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【R18限定記事について】
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12

17歳 其の十〈Air Mail〉  了

 大人の事情だって?  あの夜のことを、聡子の言葉を思い出すだけで、凌は異様な怒りが込み上げてくる。  そんな無責任な態度を大人の事情というなら、子供たちは傷つけられ放題じゃないか。アンタ等のしたことは、猫を公園に捨てるのと同じことだ。誰かいい人に拾ってもらうのよ、と言って。もう仔猫でもなくなった捨て猫を拾って育てるなんていう、そんな奇特な人間がどれだけいるというのだ。  あれから何度、杏胡の携帯に...  <span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">大人の事情だって? <br /> あの夜のことを、聡子の言葉を思い出すだけで、凌は異様な怒りが込み上げてくる。 <br /> そんな無責任な態度を大人の事情というなら、子供たちは傷つけられ放題じゃないか。アンタ等のしたことは、猫を公園に捨てるのと同じことだ。誰かいい人に拾ってもらうのよ、と言って。もう仔猫でもなくなった捨て猫を拾って育てるなんていう、そんな奇特な人間がどれだけいるというのだ。 <br /> あれから何度、杏胡の携帯に電話やメールをしたかしれない。 <br /> ある日、この番号は現在使われていませんと、無機質な声で告げられるまでは。 <br /> 夏菜との関係は変わらない。 <br /> いや、杏胡が突然いなくなった週末、凌は初めて夏菜と喧嘩をした。激しく感情を剥き出しにする夏菜を見るのも、初めてだった。 <br />「なんで、いなくなったあの子を探すの?探してどうするの?凌はあの子の保護者じゃないのよ。そんな責任なんて、初めからないじゃない」 <br />「じゃあ、このまま放っておけっていうのか?」 <br />「父親がいるじゃない」 <br />「海外だ」 <br />「海外にいたって父親は父親よ」 <br /> 埓が明かない言い争いは、一時間以上も続いただろうか。 <br />「凌は、凌は私のものなんだから」 <br /> 夏菜が泣きながら、澄ました仮面を脱いだ。 <br /> いま、凌は思う。 <br /> 父さん、父さんは一つだけ間違っていたようだよ。文句だって、正論だって、なんだって言わなきゃダメなんだよ。 <br />ベッドの中で本音を見せない女の喘ぎ声なんて、ウソっぱちだ。 <br /><br /> 本格的な盛夏がやってきた。 <br /> その夏の最高気温を記録した日、凌のもとに一通のエア・メールが届いた。イギリスからとわかる葉書には、こう書いてあった。 <br />〈先生。私、9月からこの街の高校に通うよ。 <br /> 一年生からやり直しだけどね。 <br /> 夏休みだけど、手続きに学校行ったら、 <br />校庭でダンスしてる子たちと友達になったんだ。〉 <br />住所は書かれていなかった。 <br /> でもそのどこかわからない街で、欧米人と思われる数人の子達に囲まれて、葉書の中の杏胡が笑っていた。体格のいい子達の間で、小柄な杏胡がいっそう幼く見える。 <br /> でもお前、18歳になったはずだよな。 <br /> 17歳だったお前は、もうこの世の中のどこにもいない。 <br /> なあ、杏胡。 <br /> 僕はいつか、もっと大人になったお前に逢えるだろうか。 <br /> 杏胡は、自分を通り過ぎていった瑞々しい季節だった、と凌は思った。 <br /><div style="text-align: center">〈了〉</div></span></span>
  • Date : 2013-06-29 (Sat)
  • Category : 17歳
11

