンピース」と言われて、それにアイボリーのカーディガンを羽織って来た。 ベンチに座って鳥たちの水遊びや、颯爽と散歩するレトリバーの姿などを眺めていると高橋の明るい声がした。「や... <span style="font-size:large;"> 秋晴れの土曜日、暑くもなく寒くもなく爽やかな気候と裏腹に、灯里の気持ちは曇っていた。<br /> あまり人が多くない午前中にという高橋の希望で、朝の7時に大きな公園の池の前のベンチで待ち合わせた。服装は「いつか北川さんが来ていた水色のワンピース」と言われて、それにアイボリーのカーディガンを羽織って来た。<br /> ベンチに座って鳥たちの水遊びや、颯爽と散歩するレトリバーの姿などを眺めていると高橋の明るい声がした。<br />「やあ、おはよう、北川さん」<br /> 立ち上がって振り返ると、カメラを提げた高橋がいつもよりラフな格好で立っていた。<br />「おはようございます」<br />「今日はありがとう。お休みなのに朝早くからごめんね」<br />「いえ」<br /> <br /> 「じゃあ、早速」と言う高橋について、常緑樹の緑が多い公園の奥へ進む。木漏れ陽が陰影をつくるベンチの一つを高橋は指した。<br />「あのベンチの近くへ行って。立ち姿と座った写真を撮らせてくれる?」<br /> 言うとおりに灯里は木漏れ陽の中に入るが、もともと写真が苦手な上に、モデルなど初めてでどんなポーズや表情をつくったらいいかわからない。<br />「緊張しないで、自然でいいよ」<br /> 高橋はそう言うが、自然というのが実は一番難しい。本とか帽子とか、小道具を持ってくればよかったと思うほど手持ち無沙汰だ。<br />「じゃ、今度はベンチに腰掛けて遠くを見る感じで」<br /> 灯里はベンチに浅く腰掛け、遠くで散歩する老夫婦を見つめた。<br />「ちょっと笑ってみてくれる?」<br /> 笑顔ってどうつくるのか忘れてしまったほど、ぎこちない笑みを貼りつけてしまうのが自分でもわかる。<br /><br />「場所変えようか?」<br /> と近寄って来た高橋に、灯里はとうとう謝った。<br />「ごめんなさい、上手くできなくて」<br />「そんなことないよ。それにプロのモデルさんじゃないんだから、頑張ろうとしなくていいよ」<br /> 高橋は気さくに笑い、灯里は少しホッとする。<br />「小川の方に行ってみようか?」<br />「はい」<br /> 途(みち)は少し狭くなり、両側の樹々がつくるアーチを通ると心地よい空気に包まれて思わず深呼吸をする。<br />「フェトンチットって言うんでしたっけ?なんだか癒されますね」<br />「そうそう、その笑顔だよ。その感じでリラックスして」<br /> 枝葉に手を伸ばし深呼吸する灯里に、高橋はそう言った。<br /> <br /> 小途で少し撮影して、再び広がりのある池の畔に戻って来た。<br />「あと数カットでいいかな。じゃあ、最後は北川さんの自由でいいよ」<br />「自由って言われても…。あの、歩いてもいいですか?」<br />「あ、そうだね。ちょっと待って連写に切り替えるから」<br /> 灯里はなるべくカメラの方を見ないように、高橋の存在を意識しないように歩き出した。<br /> 昼近くになった公園は家族連れやカップルの姿も増えて、快晴の秋の休日を思い思いに楽しんでいる。そんな様子を見ながら歩いていたら、すぐ傍で可愛らしい声がした。<br />「ラッキー、おいで」<br /> ラッキー…懐かしい名前だ。そう思って声の方を見ると、小学生らしい3人の子供が中型の柴犬と戯れていた。<br /> 一番年上らしい女の子と、どちらが上かわからない男の子と女の子。それはまるで、かつての柊と繭里、灯里のようだった。<br /><br /><br /> 懐かしく、そして切ない。<br /> 戻りたくても決して戻れない、絵本の中のような幸せな日々。明日も同じように笑い合えるのだと信じて疑わなかった平穏。<br /> どこであたしたちは途を間違えたのだろう。その分岐点に戻ってやり直せたら、もっと違ったいまがあったのだろうか?<br /> だけど、考えてもしょうがないこと。自分の宿命の選択肢は、もともとそれほど多くはなかった。ただ悔いるとしたら、再び会わなければよかった。そうしたら、柊ちゃんを身勝手な自分の途連れにすることだけはなかったのに。<br /><br /><br />「凄く、いい、表情だった」<br /> 突然、至近距離で言われた言葉に灯里は驚いた。気がつくとラッキーと呼ばれた柴犬と3人の子供たちは消えていて、高橋の満足げな笑顔があった。<br />「あ、ごめんなさい。考え事していて…」<br /> 慌ててそう言う灯里に、高橋は言った。<br />「いや、逆に自然でとてもよかったよ。北川さんは、笑顔より少し物憂げな表情が実に似合う。カメラを覗いていて、作品のタイトルも決まったよ」<br />「タイトル?」