17歳 其の九〈大人の事情〉

 叔母の聡子が訪ねてきた翌日、杏胡からメールが凌の携帯に送られてきた。 〈先生。迷惑かけてごめんね。私、クリニックやめます。いままでありがとうございました〉  ちょっと待て、と凌は思った。こんなメール一通でカタをつけようなんて、いくら杏胡でも、いくらバイトでも社会性がなさすぎる。 〈杏胡、ちゃんと話をしよう。金曜の夜、いつものようにウチへ来なさい〉  命令口調のメールに、せめてもの怒りを込めたつもりだ... <span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 叔母の聡子が訪ねてきた翌日、杏胡からメールが凌の携帯に送られてきた。 <br />〈先生。迷惑かけてごめんね。私、クリニックやめます。いままでありがとうございました〉 <br /> ちょっと待て、と凌は思った。こんなメール一通でカタをつけようなんて、いくら杏胡でも、いくらバイトでも社会性がなさすぎる。 <br />〈杏胡、ちゃんと話をしよう。金曜の夜、いつものようにウチへ来なさい〉 <br /> 命令口調のメールに、せめてもの怒りを込めたつもりだった。 <br /> しかし、心配の種は別のところにあった。聡子が結婚したい相手というのは、案の定、杏胡の担任である教師だったのだ。 <br />「不登校の相談に親身になってくださって。親でもないのに、そこまで姪を心配する貴女が、愛おしいと言ってくださって」 <br /> 聡子は一転、ただの女の顔になって、初対面である凌の前でそうノロけたのだ。 <br /> その教師が、杏胡にどんな行為をしたか、聡子は知らないようだった。知らないほうがいい、と凌は思った。いや、杏胡は母の愛人と言った。杏胡の話にも若干の矛盾がある。真相を暴きたいわけではない。ただ、杏胡が心配なだけだ、と凌は自分に言い訊かせた。 <br /> しかし。 <br /> 金曜の夜、0時を過ぎても杏胡は凌のマンションに現れなかった。携帯の電源も切ったままだ。 <br /> 失敗した、と凌は思った。杏胡の住所を履歴書で確認しておけばよかった。こうなったら、明日にでも杏胡の家を訪ねるしかない。 <br /> 叔母の聡子には、突然やめるという杏胡の真意を確かめに来たとでも言えばいい。 <br /> ああ、明日は土曜日だ。夏菜には少し遅れると、いや明日は都合が悪いと伝えよう。話が拗れるかもしれないから。 <br /><br /> 杏胡の家は、クリニックから6駅離れたところにあった。建売と思われる2階建の玄関に灯りがついているのを見て、凌はほっと安堵した。 <br /> 杏胡に会えることを疑わず、凌はインターホンを押した。 <br />「どなた?」 <br /> と出てきたのは、40代後半と思われる男だった。安っぽいスウェットの上下姿が、凌の神経を逆撫でする。 <br />「一ノ瀬と言います。杏胡さんの働くクリニックの…」 <br /> 男の顔が、いきなり愛想良くなり、凌は胸の奥がムカムカした。 <br />「や、これは。先生でしたか。おーい、聡子」 <br /> すっかり夫婦気取りである。 <br /> 聡子がエプロンで手を拭きながら出てくる。所帯じみた様子が、腹立たしいほどよく似合う。 <br />「あら、先生。どうなさったんですか?」 <br /> どうなさったはないだろう。 <br />「杏胡さんから、突然、クリニックをやめるという旨のメールをもらったものですから」 <br /> 凌は憮然とした表情で答えた。 <br />「あ、そうですか」 <br /> なぜ、驚きもしないんだ。 <br />「あのう。杏胡はもう、此処にはいないんですけど」 <br /> あっさりと告げられた言葉に、凌の方が驚くばかりだった。 <br />「いない?いないって、どういうことですか?」 <br /> 杏胡は、突然出て行ったのだという。友達か誰かの家にしばらく泊まるから、この家は叔母さんが自由に使っていいよ、と言って。 <br />「そ、それで、探しもしないんですか?」 <br /> 非難めいた凌の言葉に、聡子は迷惑そうに答えた。 <br />「私たちにだって、大人の事情というものがあるんです」 <br /></span></span>
  • Date : 2013-06-11 (Tue)
  • Category : 17歳
10

17歳 其の八〈梅雨の晴れ間の訪問者〉

 杏胡が、再び発熱で休んでいる。ズル休みとは思わないが、心身は決して強くないと思う。  もうすぐ診療が終わる頃になって、16時にあがった木下に替わってその日受付にいた結衣がやってきた。 「先生、お客様です」  お客様?患者ではなく? 「どなた?」 「杏胡さんの保護者だそうです」  驚いて、凌は受付の方を見た。  受付の小窓の先で、軽く会釈する細身で真面目そうな30代位の女性が見えた。母親だろうか?それにして... <span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: small"> </span><span style="font-size: medium">杏胡が、再び発熱で休んでいる。ズル休みとは思わないが、心身は決して強くないと思う。 <br /> もうすぐ診療が終わる頃になって、16時にあがった木下に替わってその日受付にいた結衣がやってきた。 <br />「先生、お客様です」 <br /> お客様?患者ではなく? <br />「どなた?」 <br />「杏胡さんの保護者だそうです」 <br /> 驚いて、凌は受付の方を見た。 <br /> 受付の小窓の先で、軽く会釈する細身で真面目そうな30代位の女性が見えた。母親だろうか?それにしては少し若すぎるような…。 <br />「もうすぐ診療が終わるから、待合室で待っていてもらって」 <br />「はい」 <br /> 結衣はそういって受付の方へ戻っていった。 <br /> 何の目的だろう。 <br /> 凌の心臓は、当然の不安に苛まれ、鼓動を速めた。 <br />  <br />「突然すみません。杏胡がお世話になっているのに、これまでご挨拶にも伺わないで」 <br />待合室で待っていた女性はそう言って、深々と頭を下げた。 <br />「あ、いや。杏胡さんの体調はいかがですか?今日は、発熱でお休みということだったけれど」 <br />「はい。大したことはありません。ただ母親に似て、少し躰が弱いものですから」 <br /> 母親に似て?では、この人は誰だ。 <br />「あの、失礼ですが」 <br />「はい?」 <br />「杏胡さんのお母さんでは?」 <br /> 目の前の女性の顔が、赤くなった。 <br />「私、杏胡の亡くなった母親の妹です。つまり叔母です」 <br />「し、失礼しました。いや、杏胡さんのお母様にしてはお若いな、と思ったんですが」 <br /> 慌てて言い繕う凌に、杏胡の叔母だという女性はさらに居心地悪そうにしている。 <br />「あの。待合室で立ち話もなんですから、どこかでお茶でも」 <br />「ご迷惑ではありませんか?」 <br />「いえ。杏胡さんのことを、何も知らずに雇っているのもなんですから」 <br /> そう言ってから、何も知らないというのは語弊があるな、と凌は心の中で苦笑いした。 <br /> 杏胡の叔母は、原田聡子と言った。35歳、凌と一つ違いでまだ独身だった。 <br /> クリニック近くのコーヒーショップで、簡単な自己紹介をした後、凌は言った。 <br />「サンドイッチでも頼みますか?お腹、すいてないですか?」 <br />「大丈夫です。でももうすぐ8時ですから、先生は何か召し上がってください」 <br />「いや。僕は大丈夫です」 <br /> ウエイトレスに、二人分のコーヒーを注文した。沈黙が流れた。 <br />「ええと」 <br /> 凌が思い切って口火を切った。 <br />「今日は、何かお話があっていらしたんじゃ?」 <br />「はぁ」 <br /> コーヒーが運ばれてきた。 <br />「何から話したらいいか…」 <br />「今日、原田さんが訪ねていらしてることは、杏胡さんはご存知なんですか?」 <br /> 遠まわしに、凌は探りを入れた。 <br />「杏胡は、杏胡は、私じゃダメなんです」 <br /> 突然、聡子はそう言った。 <br />「ダメ?ダメってどういうことですか?」 <br />「あの子、変わってるんです。そこはもう、父親そっくりで」 <br /> ますます、この家族の関係性がわからない。 <br />「あの。杏胡さんと、杏胡さんのお父様と、原田さんは、いま現在どういうご関係でいるのですか?」 <br /> 聡子が、きょとんとした顔つきになった。 <br />「先生は、杏胡から何も訊いてらっしゃらないんですか?」 <br /> 要領の悪い話しぶりに、さすがの凌も苛立ちを覚えた。 <br /> 聡子の話をまとめるとこうだ。 <br /> 杏胡の母親は、彼女が高校に入学してすぐに病死した。杏胡の父親は母親の葬儀が済むとほどなくして、海外へ転勤になった。高校へ入学したばかりの杏胡をいきなり海外に連れて行くのも、男手独りで育てるのにも無理があったので、取りあえず都内で働く聡子が面倒を見ることに落ち着いた。杏胡の父親も母親も地方都市の出身だったし、身近で適役は彼女だけだったということらしい。また聡子にすれば、家賃の高い東京で、家賃のいらない姉の一軒家に住み、生活費は杏胡の父親持ちというのは願ってもない条件だった。杏胡が、不登校になるまでは。 <br /> そこまで話を整理して、凌は注意深く確認をしてみた。 <br />「杏胡さんの不登校の原因というのは…」 <br />「よくある虐めです」 <br /> 予想に反して、聡子はさらりと答えた。 <br />「教師による、ですか?」 <br />「え?同級生による虐めだと聞いていますけど」 <br /> 聡子が怪訝そうにそう答える。 <br /> 杏胡は、嘘をついていたのだろうか。いや、杏胡の話を自分が勝手に誤解したのだろうか。 <br />「それで。僕に何をしろと?」 <br /> 凌は単刀直入に切り込んでみた。 <br /> 聡子の顔が、今度は青ざめる。忙しい人だ、と思った。 <br />「私、結婚したい人がいるんです」 <br /></span></span>
  • Date : 2013-06-10 (Mon)
  • Category : 17歳
9