<br />「うん、〈秋色吐息〉でいこうと思う」<br /> そう言って、ちょっとセンチメンタルすぎるかな、と高橋は笑った。<br /><br /> <br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 翌週の日曜日、灯里は由紀子と料理教室にいた。<br />「仁科由紀子です。同じ大学に勤務する北川さんに教えてもらって、今日から習いはじめることにしました。どうぞよろしくお願いします」<br /> 少し緊張しながらも、灯里がいるせいか、入社時の挨拶よりは滑らかに由紀子はそう言った。<br />「あらぁ、北川さん、また家庭料理の基本をやるの?」<br /> 前回から一緒だった、新妻の井上さんが言う。<br />「北川さんは、面倒見がいいからね。私のときだって、男性一人じゃ気まずいだろうって同じコースにつき合ってくれたんだから」<br /> そう言って三宅は、由紀子に自己紹介する。<br />「北川さんの証券会社時代の同僚で、三宅と言います」<br />「三宅さん、今回は男性一人じゃないですよ。ええ、私は老後を考えて料理ぐらいできるようにと妻にハッパをかけられて通うことにした、染谷と言います」<br /> 自動車メーカーを定年退職したばかりだという染谷と三宅のふたりの男性、初めての由紀子とOLだという佐久間、回を重ねている井上と灯里という6人が今回のメンバーだ。<br />「はいはい、じゃあ、初めての方もそうでない方もよろしくお願いしますね。講師の宮前です。今日のメニューは…」<br /> <br /> 手慣れた新妻の井上と隣り合わせになった由紀子は、ジャガイモの皮を剥きながら小声で訊ねた。<br />「三宅さんも、北川さんの紹介だったんですか?」<br />「うん、そうよ。あ、でもそういう関係じゃあないわよ」<br /> 由紀子の表情を読んだように、井上がクスリと笑った。<br />「あ、いえ、別に私は…」<br />「最初はね、前回のメンバーもそう思ったの。でも三宅さんは、ご病気で入院している奥様のためにお料理を習っているらしいわ」<br />「そう、なんですか…」<br /> 上手に魚をおろす灯里と、仲がよさそうに話す三宅を見ながら、由紀子はなんとなくふたりの繋がりは元同僚というだけではないような気がした。<br /></span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=315029478" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=315029478&size=88" width="88" height="31" border="0"></a><br /><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="http://novel.blogmura.com/img/originalimg/0000040770.jpg" width="142" height="47" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a><br />
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第8章 秋色吐息〈ⅱ〉

「これ、今日中って言ったよね」 高橋の厳しい声がする方を見ると、今朝イメチェンで注目されたばかりの由紀子がうなだれて立っていた。 ヘアスタイルも服装もがらりと変わり、地味だった印象が遅ればせながら可愛らしいOL1年生らしくなり、それを指摘する先輩たちの声に嬉しそうだったのに、と灯里は思った。 恋している乙女らしい紅潮した表情を見せていた由紀子が、いまは見る影もなく悄気かえっている。「どうしたんですか... <span style="font-size:large;">「これ、今日中って言ったよね」<br /> 高橋の厳しい声がする方を見ると、今朝イメチェンで注目されたばかりの由紀子がうなだれて立っていた。<br /> ヘアスタイルも服装もがらりと変わり、地味だった印象が遅ればせながら可愛らしいOL1年生らしくなり、それを指摘する先輩たちの声に嬉しそうだったのに、と灯里は思った。<br /> 恋している乙女らしい紅潮した表情を見せていた由紀子が、いまは見る影もなく悄気かえっている。<br />「どうしたんですか?」<br /> 灯里は思わず声をかけていた。<br />「いや…明日の学部会議で使う資料なんだけど」<br /> と高橋が灯里の方を見て言うと、またすぐ由紀子に顔を戻した。<br />「間に合わないっていうならまだしも、まったく忘れてたなんて…」<br />「すみません」<br /> 由紀子は一層小さな声で謝ると、気の毒なほどに躰も竦める。<br />「あの、あたし手伝いましょうか?」<br /> 思わず灯里はそう言っていた。