17歳 其の七〈捉えどころのない好き〉

「先生は、夏菜さんと結婚しないの?」  杏胡のほうは相変わらず、ベッドの中であろうとなかろうとお構いなしに訊きたいこと訊き、言いたいことを言ってくる。  まだ子供なのだと思えば、それまでなのだが、その根底に嫉妬の感情は見えない。 「20代30代は、仕事が面白い時期なんだ。夏菜くらい仕事ができれば、女だってそうだろう」 「ふぅん」  つまらなそうに、杏胡が伸びをする。まるで陽だまりの猫だ。 「先生はどうなの?... <span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「先生は、夏菜さんと結婚しないの?」 <br /> 杏胡のほうは相変わらず、ベッドの中であろうとなかろうとお構いなしに訊きたいこと訊き、言いたいことを言ってくる。 <br /> まだ子供なのだと思えば、それまでなのだが、その根底に嫉妬の感情は見えない。 <br />「20代30代は、仕事が面白い時期なんだ。夏菜くらい仕事ができれば、女だってそうだろう」 <br />「ふぅん」 <br /> つまらなそうに、杏胡が伸びをする。まるで陽だまりの猫だ。 <br />「先生はどうなの?仕事、面白い?」 <br />「え」 <br /> ちょっと面食らった。僕は…と考えて、思わず正直に答えてしまった。 <br />「僕は、与えられたものを受け入れるタイプなんだ。そうやって生きてきたから」 <br /> なんだか聞いたことのあるフレーズだ。 <br />「それより、杏胡はどうなんだ。このまま高校へ行かないつもりか?」 <br />「それ、つまんないよ」 <br />「え?」 <br />「つまんない大人が訊くような質問しないで」 <br />「いや、でも。夢くらいあるだろ?」 <br />「夏菜さんみたいにバリバリ仕事して、先生みたいなお医者さんの彼氏見つけて、とか?」 <br />「夏菜のことはいいよ」 <br />「どうして?罪悪感?」 <br />「揶揄ってんのか?」 <br />「だって」 <br />「なんだよ」 <br /> ぷいと、そっぽを向いてしまう。かといって機嫌が悪いわけでもない。いや、むしろ機嫌がいいほうだ、今日の杏胡は。 <br />「夢って絶対、持たなきゃいけない?」 <br />「いや、絶対ってことは…」 <br />「将来って言葉より、刹那って言葉の方が好き」 <br />「なんで」 <br />「なんか、ヒリヒリした感じがするから」 <br /> 17歳の頃の自分は、何を考えていただろうと凌は思った。多少なりとも将来のことを考え勉学に励んでいたはずだが、よく思い出せない。しかし得体の知れない不安は、17歳のクラスメートの誰もが抱えていたような気はする。17歳は、そういう季節なのだ。 <br />「杏胡、なんで僕なんだ?初めて会ったとき、おじさんって言ったじゃないか」 <br /> ずっと訊きたかったことを凌は口にした。 <br />「はずみ?」 <br />「はずみ?」 <br />「だってあの夜、雨が降ったのも、先生に帰り道で会ったのも、お腹がすいていたのも、先生が料理上手だったのも、オムライスが好物だったのも、なんだか全部偶然な気がする」 <br /> わからない。 <br />「でも、先生のことは好きだよ」 <br /> どんな風に?男としてか?それとも足長おじさんみたいなものなのか、僕は。 <br /> 杏胡との捉えどころのない時間が、こうして膿んでいく。それを嫌いではない、と凌は思った。 <br /></span></span>
  • Date : 2013-06-09 (Sun)
  • Category : 17歳
8