<br /><br />「済みません、北川さん」<br />「いいよ、ふたりでやった方が速いから」<br /> 由紀子と一緒に残業しながら、灯里はてきぱきと必要なデータをつくりプリントアウトすると、彼女に必要部数分を整理してまとめるように頼んだ。由紀子がまとめた資料を、今度は灯里が最終確認しながらファイリングしていく。効率の良い流れ作業で、2時間ほどで学部会議の資料は無事に揃った。<br />「終わったね」<br />「ありがとうございました」<br /> 深く頭を下げる由紀子と、顔を見合わせて灯里は微笑み合った。そんなふたりに高橋がペットボトルのお茶を差し出す。<br />「お疲れさま、無事にできたみたいだね」<br />「本当に申し訳ありませんでした」<br /> もう一度詫びる由紀子に、高橋は今度は笑顔で頷いた。<br />「遅くなっちゃったね、もう帰っていいよ」<br />「はい、お疲れさまでした。お先に失礼します」<br /> 自席を立った由紀子は、灯里の席へ来て言った。<br />「あの、北川さん。今日は本当にありがとうございました。何かお礼させてください、食事とか…」<br />「そんなの気にしなくていいから、お互いさま。今度はあたしが手伝ってもらうかもしれないし」<br />「でも…」<br /> そのとき高橋が、由紀子に暗に先に帰れと促すように言った。<br />「仁科さん、帰っていいよ。北川さん、ちょっと話があるから残って」<br />「あ、はい。じゃ、仁科さん、お疲れさま」<br /> 高橋に話があると言われて、灯里は少し嫌な予感がしたが、由紀子にそう言った。<br /> そうまで言われた由紀子は、振り返りながらも先に帰って行った。<br /><br />「写真のモデルの件なんだけど…」<br /> やはりその話か、と灯里は思った。<br />「本当に写真展、今年こそはって狙ってるんだ。なんとかお願いできないかなぁ」<br /> もうひと気のなくなったフロアで、高橋の頼みは遠慮がないように感じられた。<br />「場所はね、屋外。秋の公園で、1時間くらい撮影させてもらえると嬉しいんだけど」<br /> 公園に女性というありきたりのシチュエーションで入賞を狙うのがいまいち理解できなかったが、変に凝ったシチュエーションよりは気が楽だ。<br />「一度だけでいいなら」<br /> 執拗な誘いは今回だけにしてほしいという思いを込めて灯里が言うと、高橋の顔が嬉しそうに輝いた。<br />「ありがとう!」<br /> 今週末の土日の晴れた方、という約束で灯里はやっと高橋から解放された。<br /><br /> もう少し仕事があるという高橋を残して事務棟を出た灯里は、物陰に佇む人影に声をかけられた。<br />「北川さん」<br />「…仁科さん、どうしたの?帰ったんじゃ…」<br />「帰ろうと思ったんですけど、ちょっと待ってみようかなって…」<br /> なんだろう?こっちも話したいことがあった? と灯里は由紀子の表情を薄暗闇の中で覗き込んだ。<br />「あまり遅くなると、お家の人、心配するよ?」<br /> お嬢さんであろう由紀子を思って、灯里はそう言った。<br />「たまには、私だって…」<br />「そうなの?」<br /> と言って、灯里は由紀子と並んで歩く。<br /><br /> 今日一日、由紀子の頭を占めていたのは、星奈から今朝訊かされた「柊と灯里が幼なじみ」という新しい情報だった。昼休みに本当かどうか訊こうと思っても、それは自分の片思いの相手を告白することのような気がして、迷っているうちに時間が過ぎてしまった。<br /> 訊けない、でも訊きたい、確かめたいという思いでいっぱいになり、仕事でもミスしてしまった。このままでは明日も気になって上の空になってしまう、と思った由紀子は灯里と高橋の話が終わるのを待つことにしたのだ。<br /> それなのに、どう切り出していいか由紀子にはわからない。<br /><br /> 由紀子が自分を待っていた理由を言わないので、無理に訊き出すのもと思った灯里はさり気ない世間話を続ける。<br /> そんなふたりは正門に差し掛かったとき、反対側から歩いてくる背の高いシルエットに同時に気がついた。<br />「あ」<br /> 由紀子が思わず立ち止まった。<br />「あれ、いま帰り?」<br /> 柊は由紀子に優しいまなざしを注ぐ一方で、灯里の方は見ようともせずに不愛想に言った。<br />「お疲れさま」<br />「お疲れさまです」<br /> 灯里も柊から視線を外したまま、冷ややかな声で答えた。<br /> あれ?と不思議に思った由紀子に、柊は飛び上がりたくなるほど嬉しい言葉をかけてくれた。<br />「なんか…可愛くなりましたね。髪型、変えたの?」<br />「は、はい」<br /> 真っ赤になった由紀子は、俯きながらも嬉しさを隠しきれない。<br />「大人っぽくなった、かな?洋服のせいかな?」<br />「へ、変ですか?」<br /> 焦って訊く由紀子に、柊は見惚れるような清潔で理知的な微笑みで答えてくれた。<br />「全然、変じゃないよ。