17歳 其の六〈理想の彼女〉

 あの雨の夜以来、決まって金曜の夜は、杏胡が凌の手料理を食べに来るようになった。  杏胡とのセックスは、傷の癒し合いだと思う。繋がっている時間より、舐め合い、抱き合っている時間が長い。  夏菜とのそれは、快楽の追求だと思う。夏菜が達する瞬間の、眉根を寄せた顔が好きだ。喘ぎ声をあげる口を手で封じ、それでも漏れ聞こえることに征服欲が満たされる。キャリアという鎧を着た夏菜は、裸になると意外にも支配を好むタ... <span style="font-size: medium"> <span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">あの雨の夜以来、決まって金曜の夜は、杏胡が凌の手料理を食べに来るようになった。 <br /> 杏胡とのセックスは、傷の癒し合いだと思う。繋がっている時間より、舐め合い、抱き合っている時間が長い。 <br /> 夏菜とのそれは、快楽の追求だと思う。夏菜が達する瞬間の、眉根を寄せた顔が好きだ。喘ぎ声をあげる口を手で封じ、それでも漏れ聞こえることに征服欲が満たされる。キャリアという鎧を着た夏菜は、裸になると意外にも支配を好むタイプだった。 <br /> 土曜日、診療を終えると凌はいつものように夏菜のマンションへ向かった。 <br /> 凌とつき合うようになって、夏菜は自分の仕事先からも、クリニックからもアクセスのいい場所にマンションを借りた。夏菜の実家は横浜にあり、父親は一部上場企業の取締役だ。母親は音楽大出で、いまも自宅でピアノ教室を営んでいる。夏菜は幼い頃から育ちも頭も良く、大学卒業後は父のコネに頼ることなく、中堅外資系企業に就職した。つまり自立心も持ち合わせた、お嬢様ということだ。大学時代は準ミスキャンパスに選ばれたこともある才媛で、杏胡でなくとも理想的な彼女と誰もが言うだろう。 <br /> 理想的?理想的すぎるさ。 <br />そういう夏菜がなぜ、たかだか地方都市の名士の愛人の子である自分を選んだのか、凌にはさっぱりわからない。男として容姿はいたって人並みの域を超えてはいないし、将来のパートナーとしてのブランド力から言っても、ほかにもっと最適な男を見つけられるだろう。 <br />いつものように堂々巡りする思いを抱えたまま、凌は瀟洒な夏菜のマンションのインターホンを押した。 <br />「おかえりなさ~い」 <br />エプロン姿の夏菜が、まるで新妻のように抱きついてくる。そんな行動も不可思議だ。女というのは勘がいい生き物だ。自分と杏胡の関係に変化が生じたことを、夏菜が気づかないはずがない。 <br />それなのに、なぜいつも通り、いやいつも以上に迎え入れてくれるのだ。 <br />「今日はね。白身魚のアクアパッツァにしたの。サラダはトマトとモツレラのカプレーゼ。ブルスケッタは、きのこのマリネと生ハムの2種類にしたんだけど、いいかしら?」 <br />「うん。おいしそうだね。白ワインを買ってきたよ」 <br />「ありがとう」 <br />白ワインは、赤と違って程よく冷やしたほうが旨い。 <br />「ワインクーラーはどこだっけ?」 <br />「その棚の一番下」 <br />陶製のワインクーラーを見つけて、凌は冷凍室から氷を出し、それに入れた。買ってきた白ワインをがしゃりと突っ込む。 <br />それからキッチンに立つ夏菜の後ろに立った。 <br />「手伝うよ」 <br />「あん。大丈夫。音楽でも聴いていて。シャワーを浴びてきてもいいわ」 <br />1年半のつき合いが過ぎても、夏菜は凌が料理好きだということを知らない。自分が愛人の子であることも。杏胡とのことは気づいているはずなのに、と思いながら凌はシャワーを浴びにバスルームへ行った。 <br />その夜、ベッドの中でも夏菜は、何も聞かなかった。 <br /> 「ベッドの中では文句や正論を言う女より、快楽の喘ぎ声をあげる女のほうが上等だ」 <br />豪一郎の言葉をまた思い出しながら、悲しいくらい理想の彼女だと凌は思った。 <br />母はどうなのだろう。不謹慎にもそんなことを思った。 <br /></span></span>
  • Date : 2013-06-08 (Sat)
  • Category : 17歳
7