凄く、いい」<br /> 凄く、いい…由紀子の頭の中でその言葉が何度もリフレインする。ぼうっとなってしまった由紀子に、柊は言った。相変わらず、灯里の方はその存在すら無視するように。<br />「じゃ、また。気をつけて帰って」<br /><br /> 灯里と途中の乗換駅で別れるまで由紀子は、ずっと不思議だった。<br /> 幼なじみなのに、幼なじみらしくない…。<br /> そして、ある結論を導き出した。それが恋する女の都合のいい結論だとは、気づかずに。<br /> 幼なじみだって、仲がいいとは限らない。むしろその逆だってある。北川さんが大学で勤めはじめたのは半年前、ふたりは期せずして偶然の再会をしたのだろう。<br /> なんだ、もし仲が良かったら一緒にどこかへ出掛けられたかもしれないのに。残念だけど、よかった。もうこれで、幼なじみかどうかなんて気にする必要もない。<br /> そう思ってえくぼを浮かべると、由紀子は電車の窓に映る柊に褒められた髪型を右手で軽く直した。</span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=315029478" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=315029478&size=88" width="88" height="31" border="0"></a><br /><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="http://novel.blogmura.com/img/originalimg/0000040770.jpg" width="142" height="47" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a><br /><br />
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第8章 秋色吐息〈ⅰ〉

 ねえ、灯里。 僕らは、絶望行という名の幸福列車に手を繋いで乗ったのだったよね。 幼い頃のように、嬉々として、明日のことなど何も考えずに。 僕らをいつも厳しく叱るけど、本当は温かな先生が言ってたことを覚えている? 「家に帰るまでが遠足だぞ」 灯里、キミは言ったよね。 あたしには帰る場所がないと。 帰る家がないのなら、僕らの遠足は終わらない。 ふたりともこの列車から、永遠に降りることはできないんだよ... <span style="font-size:large;"> ねえ、灯里。<br /> 僕らは、絶望行という名の幸福列車に手を繋いで乗ったのだったよね。<br /> 幼い頃のように、嬉々として、明日のことなど何も考えずに。<br /> 僕らをいつも厳しく叱るけど、本当は温かな先生が言ってたことを覚えている?<br /> 「家に帰るまでが遠足だぞ」<br /><br /> 灯里、キミは言ったよね。<br /> あたしには帰る場所がないと。<br /> 帰る家がないのなら、僕らの遠足は終わらない。<br /> ふたりともこの列車から、永遠に降りることはできないんだよ?<br /><br /> そんな簡単なこともわからずに、キミはもう終わりだと言う。<br /> わからず屋のキミがそう言い張るから、<br /> 幸福列車は暴走列車になってしまう。<br /> 最初に壊れたのは、ブレーキだ。<br /> 次にドアを開閉するシステムが壊れ、線路を脱線し、<br /> いつまで続くともわからない獣道へと彷徨いこむ。<br /> 暴走列車はその名の通り、スピードを上げ奈落を目指す。<br /> ちかちかと点滅する灯りはいまが夜なのか昼なのかすら、<br /> 僕らに教えることはない。<br /><br /> でも、それでいいんだ。<br /> この世界は完璧に閉ざされ、<br /> いまや僕とキミだけの神聖な牢獄だ。<br /> この牢獄に存在する確かなものは、<br /> キミと僕がこれからも躰を繋げ合うという事実だけだ。<br /> 宇宙の光からも法律からも隔離された僕とキミだけの世界は、<br /> なんて甘美で魅惑的なんだろう。<br /><br /> 灯里。<br /> 暴走列車がギアをチェンジしたよ。<br /> もう、降りられない。<br /> 飛び降りたら、とてつもない大怪我をする。<br /> 灯里。<br /> その前に、僕はキミをこの閉じられた世界から<br /> 決して出すことはないだろう。決して。<br /><br /><br /> 糸の切れたマリオネットのように、ベッドに横たわる灯里を、柊は呆然と見ていた。首筋に、肩に、乳房に、鳩尾(みぞおち)に、手首に、大腿に、いや全身に無数の痣と噛み跡がある。複数の傷跡からは痛々しく血が滲み、紫や赤や青の花が凄惨な彩りを添えている。<br /><br /> これはなんだ、レイプの跡か?<br /> そう愛しい女を見つめて、柊は愕然となった。やったのは、紛れもなく自分だ。嫌がる灯里を、泣き叫ぶ灯里を、僕が暴力的に穢した。<br />「灯里…」<br /> 途方に暮れた獣は、愛おしい女の前で崩れるように跪(ひざまず)く。<br />「ごめん、灯里…。僕は…」<br /> …本当にキミを、取り返しがつかないほど傷つけてしまった。<br /> 一筋の涙が、獣から人間へと、男の姿を変える。<br /> 後悔は、所詮、後悔でしかない。<br /> 残酷なほど後戻りできない現実に、柊は再び絞り出すような咆哮を上げた。<br /><br /><br /><br /> ひと気のない、ひんやりとした闇の中で、灯里は目を覚ました。<br /> 躰中が痛くて、重くて、怠い。<br /> でも、この感覚は確かに覚えがある。<br /> 嫌がる躰を叱咤し、灯里はふらふらとベッドから起き上がる。バスルームへ向かって、その灯りを点ける。目の前の鏡に、かつて見たことがある女の姿が映っていた。<br /> 躰中に凌辱の痕跡を残し、悲しみに歪む微笑み。<br /> そう、望んでいたのはこれなのだ。世界で一番愛おしい人からの罰。<br /> だけど、と灯里は思う。<br /> ごめんなさい、柊ちゃん。こんなことさせて。こんな穢れた私のために、あなたは最期の洗礼を与えてくれたのね。<br />許して、いいえ、永遠に許さないで。私を世界中の誰よりも、罪深い罪人として憎み続けて。<br /> お願い、柊ちゃん。お願い。<br /><br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> それから柊と灯里は、すれ違ってもお互いの眼を見ることができなくなった。<br />「おはよう」とか「お疲れさま」とか、短い会話は交わしても互いの間に流れる空気は冷たく沈んでいる。<br /> 幼なじみという名の他人同士は、お互いに自分自身が許せない。悔恨と苦悩と諦観と憐憫が綯い交ぜになった、湖の底に立ちすくんでいた。冷え切った心と心の距離は酷く遠く感じられ、それがただ背中合わせのゆえに視界に映らないことに気づかないほど、ふたりは等しく傷ついていた。<br /> そして季節は静かに秋らしく整い、物思いとため息がよく似合う長い夜が続くのだ。<br /><br />✵ ✵ ✵<br /><br /> 10月に入るとさすがに秋らしい日がふえ、その日も爽やかな秋晴れの朝だった。<br /> 通勤ラッシュの電車を降り、大学のある最寄り駅で降りると、由紀子は駅の売店のウインドウで自分の姿をそれとなく確認した。<br /> 肩まで無造作に伸ばしていた真っ黒なストレートヘアを、美容師に勧められるままに顔周りにレイヤーを入れたマッシュベースのミディアムボブにした。<br />洋服はいつも母親と行っていた高級ブランドショップではなく、表参道のファッションビルで購入したものだ。ショップの店員に「ちょっとだけイメージチェンジしたい」と伝えたら、少し大人可愛いワンピースとジャケットを勧められた。<br /> これまで好きだった大人しく少女趣味の洋服と違って、華やかな中にも落ち着きがある感じがして気に入った。そのほかにも勧められるままに、フェミニンなブラウスやスカート、着回しができるからと勧められたカーディガンなどを買った。 <br />これまではあまり履いたことがないパンツを試着したら、店員が褒めてくれたので思い切ってそれも購入した。細身のパンツをすっきりと着こなしていた灯里を思い出し、それに似合う薄手のニットも選んでもらった。<br /><br /> なんとなくウキウキした気分で大学までの道を歩いていた由紀子を、背の高い人が颯爽と追い越して行った。そして、通り過ぎる瞬間に「あれ?」と覗き込まれた。<br />「あ」<br /> 思わずそう言った由紀子に、朝から元気な星奈が言った。<br />「おはようございます!なんだかいつもと違うから、一瞬気づかなかった」<br />「おはようございます」<br /> と答えてから、由紀子はおずおずと星奈に訊ねた。<br />「あの…変ですか?」<br />「ううん、全然。なんか洗練されたね…って、失礼か」<br /> そうあっけらかんと笑う正直な星奈に、由紀子は悪い気がしなかった。<br />「いえ、嬉しいです」<br /> 俯いてそう言う由紀子に、星奈が言う。<br />「とっても似合ってる。イメチェンしたんだね?」<br /> そう言う星奈はジーンズに白いシャツと言う超シンプルな格好で、いつもは白衣をその上に着ているから気づかなかったけれどかなりボーイッシュだなと由紀子は思った。<br /><br /> 背が高く足が長いせいで歩くのも早い星奈に、早足になりながら由紀子は訊いた。<br />「今日は、早いんですね?」<br /> 職員と違って、どんなに早くても9時にはじまる1限に合わせてくる学生と、この時間に会うことはあまりない。<br />「うん、今日はちょっと昨日の実験のことで気になることがあったから」<br /> どこまでも気さくな星奈に、由紀子は思い切って訊いてみた。