17歳 其の五〈傷を舐めあう猫たち〉

「おかしい」  凌特製のオムライスを食べながら、杏胡が笑う。 「おかしい?おいしいの間違いだろ」  銀のスプーンを半分咥えたまま、くすくすくすと杏胡はさらに笑う。 「だって」 「なんだよ」  テーブルに行儀悪く肘をついて、杏胡は凌を覗き込む。 「サラダまでついてる」 「嫌いか?野菜」 「そうじゃなくて」 「だから、なんだよ」 「ベビーリーフにパプリカ、生ハム、クルトン。こんなサラダ、男の人、普通つくんないで... <span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「おかしい」 <br /> 凌特製のオムライスを食べながら、杏胡が笑う。 <br />「おかしい?おいしいの間違いだろ」 <br /> 銀のスプーンを半分咥えたまま、くすくすくすと杏胡はさらに笑う。 <br />「だって」 <br />「なんだよ」 <br /> テーブルに行儀悪く肘をついて、杏胡は凌を覗き込む。 <br />「サラダまでついてる」 <br />「嫌いか?野菜」 <br />「そうじゃなくて」 <br />「だから、なんだよ」 <br />「ベビーリーフにパプリカ、生ハム、クルトン。こんなサラダ、男の人、普通つくんないでしょ」 <br />「そうか?」 <br />「そうだよ。オムライスだってお店みたいにおいしい」 <br /> そう言う杏胡の顔を見ながら、凌は不思議だな、と思う。 <br /> 17歳になったばかりの杏胡と今年34歳になる僕は、17も年が離れている。つまり僕は、杏胡の倍も生きていることになる。 <br /> しかし経験上、親しくなればなるほど女というのは年齢差を越えてくる。やがて女のほうが、年上みたいな口をきき出す。杏胡もやがて、そうなるのだろうか。 <br />「先生は、夏菜さんにも料理をつくってあげるの?」 <br /> 夏菜が僕の恋人だということは、院内周知の事実だ。仕事柄、海外出張へも行く夏菜は、土産を持ってクリニックを訪ねてくることもある。 <br />「そう言えば、一度もないな。ああ見えて、夏菜は料理が上手いんだ。」 <br />「へぇ。仕事もできて、料理も上手くて、美人でお金持ち。パーフェクトな彼女だね」 <br /> 生意気な言い方をする杏胡を、凌は揶揄ってやりたくなった。 <br />「杏胡は、彼氏のために料理つくったことあるのか?」 <br />「彼氏なんて、いたことないもの」 <br />「なんだよ。17にもなって、ボーイフレンドの一人もいないのか?」 <br /> 杏胡の顔が、急に淋しそうになった。凌は慌てて、言葉を繋いだ。 <br />「これから、いくらでもカッコいい彼氏ができるよ」 <br /> 杏胡が、ふいに挑戦的な眼差しになる。その心理を読み損ねて、凌は不安になる。 <br />「でも。先生、あたし処女じゃないよ」 <br />「え?」 <br /> 杏胡はベビーリーフの入ったサラダボールに、フォークを突き立てた。 <br />「こんな風に。強引に。生徒指導室で」 <br /> それだけで、十分すぎるほど、凌は理解した。杏胡の自傷行為、帰りたくない理由、不登校の訳。 <br />「あはははは。ホントおかしい」 <br /> 杏胡、笑わなくていい。笑わなくていいから。 <br />「杏胡。僕はさ、認知された子供なんだ」 <br /> 杏胡の泣き顔みたいな笑い顔が、中途半端に止まって歪んだ。 <br />「僕の母は34年以上、僕の父である人の愛人なんだ」 <br /> 凌は、自分が狡いと感じていた。でもそれ以外に、杏胡の傷口を舐めてやる方法が見つからない。 <br /> 杏胡が、突き刺し続けていたフォークをぽとりと置いた。凌の方へ、その手を伸ばしてくる。やがて、中指と人差し指が凌の胸に触れる。 <br />「ここ、痛い?」 <br />「痛い、かな?」 <br />「じゃあ、舐めてあげる。先生も舐めて」 <br /> ケモノになった2匹の魂は、初めて互いの傷を見せ合い、癒そうと舐めはじめた。 <br /> その日、気象庁が梅雨入り宣言をしたことを、ふたりは裸で抱き合ったまま、深夜のニュースで聞いた。 <br /></span></span>
  • Date : 2013-06-07 (Fri)
  • Category : 17歳
6

17歳 其の四〈背中を押す雨〉

「もう梅雨入りしたんでしょうか?」 桜井結衣が、使用済み器具を乗せたステンレストレイを片付けながら訊く。2日続きの雨は、新規患者数を少なくしていた。「少し早いけど、今日はもういいよ」 凌はそう言って、助手の結衣と茜、受付の杏胡に片付けを言い渡した。「気をつけて帰るように」 と3人を送り出すと、凌は休憩室の冷蔵庫から缶ビールを出した。今日は少し疲れた。雨音をBGMに、ちょっと飲んでから帰ろう。自炊が決... <p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「もう梅雨入りしたんでしょうか?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 桜井結衣が、使用済み器具を乗せたステンレストレイを片付けながら訊く。<span lang="EN-US">2</span>日続きの雨は、新規患者数を少なくしていた。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「少し早いけど、今日はもういいよ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 凌はそう言って、助手の結衣と茜、受付の杏胡に片付けを言い渡した。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「気をつけて帰るように」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> と<span lang="EN-US">3</span>人を送り出すと、凌は休憩室の冷蔵庫から缶ビールを出した。今日は少し疲れた。雨音をBGMに、ちょっと飲んでから帰ろう。自炊が決して負担ではない凌だったが、今日は久しぶりに外食しようと決めた。さて、何を食べようか。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> クリニックの入口の鍵をかけ、3階から階段で降りる。エレベータはあるが、凌はいつもそれを使わない。<span lang="EN-US">12</span>階まであるビルのエレベータは、往々にして待っているより階段の方が早いのだ。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 傘をさして通りに出る。駅に続く大通りへ曲がったところで、凌は数メートル先をふらふら歩いている杏胡を見つけた。凌より<span lang="EN-US">30</span>分以上も前に帰ったはずだ。何をしてるんだ、アイツは。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 小走りに近づいて、「杏胡」と声をかける。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> ちょっと驚いた顔が振り返った。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「先生」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 何度、先生と呼ばなくていいといっても、杏胡はそう呼ぶ。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「だって、みんなそう呼んでるし。一人だけ先生って呼ばないのは、かえって変でしょ?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「院長でいいよ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「一人しかいないのに?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> そう言われてしまうと、あえてスタッフみんなに「院長」と呼べとは凌の性格からして言えない。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「大丈夫なのか?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「何が?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 杏胡は笑って言った。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「訊かないんだね、先生は」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「杏胡が話したいなら、訊くよ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「別に」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> それに関する会話は大概、そんな感じで途切れてしまう。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 雨足が急に強くなった。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「随分、先に帰ったはずだろ。何してたんだ?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 傘をさした杏胡を、大通り沿いの店の軒下に引き入れながら、凌は訊いた。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「お腹すいちゃって」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「どこか寄ってたのか?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「寄ろうと思ったんだけど、お金がなくて」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「ウチのバイト代は、そんなに安いのか?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 杏胡がぺろ、と舌を出す。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「ごめんなさい、ウソ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「じゃあ、どうしたんだ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「金曜日だから」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「うん?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「たぶん、家にはあの人が来てる」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「あの人?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「うん。先生」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「先生?誰の?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「あたしの担任で、お母さんの愛人」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"> 愛人という言葉に、凌はまじまじと杏胡を見た。背のだいぶ高い凌を見上げる杏胡は、あの公園に棲む捨て猫のようだ。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「杏胡、オムライスは好きか?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「え?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「僕、得意なんだ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p>
  • Date : 2013-06-06 (Thu)
  • Category : 17歳
5

17歳 其の三〈言葉による自傷行為〉

 かさり。 紙袋を開ける音に反応したのは、3匹の猫たちの方だった。この公園の猫たちは比較的、人に慣れている。おそらく生来の野良猫ではなく、捨て猫なのだろう。食べ物を持っている人間には、遠巻きに様子を伺いながらもやがて近づいてくる。「おじさん、何かくれない?」 ぶっきらぼうにそう言ったのは、もちろん猫たちではない。おじさん?凌は心の中で苦笑した。そうか、僕はこの年代の女の子から見れば、もうおじさんな... <p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> かさり。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 紙袋を開ける音に反応したのは、3匹の猫たちの方だった。この公園の猫たちは比較的、人に慣れている。おそらく生来の野良猫ではなく、捨て猫なのだろう。食べ物を持っている人間には、遠巻きに様子を伺いながらもやがて近づいてくる。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「おじさん、何かくれない?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> ぶっきらぼうにそう言ったのは、もちろん猫たちではない。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; mso-char-indent-count: 1.0"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">おじさん?</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; mso-char-indent-count: 1.0"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">凌は心の中で苦笑した。そうか、僕はこの年代の女の子から見れば、もうおじさんなのか。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「君が、何かあげればいいだろ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 凌は、視線で売店の方を指した。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「お金持ってないの、今日は」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> そう答える女の子の足元を、凌は無遠慮に見た。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「そうだ。靴も履いてなかったんだ。今日は」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「いつもは、履いてるの?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「当たり前じゃない」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 女の子が近づいてくる。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 凌はポケットに手を入れ、小銭を探した。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「いつもは、猫たちは何を好んで食べるの?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 女の子が笑った。幼さが増す笑顔だった。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「好みなんか、わかんないよ。もらったものを食べるだけ。だってこの仔たち、そうやって生きてきたんだもの」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 凌の心の中で、何かがざわりと動いた。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「そうか。好むと好まざるに関わらず、そうやって生きてきたのか」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 凌は、女の子の方に小銭を乗せた手を差し出した。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「君の好きなものを、買ってあげるといい」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 広げた凌の手から、女の子は<span lang="EN-US">100</span>円玉を数個拾った。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「ありがと」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 靴を履かない足のまま売店に駆け出した女の子は、袋菓子を買って戻ってきた。そして再び、凌の傍に来ると右手を差し出した。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「これ、お釣り」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「いいよ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「よくない」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 凌は、黙って返されたお金を受け取った。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 女の子は菓子の袋を開けると、すぐに猫たちに囲まれた。猫たちには菓子を与えるのに、自分は一口も食べようとしないその姿を眺めていた凌は、思わずこう声をかけた。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「ねえ。君はお腹すいてないの?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> もう、正午はかなり回っている。女の子が照れたように笑う。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「あ、忘れてた」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「パン、食べる?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 思わず、凌はそう訊ねていた。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 再び売店に行って買ってきたお茶を飲みながら、彼女は凌が差し出したバケットサンドを頬張っている。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「おいしい。これ、おじさんがつくったの?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「君、高校生?名前は?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「うん。杏胡」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「おじさんは、一ノ瀬って言うんだ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「そう。何してる人?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「歯医者さん」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 大きな口を開けてバゲットに噛みついていた杏胡の動きが、一瞬止まった。やがて、もぐもぐもぐと口の中のバゲットとクリームチーズを食道へ押しやったようだ。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「そう。おじさんも先生なんだ」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; mso-char-indent-count: 1.0"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">も?</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; mso-char-indent-count: 1.0"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">そのたった一文字に込められた意味を訊ねようとして、凌は息を飲んだ。杏胡の瞳が漆黒の闇のように、暗く沈んだからだ。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; mso-char-indent-count: 1.0"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">あはははは。突然、杏胡が笑い出した。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「先生、せんせい、センセイ。この世の中に、先生って呼ばれる人はどれくらいいるんだろう。ねぇ、先生。先生っていう職業の人は、センセイって呼ばれるの嬉しい?」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「先生は職業じゃない、少なくとも僕の場合は」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 注意深く、杏胡の目の奥を伺いながら、凌はそう答えた。なのに杏胡は、靴を履いていない足のままベンチから立ち上がり、踊るようにくるくる廻る。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium">「センセイ、センセイ、センセイ。あはははは」</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 足、痛いだろ?</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> そう訊こうとして、凌はやめた。痛いのは、足ではないだろう。いま杏胡の心が血を流している。それがどれほどの傷なのか、まだわからない。しかし、これだけは確実な気がした。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p><p class="MsoNormal" align="left" style="text-align: left; margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 「センセイ」は杏胡の言葉による自傷行為なのだ。</span></span><span style="font-family: AR丸ゴシック体M"><font size="3"><span lang="EN-US"><o:p></o:p></span></font></span></p>
  • Date : 2013-06-05 (Wed)
  • Category : 17歳
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17歳 其のニ〈雨上がりの猫〉