<br />「星奈さんて、野々村さんと仲がいいんですね」<br />「ああ、大学1年のとき同じクラスで、それ以来のつきあいだから」<br />「そうですか…長いんですね」<br /> つき合っているのかとは、由紀子はさすがに訊けない。そんな由紀子に、星奈は屈託のない笑顔でびっくりするような情報をもたらした。<br />「長いって言うなら、もっと長い人が身近にいるじゃない」<br />「もっと長い人?」<br />「うん。あなたと同じ教務課にいる北川さん、だっけ?彼女、柊の幼なじみだよ」</span><br /><br /><a href="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=315029478" target="_blank"><img src="http://www.alphapolis.co.jp/cont_access.php?citi_cont_id=315029478&size=88" width="88" height="31" border="0"></a><br /><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="http://novel.blogmura.com/img/originalimg/0000040770.jpg" width="142" height="47" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a><br />
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本物の…

本物の夏休み突入します。明日、あさってのご訪問等、できません。今年の夏も、水害災害多数で胸が痛みますね。暑さもまだまだ続きそうですし、皆様どうぞお気をつけて、ご自愛くださいませm(__)m「あ、暑くてのびちゃうのょ」... 本物の夏休み突入します。<br />明日、あさってのご訪問等、できません。<br /><br />今年の夏も、水害災害多数で胸が痛みますね。<br />暑さもまだまだ続きそうですし、<br />皆様どうぞお気をつけて、ご自愛くださいませm(__)m<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「あ、暑くてのびちゃうのょ」<br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/201310121546517be.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-61.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/201310121546517be.jpg" alt="びろ~ん" border="0" width="267" height="157" /></a><br />
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maoちゃんとの夏日記

え~。深夜に練乳みぞれいちごを食べて、朝から絶賛お腹壊し中のmikazukiです。お久しぶりです、生きてます(*´ω`*)「ちょっとぉ~。久しぶりの更新が、そんなピー話から始まっていいの?しかも、お腹壊してるくせに、なに、スイカ食べてんのよ」だって、スイカが好きなんです。前世、鈴虫だった気がするくらいスイカ好き。桃もいいなぁ(*´ω`*) 梨もしゃわしゃわしてて美味(●´ω`●)キミにも、この幸せ感をおすそわけっ♡... え~。<br />深夜に練乳みぞれいちごを食べて、<br />朝から絶賛お腹壊し中のmikazukiです。<br /><br />お久しぶりです、生きてます(*´ω`*)<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ちょっとぉ~。久しぶりの更新が、そんなピー話から始まっていいの?<br />しかも、お腹壊してるくせに、なに、スイカ食べてんのよ」<br /><br />だって、スイカが好きなんです。<br />前世、鈴虫だった気がするくらいスイカ好き。<br /><br />桃もいいなぁ(*´ω`*) 梨もしゃわしゃわしてて美味(●´ω`●)<br />キミにも、この幸せ感をおすそわけっ♡<br /><br /><span style="font-size:x-small;"><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/20140809114007d29.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-67.