 鉢植えのベンジャミンの葉に、スプレーで水をかけながら桜井結衣が明るい笑顔で振り向いた。 「院長、あ、先生、おはようございます」  岸田院長の2週間後の〈栄転〉は、すでにスタッフ全員の知るところだ。クリニック内の雰囲気が、以前と比べてはっきりわかるほど明るい。  凌の机がある休憩室を兼ねた6畳ほどの部屋に入ると早速、松下茜が淹れたてのコーヒーを持ってきた。 「近頃、サービスがいいね」  そう言う凌に、茜... <span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: medium"> 鉢植えのベンジャミンの葉に、スプレーで水をかけながら桜井結衣が明るい笑顔で振り向いた。 <br />「院長、あ、先生、おはようございます」 <br /> 岸田院長の2週間後の〈栄転〉は、すでにスタッフ全員の知るところだ。クリニック内の雰囲気が、以前と比べてはっきりわかるほど明るい。 <br /> 凌の机がある休憩室を兼ねた6畳ほどの部屋に入ると早速、松下茜が淹れたてのコーヒーを持ってきた。 <br />「近頃、サービスがいいね」 <br /> そう言う凌に、茜も曇のない笑顔を返す。 <br />「あ、そうだ、先生。朝一番で、水上さんから電話がありましたよ」 <br />「え?そう」 <br /> 飲もうとしたコーヒーのカップを中途半端な空中で留めながら、凌は茜を見上げた。 <br />「昨日の夜から、熱が下がらないそうです。今日はお休みをいただきたいって」 <br />「風邪でも引いたのかな?」 <br />「で、しょうね」 <br /> 茜は発熱の原因を正したりしなかったらしい。まあ、大概の場合、風邪に相違はないだろうから。 <br /> 今日は、午後になっても杏胡の顔を見ることはできない。そう思うと、よく晴れた初夏の一日の始まりが、徐ろに無意味に感じられた。 <br /> 梅雨の季節を目前にした、ひとときの初々しい夏が凌は好きだ。雨上がりの公園で、ちょうど一年前、杏胡を拾ったのもこの季節ならではの悪戯だったに違いない。そうでなければ、捨て猫のように心細げな女子高生に関わることなど、凌の人生設計にはなかったことなのだ。 <br /> いや、もともと人生設計などありはしなかった。愛人である母によってもたらされた、おそらく他人の目から見れば恵まれた境遇に、ずっと居心地の悪さを感じながら生きてきた。借り物のような所在無さが、杏胡という魂と共鳴し合った理由なのだと思う。 <br /><br /> 快晴が続いたせいで、恵みの雨となった木曜日。その日、クリニックは定休日だった。 <br /> おそらく夜中から降り続いた雨が、昼前にあがった。凌は、ハーフサイズのバゲットの真ん中に切れ目を入れ、そこにバターを塗りつけるとオーブントースターに放り込んだ。冷蔵庫からパンチェッタとちりめんレタス、クリームチーズを取り出す。バゲットが焼きあがるのを待ちながら、ニンニクの皮を剥き、包丁で真ん中から斜めに切る。焼き上がったバゲットに、このニンニクの断面を擦りつけるのだ。 <br />粗熱をとったバゲットを2つに切り、それぞれちりめんレタスを挟む。そして一方にはパンチェッタ、もう一方にはクリームチーズを挟んで出来上がりだ。 <br /> 飲み物は公園の自販機で、冷えたやつを買おう。そう決めると、凌は紙袋に無造作に入れたバゲットサンドを持って、自転車にまたがった。 <br /> 路面はまだ濡れているが、構やしない。公園につくのが早いか、初夏の陽射しが路を乾かすのが早いか競争だ。子供じみたそんな思いつきすら、凌の気持ちを浮き立たせた。 <br /> 公園のベンチは、すっかり乾いていた。自転車を傍らに置き、ベンチに座ると、途中で買った500mlのスポーツドリンクのキャップを開けた。軽く汗ばんだ躰の細胞に、少し塩気のある液体が染み渡っていく。 <br />「ふぅ~」 <br /> と思わず声を上げて(これじゃ、まるでオヤジだな)と独り照れた凌は周りを伺った。 <br /> その視線の先に、髪の長い女の子が後ろ向きでしゃがみこんでいた。白いシャツにグリーンのチェックのスカートは、おそらく制服だろう。公園を棲処とする猫たちと遊ぶその後ろ姿に、凌はなにか違和感を覚えた。違和感の理由はすぐにわかった。その女の子は、紺色のハイソックスは履いていたが、靴を履いていなかったのである。 <br /><br /></span></span>
  • Date : 2013-06-04 (Tue)
  • Category : 17歳
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17歳 其の一〈不協和音〉

「なんで、あんな子供が凌のクリニックで働いているの?」  小川夏菜は、終わったあとの気怠さを全身から漂わせながら訊ねた。 「高校生でしょ?」 「不登校児だよ」  一ノ瀬凌は、幼さの中に暗く妖しい光をたたえた杏胡(あこ)の双眸を思い浮かべながら答えた。 「ああ見えて17歳なんだ」 「へぇ」  夏菜の「へぇ」から読み取れたのは、杏胡の実年齢への関心よりも、軽い苛立ちだった。 「それより」  凌は、裸のまま乱れた... <span style="font-size: medium"><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3">「なんで、あんな子供が凌のクリニックで働いているの?」 <br /> 小川夏菜は、終わったあとの気怠さを全身から漂わせながら訊ねた。 <br />「高校生でしょ?」 <br />「不登校児だよ」 <br /> 一ノ瀬凌は、幼さの中に暗く妖しい光をたたえた杏胡(あこ)の双眸を思い浮かべながら答えた。 <br />「ああ見えて17歳なんだ」 <br />「へぇ」 <br /> 夏菜の「へぇ」から読み取れたのは、杏胡の実年齢への関心よりも、軽い苛立ちだった。 <br />「それより」 <br /> 凌は、裸のまま乱れたベッドの上で仰向けになっている夏菜の28歳の肉体から毛布を剥ぎ取った。 <br />「ん~ん」 <br /> 夏菜の表情が、早くも受け入れ態勢になっている。 <br /> 『松園デンタルクリニック』のピンク色のユニフォームがまるでコスプレのように見える杏胡の姿を思い浮かべながら、凌は夏菜の首筋に再び舌を這わせた。 <br /><br />「ベッドの中では文句や正論を言う女より、快楽の喘ぎ声をあげる女のほうが上等だ」 <br /> と言ったのは、『松園デンタルクリニック』の実質オーナーである松園豪一郎だ。凌を認知した実の父であり、母の幸枝は豪一郎の永きに亘る愛人だった。九州で名士として知られる豪一郎の存在がなくては、凌は東京の私大の歯学部に通い、歯科医の資格を取ることなどできはしなかった。ましてや32歳という若さで、都内にクリニックを開業することなど夢のまた夢だったろう。 <br /> 『松園デンタルクリニック』は開業2年目、当初は岸田翠という40代後半の女医が院長として迎え入れられた。キャリアと技術は十分であったが、要領の悪い歯科助手に手厳しいという難点があった。そのために現代っ娘である助手たちの入れ替わりが激しく、唯一、一年以上続いているのがキャリア6年という松下茜だった。この茜と、3ヶ月前に入った桜井結衣が歯科助手。 <br />受付は二人の子供の母である木下容子、その木下が早めに上がる午後の補助要員として採用されたのが、水上杏胡であった。 <br />この杏胡に対する岸田の虐めとも思える態度が、事勿れ主義の凌をして、クリニックにおける鬱屈した不協和音をオーナーである豪一郎に遂に報告させる要因となった。 <br />「遅すぎるくらいだ」 <br /> そう豪一郎は言った。 <br />「でも」 <br /> 凌は言い淀んだ。 <br />「お前が気にしているのは、岸田院長の処遇か」 <br /> その通りだった。恩師である岸田教授の手前、波風は当然避けたかった。 <br />「岸田翠には、VIP連中の奥方が主な顧客に名を連ねているクリニックを紹介するつもりだ」 <br /> 豪一郎は愉快そうに続けた。 <br />「彼女の自尊心はそれで満足するはずだ。が、しかし。そこに通う奥様連中は、岸田翠など比較にならないほどのプライドの塊だ。まあ、結果は数ヵ月後、推して知るべしだな」 <br /> 守りたかった杏胡の存在は、当然だが、豪一郎には告げなかった。杏胡は、自分を取り巻く全ての人間関係、力関係とは無関係なのだ。そうあるべきなのだ。 <br /></span></span>
  • Date : 2013-06-03 (Mon)
  • Category : 17歳
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17歳 

  「17歳」は きっと特別な季節だと思うんです。 あなたの17歳は どんなでしたか? 女子校生と 歯医者のセンセイのちょっとやさしい関係。 あるいは お互いが必要だったほんの刹那。 このブログのために 書いた短編です。 其の一〈不協和音〉http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-2.html               其のニ〈雨上がりの猫〉 http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-4.html其の三〈言葉による... <a target="_blank" href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/img/17.jpg/"><img border="0" alt="17" width="206" height="165" src="http://blog-imgs-61.fc2.com/o/t/o/otonaasabi/17.jpg" /></a>&#160; <br /><br /><span style="color: #33cccc">「17歳」は きっと特別な季節だと思うんです。 <br /><br />あなたの17歳は どんなでしたか? <br /><br /></span><span style="color: #33cccc">女子校生と 歯医者のセンセイのちょっとやさしい関係。 <br /><br />あるいは お互いが必要だったほんの刹那。 <br /><br />このブログのために 書いた短編です。 <br /></span><span style="color: #33cccc"><br /><br /><br /><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: small">其の一〈不協和音〉<a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-2.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-2.html</a>               <br /><br />其のニ〈雨上がりの猫〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-4.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-4.html</a><br /></span></span><br />其の三〈言葉による自傷行為〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-5.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-5.html</a>       <br /><br />其の四〈背中を押す雨〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-6.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-6.html</a><br /><br /><span style="font-family: ヒラギノ角ゴ Pro W3"><span style="font-size: small">其の五〈傷を舐めあう猫たち〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-7.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-7.html</a><br /><br />其の六〈理想の彼女〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-8.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-8.html</a><br /><br />其の七〈捉えどころのない好き〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-9.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-9.html</a><br /><br />其の八〈梅雨の晴れ間の訪問者〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-10.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-10.html</a><br /><br />其の九〈大人の事情〉 <a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-11.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-11.html</a><br /><br />其の十〈Air Mail〉<a href="http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-12.html">http://otonaasabi.blog.fc2.com/blog-entry-12.html</a><br /><br /></span></span></span>
  • Date : 2013-06-02 (Sun)
  • Category : 17歳
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