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/20140809114007d29.jpg" alt="梨" border="0" width="240" height="320" /></a><br /></span><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「って、ごらあ! 何すんのよ!!やめろっ」<br /><br />あらん、梨気分は嫌だった?ぢゃ、桃気分はいかが?<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/2014080911401818d.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-67.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/2014080911401818d.jpg" alt="桃" border="0" width="240" height="320" /></a><br />こっちはピンクで、乙女っ (^^♪<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ふん。動物虐待で訴えてやるっ」<br /><br />いやぁ~ん、虐待なんてしてないわぁん。<br />コスプレごっこよ、コスプレごっこ。<br /><br />み、みなさま。ホントです、虐待のつもりなど一切ございません。<br />信じてっ(;´Д`)<br /><br />本当はとっても仲良しなんです(*^^*)<br />maoちゃんたら、コンピュータいじってるといっつも傍に寄って来て<br />あたしの顔をぺろぺろ。<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「あほか。それはね、アンタが清水の舞台から飛び降りて<br />骨折しながら買った海外ブランドの化粧水と乳液を<br />アタシがていねぇ~いに舐めとってやってんのよ」<br /><br />え~っ(ノД`)・゜・。そうだったの?<br />どうりで効果がイマイチ実感できないと思ったわぁ~。<br /><br />で、でもさ。<br />毎朝早朝4時とか5時に甘えて、寝てるあたしの胸の上に<br />のってくるぢゃないのぉ。<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「けけ、それはね。悪い夢見るように<br />重しとプレッシャーかけてんのよ。<br />ついでに無い胸が、さらに無くなるように呪いもかけてる」<br /><br />が、が~ん。<br />胸減ったのは、痩せたわけじゃなかったのかっ (-""-)<br /><br />と、とにかく、仲良しよねっ、あたしたち。<br /><br /><a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/201408091140269d2.jpg/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-67.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/201408091140269d2.jpg" alt="あくび➀" border="0" width="236" height="239" /></a><br />「さぁねぇ~、ああ、眠い」<br /><br />あ、あくびの顔が何気に怖いよっ(>_<)<br /><br /><br />こんな感じで、取りあえず元気な一匹と一人です。<br />因みに「夏休み」と言っても、脳みそ休ませてるだけで、<br />ふつーにお仕事しております。<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「ふん。アンタの足りない脳みそが、そのまま永久休暇に<br />突入しないことを祈ってるわ」<br /><br />あ、あんがと。<br />実は、あたしも切に願っております。<br />そろそろ、次の章書かないとなぁ~(._.)<br /><br />ねぇ、maoちゃ。…コソコソ…<br />8月いっぱい夏休むって言ったら、みんな怒るかなぁ。。。<br /><br /><img src="http://blog-imgs-1.fc2.com/emoji/2009-03-17/369100.gif" alt="" border="0" style="border:0;" class="emoji">「まあ、吹けば飛ぶよなアンタの存在なんて、<br />120%忘れ去られるわね」<br /><br />えぇえええ~( ゚Д゚)<br />ど、どーしよ。。。。どうなる?<br /><br /><br />
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